世界大学ランキング
世界の大学ランキングには、主に次の3つがあります:
- QS世界大学ランキング(英国)
- THE(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション)世界大学ランキング(英国)
- ARWU(Academic Ranking of World Universities/上海交通大学)
それぞれ評価の仕方に差はありますが、主な観点は以下の通りです:
- 研究成果(論文数、被引用数、学術賞など)
- 教育・研究環境(教員の比率や予算)
- 国際性(海外学生比率、海外との連携)
- 社会との連携(産業界との共同研究など)
日本の大学の現状
2025年現在、東京大学や京都大学は世界トップ100に入っています。10年ほど前に比べると、東大の順位はあまり変わっていませんがそれ以外の大学は順位が下がっています。日本の大学だけに注目すると、上位に入るのは旧帝大や東工大、筑波大などです。私立大学がほとんど入っていません。
日本の大学は偏差値でみられることが多いですが、世界ランキングは受験の偏差値とは必ずしも一致しません。学内の研究成果や国際連携の実績がスコアを左右します。日本の私立大学では学生の人数に対する研究予算が限られており、世界規模で評価される論文数も少ない傾向があります。また、文系中心の大学では日本語論文が多く、英語論文での評価がされずらい状況があります。これが世界ランキング評価から日本の文系大学が抜け落ちやすい構造でしょう。
世界ランキング上位の大学
上位トップ10にいつもいるのは、米国のハーバード大学、MIT、スタンフォード大学、プリンストン大学、カルフォルニア工科大学などで私学が中心ですが、カルフォルニア大学のような州立大学もあります。その他英国のケンブリッジ大学、オックスフォード大学なども上位の常連です。
10年ほど前までは、トップ20に入る常連は主に欧米の大学でした。2025年のランキングでは、中国やその他アジアの大学が上位にランクインされるようになりました。例えば中国の清華大学はTHEのランキングでは12位、QSのランキングでは20位、シンガポール国立大学はTHEのランキングが17位、QSでは8位と日本のトップである東京大学の28位(THE)、25位(QS)に比べてもかなり上位にランクされています。
中国の清華大学に関しては、日本の大学に欠けると言われている、国際性に関してのスコアが日本の東京大学より下であるにもかかわらず、教育研究環境や研究成果、産学連携などがほぼ満点近いスコアで上位にはいっています。また2025年は清華大学以外にも、北京大学、復旦大学、浙江大学などの中国本土の大学に加え、香港、シンガポール、オーストラリアの大学の相対的ランキングの上昇がみられます。日本の大学が高い評価を受けていた研究分野において日本の大学の競争力が落ちており、一方でアジアの大学のランキングが相対的に上がってきたと言えるでしょう。
文科省の施策と大学の現場
大学の世界ランキングは2005年前後から始まりましたが、文科省はランキングを意識し始め、2011年には「大学の世界展開力強化事業」がスタートしました。当時の日本は研究成果や教育環境についてはおおむね良い評価だったので、国際性や産学連携などのスコアが上がればもっと上位に行けると思ったことでしょう。留学生を積極的に迎え入れようとする政策にシフトしたのもこの頃です。
この事業開始後、様々な大学で、日本の大学の国際化を目指したプロジェクトが始まり、予算の配分が始まりました。私自身、そのプロジェクトの一つであった、北海道大学の「新渡戸カレッジ」に講師として関わりました。このプログラムでは英語での活動を中心に、短期留学支援や国際交流を推進していました。このプログラムは現在も続いており、当時と違って外部講師ではなく、外国人講師を含む専任講師がプログラムの担当をしているようです。
このプログラムは全学対象の無償のプログラムです。英語の試験で選抜があるのですが、当時の学生の語学力は私が学生だった頃と比べても格段に向上していて、海外大学にすぐにでも留学できる学生が多いと感じました。ただ一方で、「ぜひ海外に行きたい」という動機には乏しく、きっかけや支援がなければ動かない傾向も見られました。
ただ、交流事業に参加した学生に聞くと、たくさんの発見や新たな人生の目標ができたとする、ポジティブな意見の学生が多かったです。
私は仕事を通じて中国やインドの若い世代と交流する機会もこれまでたくさんあったので、こうした若い世代と比較すると、日本の学生とは明確な違いがあると感じました。東南アジアの学生は知識・技術習得と成功への強い意志があるのに対し、日本の学生はハングリー精神が弱いと感じました。このような違いは今後の日本の国際競争における鍵となると思います。
大学の研究力と雇用環境
世界ランキングでは教員も教育や研究環境の評価の一部となります。ですが、特任講師や非常勤講師など、大学内で雇用が不安定な立場の人が多いのが実情です。これは大学の研究力にとって、足かせになっていると感じます。
国立大学は2004年から独立行政法人化し、予算は年々減少し、独立採算を求められています。一方で授業料はほぼ据え置きです。学生から見ると大学ランキングの上位に入る大学にも、格安の授業料で入ることができる状態ですが、一方で教員への投資が減り、研究環境の維持が難しくなっていると感じています。
ちなみに世界ランキング上位常連のシンガポール国立大学の授業料は、学部によっても違いますが、2025年、工学部の授業料は年4万シンガポールドルで、日本円で450万円ほどと、日本の10倍近いです。日本の国立大学の授業料が国際的にはいかに格安かわかると思います。これが近年、中国をはじめとしたアジアの国から日本の大学に留学生が押し寄せる理由ともなっています。私が学生の頃、中国人留学生は皆貧乏でしたが、最近の中国人留学生は必ずしもそうではなく、経済的余裕のある学生にも奨学金や生活支援をすべきなのか少々疑問なところもあります。
提携交渉の失敗から学ぶこと
北海道大学以外にも、もちろん様々な大学で、国際性を高めるために、海外大学との提携などを試みてきました。知人の某国立大学薬学部長によると、世界トップ大学との提携交渉に挑んだものの準備不足で成果ゼロ。相手にメリットを示す工夫や段階的な交渉が必要だったのです。「日本が行けば歓迎されるはず」という前提は通用しません。公務員や企業の海外視察にも、同様の構造的課題が見られます。
アカデミアに足りない人材
国際提携には英語での契約交渉が不可欠ですが、大学には英語の契約書レビューができる人材が不足しています。大学によっては処理に半年もかかることもあり、契約人材の育成は急務です。
大学の場合役職依存の給与体系で、例えば渉外担当や契約担当は、年俸500万円程度等、報酬の幅が決められており、求められる人材が雇えないこともあります。優秀人材の確保には構造改革が求められます。
私からの提案
世界ランキングで日本の大学が存在感を増すには:
- 偏見や思い込みを排し、相手目線の国際交流を設計すること
- 学生の挑戦意欲を育てる仕組みと、厚い支援ときっかけづくり
- 教員の待遇改善と、安定した研究環境の整備
- 語学と契約に強い人材を確保し、戦略的に提携交渉を行うこと
大学ランキングは様々なファクターから評価されており、結果に一喜一憂する必要はないと考えますが、一方で最近の日本の研究力の低下は問題だと考えています。この件については別途お話したく思います。


