10月から新型コロナワクチンの定期接種が始まります。この定期接種に組み入れられたコロナワクチンは以下の5種類です。
販売元 | ワクチンのタイプ |
ファイザー | RNAワクチン |
モデルナ | RNAワクチン |
第一三共 | RNAワクチン |
明治製菓ファルマ | レプリコンワクチン |
武田薬品 | 組み換えたんぱく質ワクチン |
ファイザー社やモデルナ社のワクチンはこれまで日本で使用されたタイプのものです。第一三共のワクチンはRNAワクチンですが、ファイザー社やモデルナ社と違い、スパイクたんぱく質の中でも特に感染に関係している部分のmRNAだけを使ったワクチンとのことで、ファイザー社やモデルナ社のワクチンと比べて副反応がどこまで軽減できるか注目されています。
明治製菓ファルマのレプリコンワクチンはRNAワクチンですが、少量のRNAワクチンが自己増殖するタイプもので、これが吉と出るか凶と出るか専門家の間でも様々な意見があります。
武田薬品のコロナワクチンはRNAワクチンではなく、組み換えスパイクたんぱく質を抗原とするワクチンで、WHOが推奨するオミクロン株JN.1に対応しています。組み換えたんぱく質ワクチンは、塩野義製薬のワクチンも承認を受けているはずですが、塩野義製薬のホームページ(https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2024/06/20240624.html)によると、同社のワクチンは起源株に対応するワクチン(つまり古い株)とのことで、製造販売はしないようです。
私は何度も書いていますが、ワクチン反対派ではありません。むしろ日本においてワクチン開発は、製薬企業側の経済合理性の観点から長らく技術的なアップデートがされて来なかったので、優先的に開発にされるべきものだと考えています。
ですがRNAワクチンの功罪については、今の段階でしっかり評価をしてから先に進むべきと思います。新型コロナワクチンに関しては、RNAワクチンの接種で、本当にたくさんの方が亡くなったり、副反応で苦しんだりしているのは事実です。そしてそのほとんどが、因果関係不明とされ、救済制度の対象外とされたり、未だに審査待ちであったりという状況でしょう。かくいう私も、2回目の新型コロナワクチン接種では、生まれてこのかた経験したことがない高熱や悪寒、全身の痛みで本当に死を覚悟しましたし、30代の耳年齢だった自慢の聴力は、今や70代になってしまいました。
命に別状はない副反応については、多くの人が厚労省に報告をしていないでしょう。ですから副反応は、厚労省が把握しているよりはるかに多いと考えるべきです。現在のワクチンをもっと安全なものに改良するために、まずは現在のワクチンと副反の関係を徹底調査することが不可欠と感じます。
副反応の原因として考えられるのは、ワクチンを構成する成分だけでも様々なものがあり、例えばRNAがコードするスパイクたんぱく質、RNAが分解されにくくするために使用された非天然型の核酸やRNA製造に付随する不純物、アジュバントと呼ばれる添加剤やRNAを包む油脂の膜(LNP)、あるいは注射剤を製造する際に混入した不純物などもあるかも知れません。
そして今回、レプリコンワクチンが新たに定期接種に加わることになりました。少量のRNAが自己増殖してワクチンの効果を発揮するというコンセプトは、RNAワクチンによる副反応が投与された非天然型RNAやその不純物によるものだとしたら、副反応を軽減する効果があるのかもしれません。
一方で、RNAワクチン投与後にすみやかに分解されて消失するとされていたワクチン由来RNAが、体内の特定の臓器に残留し、炎症を引き起こすという報告もあります。もしそうなら自己増殖型のRNAワクチンを投与することで、スパイクたんぱく質がずっと体内で作り続けられ、問題を起こすのではないかという懸念を持つことも自然でしょう。またワクチン接種後に作られたスパイクたんぱく質が体の外に排出され、感染するのではないか(シェディング)を心配する声もあります。もっともシェディングが実際に起こる、あるいは感染源となるという報告は今のところ確認されていません。
そして医療関係者である、日本看護倫理学会が、最近緊急声明を発表しました。
【緊急声明】新型コロナウイルス感染症予防接種に導入されるレプリコンワクチンへの懸念
自分と周りの人々のために
レプリコンワクチンがどうして問題なのかは、この声明にうまくまとめられているので解説はしませんが、やはり現在のRNAワクチンの功罪をしっかり評価してからこうした新しいタイプのワクチンへ進むのがよいと考えます。
ちなみに、従来型の不活化ワクチンや組み換えたんぱく質ワクチンはコロナウイルスのように変異の早いウイルスにはなかなか開発、製造が追い付きません。今回塩野義製薬のワクチンが定期接種に入っていないのは、開発しているうちにウイルスが変異して効果がなくなってしまったからです。RNAワクチンのメリットは、流行が始まったらすぐにワクチンをデザインして開発、製造可能である点です。今後の様々なパンデミックに備えてRNAワクチンの技術自体は継続して研究、開発すべきものと考えます。
