今日は健康保険制度についても少し思うことを書きたいと思います。
日本の健康保険制度
以前のブログにもまとめていますが、日本では歴史的背景から雇用者が健康保険を提供したのが始まりで、その後その被保険者となれない自営業者などが加入するための国民健康保険が整備されました。日本では皆保険制度があり、医療サービスには等しくアクセスできる前提になっていますが、保険料の観点から言えば、様々な企業保険組合、共済保険、後期高齢者医療等があり、同じ所得でも保険料は違います。
国民健康保険の闇
国民健康保険の加入者は、企業の健康保険に加入できない非正規労働者、無職者、後期高齢者保健の対象になるまでの定年退職者など、経済的基盤が弱く、医療サービスをより必要とする高齢者が中心になります。そのため保険組合としては、収入に対する支出割合が企業保険組合や共済等に比べて高くなります。
したがって当然保険料収入だけでは赤字であり、足りない分は税金で補填しています。それでも被保険者の立場に立つと、保険料は同じ所得でも企業保険や共済の最低二倍以上、自治体によってはさらに高い保険料を課されています。国民健康保険の加入者の中には、高額な健康保険料が払えず、未納だったり滞納したりして保険証がなく、適切な治療を受けられないなどの問題も生じています。
高額治療のため経営管理ビザで来日する外国人
また外国人においては、前回のブログ「日本がカナダから学べること」でも紹介した経営管理ビザで来日し、高額医療を受けるような人たちも実在します。その目的を達成するためにビザの手続きをするブローカーもたくさん存在します。経営管理ビザで来日するような外国人は国民健康保険の加入になるケースが多いと思います。その場合、保険料は前年度の収入に対して算定されます。
国民健康保険の場合、来日した年の健康保険料は年数万円です。翌年度からは日本で生じた所得に応じて保険料を払うことになります。経営管理ビザだけで滞在し、経営実態のない場合、日本で申告所得が生じないのでずっとこの最低の保険料が続くわけです。外国人でも日本に長く住んで勤め人をしているような人は問題ありませんが、経営管理ビザの外国人に関しては、来日前の国での所得、あるいは本国での所得に基づいて保険料を算定することも検討すべきと考えます。
特に高額治療目的の外国人の場合、形式的に会社を立ち上げ、日本では経営活動せず所得ゼロで申告し、本国にはたくさん所得があるケースもあるでしょう。ちなみに私が自営業をしていた頃は、年間ほぼ100万円の国民健康保険料を払っていました。企業保険加入者で健康保険だけでこの金額を払っている人はいないでしょう(厚生年金の掛け金と一緒のため勘違いされやすいですが、どんなに所得が多くてもこの半額くらいのはず)。ですが国民健康保険加入者の自営業者にとってはあるあるです。
外国人の中には保険料を払わないという選択をするような人もいるようです。経営管理ビザの場合は、ビザの発給を直ちに止めるような措置も必要と思います。
公平な保険料の算定とは
現在は後期高齢者医療制度が分離されていますが、元々は後期高齢者の医療費が大きいことから医療サービスの使用頻度の高い高齢者を国民健康保険から分離し、国保の負担を減らそうとしたのが始まりです。ですが近年は、後期高齢者医療だけでは財源がまかなえず、企業保険組合から後期高齢者支援金という名目で、保険料収入の3-4割に相当する金額を後期高齢者医療に上納しています。そのため企業保険組合の半分以上が赤字です。
保険組合間に複雑な資金移動があることで、無駄な間接経費がかかります。儲かるのは手数料収入などを間接的に得られる組織ということになります。日本は仕組みをどんどん複雑化して、間接的にかかわる組織が隠れて甘い汁をすうことができるような仕組みに変えるのがうまい国だと思います。官僚も部分的な改正ばかりをやりたがるため、制度は複雑化こそすれ大ナタを振るうことはできません。
理想としては健康保険については企業保険や共済、国保、後期高齢者もすべてまとめて国の皆保険とし、所得に応じた一律の保険料を適用すべきでしょう。これを是非政治主導で実現したいものです。
現在では後期高齢者の場合、所得があっても保険料が低く設定されていますが、保険料の基準が所得であれば、年齢に関係なく所得に応じた保険料を設定すべきと考えます。また負担額についても、所得で2割負担や、3割負担の基準を決めた方が公平ではないでしょうか? また保険証はなくしてマイナンバーで管理する方式に移行すべきだと考えています。
保険証としてのマイナンバーカード
ただマイナンバーカード(マイナンバーではなく)については、生体認証の追加などセキュリティ面を強化する必要があると考えています。現在のようなパスワードのみの管理では、不正使用し放題です。本人が認知症などになったら、誰もパスワードを管理できません。ですが生体認証であれば本人がパスワードを忘れても個人認証することが可能です。また他人が乗っ取りなどすることも難しくなります。
ちなみにインドではマイナンバーに当たる個人認識番号があり、外国人も登録が必要で、登録の際は指紋と虹彩認証を含めた認証データを提出する必要があります。これがないと銀行口座も開けませんし、携帯電話も購入できません。日本も在日外国人を含めて、やはりこうした管理は必要と考えます。
ちなみに、インドの個人認証システムは日本企業が作ったものです。なぜこれを日本で採用しないのか疑問です。開発会社がデジタル大臣に嫌われているからでしょうか?
今後の医療について
健康保険料については少し整理が必要ですが、少子高齢化のトレンドはしばらく変わりそうになく、膨らむ医療費を賄う財源がないとなれば、やはり今後は医療のサービスの内容について再検討が必要と考えています。
日本でしか暮らしたことがない人には当たり前かもしれませんが、日本の医療は本当にサービスの質が高く、効率的で、少ない保険料であらゆる医療サービスに素早くアクセスできる本当に素晴らしい制度です。さらに高額療養費制度があって、医療費が高額の場合、一定額以上は払わなくてすむという、夢のような制度です。だからこそ今、外国人に狙われているわけです。
誰でも好きなクリニックや病院に行って受診することができ、あまり待たずに様々な検査が受けられ、高額な薬も3割負担で制限なく入手することができます。ですが少ない保険料のわりに、かなり贅沢なサービスを享受しているともいえると思います。3000円の会費で、フレンチのフルコースを食べるようなことを長年続けてきました。したがって今後は、医療サービスについても再考が必要と考えています。
この話は次のブログでお話できればと思います。
追記:
現在私が加入している協会けんぽでは、報酬月額が135.5万円以上で、健康保険料が79,925円です。年間だと100万円近いので、ブログ中の「50万円くらい」ではありませんでした。訂正いたします。もっとも私が国民健康保険に加入していたのは10年くらい前です。国民健康保険の場合、もっとずっと低い報酬月額で同じ保険料に到達するのは間違いありません。