PFASと水源汚染について

最近のYahooのニュースで気になる記事がいくつかありました。

横田基地で23年に汚染水漏出 米報告書公表、不適切管理も指摘

その一カ月前にはこんな記事もありました。

米軍横田基地「PFAS」浄化し放出 目標値下回れば許容 環境省

そこで今日はPFASについて少し書きたいと思います。

PFASとは?

PFAS(パーフルオロアルキル物質)はコーティング剤や消火剤などで使用されるフッ素化合物の総称です。横田基地に限らず、軍施設では様々な化学物質が使用されますが、ニュースの中に出てくるPFASは強力な消火剤として使用されているものだと思います。

東京都におけるPFASのモニタリング

東京都の水道局(https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp)では、毎年水道水の調査結果をホームページに掲載しています。また東京以外の地方自治体でも現在はPFASのモニタリング結果をホームページで公表しています。

有機フッ素化合物検出状況 都内給水栓(蛇口)の水質検査結果

これを見ると、多摩地区でぽつりぽつりと検出されていることがわかります。

これを地下水の調査結果でまとめたのが以下です。地図作成は共産党系のメディアである東京民報(https://www.tokyominpo.com/)です。数値は最大値であることも考慮しましょう。そして東京都の河川の地図もわかりやすいように並べてみます。

横田基地のある場所あたりから多摩川沿いにそって、高い数値が検出されています。(当然、神奈川県側にも同じ現象があると考えらえれます)河川を介して汚染されているだろうということが感覚的にわかるのではないでしょうか?東京都の場合、昭島市が地下水を水道水に使用しているのが有名ですが、汚染が広がると地下水は問題になるかもしれないということがわかります。

PFASはどこから来たのか?

PFASについては、最近米国でも規制が強化されつつあります。United Environmental Protection Agency(EPA)でも最近飲料水におけるPFAS含有量をめぐる規制対応について、頻繁にアップデートがあります。https://www.epa.gov/pfas

またPFASについては、元米国3Mの化学者だったクリス・ハンセンさんの記事を読むと良くわかります。英語の苦手な方はリンクをChromeで展開して、言語を日本語設定すれば日本語で読むこともできます。

Toxic Gaslighting: How 3M Executives Convinced a Scientist the Forever Chemicals She Found in Human Blood Were Safe

内容はクリス・ハンセン博士が上司にヒトの血液中のPFASの分析を依頼されることから始まります。PFASの汚染が想像以上に広がっていること、実は同社の開発するフッ素化合物を含む製品が開発された当時から、この事態を会社の上層部が予測していたことを知ります。最初はPFASの動物や環境への影響を否定していた彼女も、徐々に懐疑的になり、科学者として苦悩します。

記事は時系列に書かれています。時代と共に様々な事実が少しずつ明るみになり、PFASに対する企業や規制当局、世論が変化する様子が良くわかると思います。

そしてこの地図からは、どうやら最初のニュースにあった横田基地が、多摩地区におけるPFASの汚染と関係があるだろうと予測できます。

不都合な真実と企業

世の中のためにと開発されたものであっても、時代が変われば見解が変わるものはたくさん存在します。人類はまだそれほど賢いわけではなく、100年先の未来を見通すことはできません。できることは事実に基づいてその都度検証し、正しいと思われる判断を繰返すのみです。

またハンセン博士の記事によると、こうしたフッ化化合物は世界大戦中のマンハッタン計画の科学者たちによって開発されたとあります。自然界ではなかなか作ることが難しいフッ素化合物は油や水や熱に強く安定で、永遠に環境中に残り続けます。現在マイクロプラスティックの環境汚染も深刻化していますが、このPFASもかなり厄介です。

私も長年創薬研究にかかわる研究者の端くれとして、フッ素の入った化合物を合成、製造するには大掛かりで特殊な装置や設備、訓練された科学者や技術者、合成や製造に伴って排出されるであろうフッ化物の処理等たくさんのものを必要とすることを知っています。ですからフッ素を扱う企業は必然的に大きな設備投資ができる企業であり、それが3MやDuPontといった大企業であったということも納得です。

3Mがもともと鉱山会社というのも知りませんでしたが、鉱山事業に変わる事業、事業の多角化の一つとして開発されたのがスコッチガードやテフロンコーティング等のフッ素化合物を使った製品なのだそうです。大企業の莫大な売上に貢献してきた物質であるがゆえに、不都合な事実は長い間隠蔽されてきたというわけです。

安全な飲み水のために

東京都は最近、今年の夏の東京都民の水道料金を3ヶ月無料にするという発表をしました。東京都の財政規模は、世界の都市の中でNYを抜いて第一位です。使い道に困っているのかもしれませんが、水道料金を無料にしなくていいので、もっと詳しく水資源のPFAS調査や、多摩川沿いの住民の血液検査など実施して、結果を発表して欲しいと思います。