皆さんもご存じの通り、6月22日、アメリカがイランの核施設を攻撃しました。
先にイスラエルがイランを攻撃し、イランも報復するなど、ネットでその応酬の様子をご覧になった方も多いのではないでしょうか。
戦争はミサイルからサイバーへ
私は2023年9月にイスラエルを訪問し、ハマスによる攻撃が始まる1週間前に帰国しました(イスラエル訪問記 その1、イスラエル訪問記 その2)。その際、現地の方々からイスラエルの迎撃システムについて話を伺いました。ミサイルの95%を迎撃可能とのことで、実際、ハマスとの衝突ではその性能が発揮されたようです。
しかし今回のイランとの衝突では、かなりの数が迎撃を突破して着弾したのではないかと感じています。疲弊したイスラエルがアメリカに支援を要請した可能性もあります。いずれにせよ、技術は日々進化しており、もしどちらかが核兵器を使用すれば、結果は「The End」つまり共倒れは避けられないでしょう。
私はむしろ、今後は「サイバー戦争」の時代に突入すると考えています。実際にミサイルを飛ばすことなく、原発や金融、交通などの制御システムがハッキングされれば、被害は甚大です。
国家主導の育成プログラム
日本にも複数の省庁がサイバーセキュリティを所管していますが、相変わらず縦割りの弊害が見られます。人材も圧倒的に不足しており、質・量ともに大幅な見直しが必要です。
韓国では、イスラエルの「Talpiotプログラム」に着想を得て、国防部と高麗大学が連携し「サイバー国防学科」を創設しました。一方、日本では「エリート教育」がなぜか忌避されがちですが、私は国家として育成すべきだと考えます。
ホワイトハッカーに向く人材
ホワイトハッカーに関しては、大卒である必要はないと思います。この分野では学歴に関係なく優秀な人材が多数存在しています。
たとえば、数学や物理に秀でながらも学校生活になじめない「ギフテッド」な子どもたちがいます。(ギフテッド教育について、ギフテッド教育について その2)下村脩・ノーベル化学賞受賞者の息子である下村努さんもその一人。若くして高校に飛び級入学したものの放校され、その後カリフォルニア工科大学に入り中退し、ロスアラモス国立研究所でホワイトハッカーとして活躍。学歴にとらわれない成功例です。
このような特殊な才能を活かす「国家主導の育成プログラム」が必要ではないでしょうか。
理想的なハッカー育成プログラムとは?
新たな大学を作るのではなく、既存大学の施設を一部利用し、基本的にはリモート中心のカリキュラムで構築するのが現実的と考えています。
大前研一氏が石原慎太郎元都知事に提案していた「仮想銀行・ネット銀行」の構想を思い出します。結局は「新銀行東京」として実店舗型になりましたが、あの「既存の銀行の支店番号を活用する仮想構想」は印象的でした。
同様に、ホワイトハッカー育成も既存の大学の枠組みを活用し、専門以外の講義は各大学が提供、専門講義はオンラインで統一的に行うといった形が考えられます。学生は自宅近くの大学に通いつつ、専門学習はネットで受講する仕組みです。国はプログラム参加者に対応する大学へ、必要経費を支払う制度にすればよいでしょう。
選抜は基本的に専門試験のみで行い、年齢(上限の設定は可)・性別・国籍を問わない制度とします。外国籍の方には、日本国籍の取得をプログラム修了の条件とするなどの対応も考えられます。給与・住宅手当の支給、そして修了後、例えば最低10年間の勤務義務などもセットにすべきです。
受講形式は自宅でも可能ですが、同じ目標を持つ仲間と共に学べる環境があると、より充実するはずです。一般教養やサークル活動も可能なようにし、拠点は自然災害や戦争のリスクを避けるため全国に分散させるのが理想です。とはいえ、専門講義は関係者に限定し、オンライン中心にすべきでしょう。育成するのは「サイバー空間の戦士」なのですから。
外国人による諜報活動の是非
私はにカナダ滞在中、大学キャンパスにカナダの諜報機関のリクルーターが来ていたのを見かけたことがあります。カナダでは外国人学生を積極的に採用し、採用されれば国籍取得と公務員としての道が開かれていました。さまざまな言語・文化への理解が必要な領域では、非常に合理的な方針です。
日本の諜報機関がどこまでこうした人材活用に前向きなのかは分かりませんが、「語学が苦手だからこそ」、外国人の知見や能力を活かす制度づくりも、積極的に検討すべきだと感じます。
今後のイスラエルとイラン、そして米国の動向にも、引き続き注目していきたいです。