ジェネリック医薬品は先発と効ききめが同じなのか?

ジェネリック医薬品の「仕組み」

医薬品――とくに先発品の開発には、莫大な費用と長い年月がかかります。そのコストを回収するため、製薬企業には一定期間、特許による独占権が認められています。この期間は、有効成分――つまり薬効をもたらす主成分――を含む薬は、開発した企業しか販売できません。

ところが特許が切れると、その有効成分を使った薬を、他社も製造・販売できるようになります。これが、いわゆるジェネリック医薬品です。価格は下がり、医療費の抑制にもつながる。ここまでは、多くの方がご存じでしょう。しかし、ここからが本題です。本当に「同じ」なのでしょうか?

有効成分が同じでも、製品は違う可能性がある

確かに、ジェネリック医薬品も先発品と同じ有効成分を含んでいます。ただし、製剤に含まれるその他の成分――いわゆる添加物や賦形剤――は異なることがあります。その他の成分の含有比率や製造工程の違いが薬の溶け方や吸収にも影響します。
薬の添付文書には有効成分が開示されていますが、その他の成分の詳細な情報は企業秘密です。つまり、見えない違いがある可能性は否定できません。

「オーソライズド・ジェネリック(AG)」という言葉をご存知でしょうか。これは、先発メーカー自身がレシピを提供し、自社工場、あるいは子会社、CDMO等、他社に製造を委託したジェネリック医薬品です。

成分構成も先発品とほぼ一致しますが、原料供給元が違えば、生物学的同等性――つまり体内での有効成分の動き――が微妙に異なることもあると言われています。

ジェネリック医薬品の「同等性」はどう担保されているのか

日本では、厚労省の下にあるPMDA(医薬品医療機器総合機構)が、すべての医薬品を承認しています。ジェネリックも例外ではありません。
承認には、有効成分の溶けやすさや吸収速度、生物学的同等性の試験などのデータ提出が求められます。臨床試験は不要とされていますが、20人程度の比較試験が行われます。結果が先発品と「統計的に同等」と認められれば、承認されます。

つまり、公的には「先発品とジェネリック医薬品は同じ」という位置づけになります。価格以外に違いはありません。

「違い」を感じる人がいもいるという事実

患者や医師の中には、ジェネリック医薬品の効き方が先発薬と違うと主張する人たちもいます。急性期に処方される薬――例えば解熱剤や咳止めなど――では、ジェネリックと先発の違いを感じる人は少ないと思います。数日間の服用ですし、速効性が重要な場面では、体感の違いも小さくなりがちです。

しかし、高血圧や糖尿病など、長期的に服用する薬ではどうでしょうか?数年、あるいは一生飲み続ける薬の「わずかな違い」が、患者の生活に与えることはあるかもしれません。

あるいは医師が「この患者さんにはジェネリック医薬品が合わないかもしれない」と判断することもあると考えます。服薬後に体調の変化を訴えるケースも、現場ではあるでしょう。

ジェネリック医薬品が「優れている」こともある

ここまで聞いて「やっぱりジェネリック医薬品は信用できない」と思われた方もいるかもしれません。でも、ジェネリック医薬品が、常に劣っているとは限りません。むしろ、先発品を改良し、安全性や利便性を高めた製品を世に送り出しているメーカーも多くあります。

たとえば、錠剤に薬の名前や成分量が印字されている製品。これは服薬ミスの防止につながります。患者だけでなく、調剤する薬剤師にとっても非常に便利です。錠剤と言えば皆白くて同じような大きさで、各メーカーの刻印だけだった昔とは比べようもありません。高齢者や視力の弱った方にとっては大きな助けになります。

また、「OD錠(口腔内崩壊錠)」と呼ばれる水なしでも飲める錠剤は、日本人の服薬文化に合わせて開発されています。こうした工夫は、ジェネリックメーカーならではの挑戦でもあります。最近では風味の違うOD錠が様々なメーカーから提供されています。

さらに、「結晶多形」と呼ばれる現象もあります。これは、同じ化合物でも結晶化の仕方によって物性が変わるというもので、薬の溶け方や安定性、吸収性に影響します。

雪の結晶をイメージしていただけるとわかりやすいと思いますが、六角形の美しい結晶の他、粒状だったり繊維状だったり、様々な形の結晶があります。手のひらに載せるとすぐ溶けて水になるもの、しばらく溶けないもの、結晶の形によってその性質を変えます。似たような現象が薬の有効成分にもあり、その物性の違いが、より良い薬効をもたらすこともあります。

中国やインドのメーカーが、こうした多形に着目し、先発品より優れた結晶を見つけ、それに特許を取得する事例もあるほどです。ジェネリック医薬品が、先発品以上の可能性を秘めている――それが、今の医薬品業界のリアルです。

私たちはジェネリック医薬品にどう向き合えばいいのか?

ジェネリックを疑うべきか、盲信すべきか、答えはどちらでもありません。大切なのは、個人が「選べること」、そして「相談できること」です。

医師と話す、薬剤師に尋ねる、納得して薬を選ぶという姿勢が、医療を自分のこととして考える第一歩だと思います。

政策の側にも課題はあります。ジェネリック医薬品の品質を一般の人が簡単に比較できる仕組みや、患者の不安や疑問に対応する体制を作ることが重要です。長期的な服薬が必要な方々の不安に寄り添う制度設計が、医薬品への信頼を築く基になるでしょう。

結語

ジェネリック医薬品は、価格だけではありません。それぞれの製品が持つ特性や背景を正しく理解して初めて「自分にとって本当に必要な薬」にたどり着けると考えます。

これからの医療制度は、「選択できる社会」であることが重要であり、私たち一人一人の声が制度を育てていくと考えます。