RNAワクチンは液性免疫と呼ばれる免疫を誘導し、抗体を一時的に増やしますが、効果の消失も早いので、頻繁な接種が必要になります。新型コロナのパンデミックのように、一時的にたくさんの人が感染し、感染の拡大を直ぐに防ぎたい場合には向いているワクチンと思いますが、現在のように感染拡大がある程度収まってくると、RNAワクチンではないタイプの方が良いのではとも思います。コロナウイルスのパンデミックでは緊急事態であったからこそ、安全性に関して未知数な部分がありながらも見切り発車しましたが、感染が落ち着いた今は、RNAワクチンの安全に関わる研究を掘り下げる時期と考えます。
また将来に向け、レプリコンワクチンの研究開発をすること自体は悪いとは思いません。ですが正直、承認は時期尚早なのではないかと思います。日本以外の国でレプリコンワクチンが承認されていないのは、世界の研究者にもそのような意見が多いからではないでしょうか。それではなぜ日本でレプリコンワクチンが承認されたのか?それはここからは私の個人的推測ですが、おそらく厚労省のメンツの問題に起因するのではと考えます。
今回のパンデミックで日本の医薬研究開発が実は、中国やインドにも追い抜かれつつあるということを、世の中に思いがけず晒すことになりました。日本では特に、ワクチン開発においては多くの企業が何年も前に開発をやめてしまい、ノウハウも技術者も残っていません。コロナ禍、世界の主要国がワクチンを次々承認、上市する中、日本初のワクチンはコロナ禍が終わってかなり経過してから人知れず承認されるというありさまでした。
レプリコンワクチンを承認、世界に先駆けて接種することで、日本も決して遅れてはいないのだということを世界にアピールしたいのではないでしょうか?もっとも、このレプリコンワクチンの技術は、米国企業からライセンスしたもので、日本の技術でもなんでもないのですが。インターネット上では、このレプリコンワクチン(self-amplified RNA vaccine)を、日本が承認したという記事は見かけるものの、他の国が開発中というニュースは見かけません。
いずれにしろ承認前から、このワクチンが一般にはなかなか受け入れられず、接種を希望する人が少ないのではと予想することは可能だったでしょう。不採算になる確率の高いワクチンを、あえて開発、販売しても困らないよう、販売元の明治製菓ファルマには政府から十分な開発資金(税金)が流れているのではないでしょうか。もっとも、明治製菓ファルマは、昨今の明治製菓製品の不買運動までは予測していなかったかも知れませんが。
厚労省のメンツと解決しないドラッグロス
厚労省がメンツにこだわる組織だという例として、最近話題になっているドラッグロスの問題があります。これは海外で承認されているものの、日本で開発承認されておらず、日本の患者がアクセスできない治療薬が多くある現象のことです。こうしたドラッグロスにかかわる医薬品の多くは、欧米のベンチャーが生み出したものです。患者数が少なく、企業にとって日本での開発承認申請に経済合理性がないのです。厚労省は欧米のベンチャーがなぜ日本で承認申請をしないのか、考えを巡らせます。海外ベンチャーが日本の薬価制度をよく知らないからだとか、日本語の問題ではとか。。。ですがやはり、儲かる見込みがないからの一言だと思います。
ある程度の規模のある製薬企業なら製品はたくさんありますから、一部の製品だけ採算割れでも世の中に貢献できればよしとすることもあるかもしれません。ベンチャーの場合はそもそも製品が少ないのですから、一部の市場でも赤字を垂れ流すなど会社の存続にかかわります。儲かりそうにない市場でお金と時間をかけて承認申請する理由がありません。
それならドラッグロスのある医薬品については、例えば欧米で承認されたものは自動的に承認して薬価をつけ、保険償還可能にする。ただし日本人向けに開発(臨床試験)されていないので、人種差による安全性のリスクなどは患者が負う、ということも検討してはと思います。ただこれだと厚労省の審査承認なしで認めることになるので、厚労省のメンツが許さないとなるわけです。
あるいは、こうしたドラッグロスが問題になっている医薬品のついては自費診療を認めて高い薬価も認めるなどとして製薬企業に開発のメリットを示すことも考えられるかも知れません。審査の人手も足りず、開発会社もなかなか見つからず、放置されていては、個人輸入でなんとか治療薬にアクセスしている患者さんにとってはつらいものがあります。これまで厚労省のメンツの問題で認めていなかった日本人での安全性、臨床データに関しても、少しづつですが以前よりも日本人以外のデータを認めるようになって来ています。組織のメンツよりも実利にこだわって迅速で柔軟な対応をして欲しいものです。
いずれにしろレプリコンワクチンについては打ちたいと言う人が一体どのくらいいるのか、個人的には大変興味のあるところです。販売元の製品の不買運動や、一部の病院や飲食店での「レプリコンワクチン接種者入場お断り」のような動きもありますので、レプリコンワクチンの定期接種を維持するのは、かなり難しいのではないかと思っています。