今日はフリーランスの仕事の中でも、特に海外企業と仕事をするフリーランスの状況について書きたいと思います。
最近のYahoo ニュースにこんな記事がありました。
2020年代後半、年収1900万円以上も狙えるリモートワーク10(Forbes JAPAN) – Yahoo!ニュース
この記事は米国の仕事事情についての記事ですが、LinkedInで就職活動をするのが前提になっています。私もかなり前からLinkedinに登録しており、LinkedInを使用した求職活動や採用活動はなじみがあります。ですがLinkedInは実名登録という性質上、日本人にはあまり受けが良くないようで、日本人ユーザーがあまり多くはありません。だからこそ登録している日本人ユーザーには、海外のリクルターや企業から頻繁にコンタクトがあります。海外企業とフリーランスで仕事をしたいと考えているならLinkedInはかなりお勧めのツールです。
私は現在フリーランスとして海外企業と仕事をしていますので、海外企業と初めて仕事をする時の不安はよくわかります。もちろん海外企業とのと取引はデメリットもありますので、今日は海外企業とフリーランスとして仕事をしてみたいという方のために、少しアドバイスができればと思います。
海外企業と仕事をするメリット
1. 報酬が大きい
日本に拠点がない企業は尚更、日本の賃金相場がわかりません。たいてい欧米の賃金を参考に報酬が決定されます。元々日本に比べ欧米の給与レンジが高いため(米国の場合は日本の倍近い)、高い報酬を提示されることがほとんどです。途上国でさえ、日本よりずっと高い報酬を提示することが多いです。そして円安の今はまさに海外と仕事を始めるならタイムリーというわけです。私の同業者も、米ドルで報酬をもらっている人はここ数年ウハウハです。ちなみに私は為替リスクを避けるため円決済にしているので円安の恩恵はなしです。
2. 日本人であることがメリットになる
仕事にもよりますが、海外企業がこうしたサイト経由で日本人を採用しようとするのは、日本人であることが必要な仕事が多いのです。日本語、専門分野における日本の商習慣、マーケティングに関する知識を持っているなどです。ですからLinkedinのプロフィールには、xx年からxx年までxx会社部長などという日本式の履歴書は全く意味がなく、具体的にどんな業務をしていたかを具体的に書くことが重要です。
3.リモート勤務、自由な勤務体系
日本に拠点がない企業がほとんどですから、フルリモートがデフォルトです。どこでも好きな時間に仕事ができます。私は2006年からフルリモートで仕事をしています。ただ営業の仕事の場合、海外企業は日本企業より数字にはずっとシビアです。仕事ができないと思われたらすぐにクビを切られます。以前私が米国企業に勤めた時、同じ日に入社した米国の営業担当は3カ月でクビになっていました。
知人に海外企業ではないですが、新卒から定年まで、ずっとSEの仕事をリモートで続けていた日本人女性がいます。リモートワークに向いている仕事、そうでない仕事があるとは思います。彼女はその仕事で、海外赴任になった夫の留守を守りつつ、子ども二人をワンオペで育て上げました。すごいですね。こういう仕事なら海外企業相手でもマイペースで仕事ができそうですね。
デメリット
1. 外国語での契約
コミュニケーションや契約が全て英語になること。英語が苦手な人は海外企業で働こうとは思わないと思いますが、契約がちゃんとしたものかどうか、英語の契約書を扱ったことがない人にはハードルが高いでしょう。
私も最初に海外企業と仕事を始めたとき、六本木ヒルズにオフィスを構える某有名法律事務所に勤務する知人がいたので、雇用契約書のレビューを頼んでみました。が、結局「あなた次第です」と言われてしまいました。契約とは想定されるリスクを回避するための約束事ですので、海外企業と個人的に契約したことがない人、契約する企業についての理解がない人に契約書のチェックを頼んでも、何がリスクか理解できませんし、何のアドバイスもできません。できないことを、「できない」と言ったその法律事務所は、今から考えるときちんとした企業だったと思います。理解しているフリして適当に修正した契約書と、何十万とか何百万円という費用を請求する悪徳法律事務所もあるので注意しましょう。
私はその後個人の契約にかかわるものの他、たくさんの英語の契約を仕事で扱ってきました。ですので今は何がポイントであったのか理解できますが、始めたころは本当に「えいや」と言う感じでした。
また契約が例え完璧だとしても、例えば一方的に支払いを拒否されるようなことは起こりえます。契約をたてに訴えたところで、国境を越えた裁判は時間もお金もかかりますし、さっさとあきらめて別の会社に行った方が賢明です。海外企業と仕事する場合は、そうしたリスクはつきものです。例え会社自体が素晴らしくても、経理の担当者がいい加減、仕事ができないなどの理由でいつも給与送金が遅れるなどということも、日本以外の国では日常茶飯事です。くれぐれもギリギリの運転資金で仕事をしない、通帳の残高に余裕を持って仕事をしましょう。
2.税務申告かかわる知識
1.とも関連しますが、日本の会社では会社員であれば毎月決まった日にお給料が振り込まれ、税金の申告や社会保険料の支払いもすべて会社がやってくれます。海外企業との取引においては、相手の会社も日本の税務などはわかりませんので、自分で勉強し、相手企業を教育する必要があります。
税務の他、社会保険なども基本は自分で手続きが必要になります。こうした手続きが面倒と思う人には向かないでしょう。
ちなみに私は過去9年ほどインド企業に勤めています。インドと日本は租税条約を締結しており、インド企業が支払う報酬の中から10%を源泉徴収してインドの税務署に納め、その納税証明を日本に送ってもらい、日本で私が税務申告の際に外国税控除の申告をすることになります。税務に詳しくない方は???でしょう。日本の税理士でさえ、このような特定の国との租税条約にかかわる源泉税の手続きについて、知っている人はほぼいません。(税務署の職員でも知っている人はまれです)また相手企業も事情がわからないので、英語でこうした税務手続きについて、どのようなサービスが、どのような場合に課税対象になるのか、ならないかも含め、わかってもらえるまで何度も説明しなくてはなりません。ですから、海外と仕事を始めると、こうした外国税務に関することは、税務コンサルができるのではないかと思うくらい自然に詳しくなります。
3.自由な勤務体系
これはメリットでもありデメリットでもあります。自分を自分でコントロールできない人にはハードルが高いでしょう。逆に優秀な人なら、副業的に仕事をすることも可能です。家にいなくても仕事ができて自由度が高いです。ただし、基本的にはなんでも一人で解決しなくてはならず、上司も特に何をしろと言わない代わりに自分で仕事を見つけなくてはいけないので、寂しがりや、言われないと仕事ができない人には不向きです。
以上まとめてみました。今日本の大企業がいろいろな理由から失速し、一方でベンチャーやフリーランスとして働く人を奨励する動きがあると感じています。フリーランスとして働くのは、良い点、悪い点両方あります。その中でも海外企業と仕事をするのは、日本国内で働くよりリスクを伴いますが、リスクのある分報酬も高いです。今はインターネットが普及し、オンライン会議システムも昔よりずっと使い勝手が良くなりましたし、海外企業と仕事をするのは会社としても個人としても格段にハードルが下がっています。特にこれからの若い世代には、いろいろなことにチャレンジして欲しいと思いますし、家から出られないような制約のある人には特に、ITを使ったフリーランスの仕事は特におすすめです。