最近、日本の外国人受け入れ制度が大きく動いています。 入管法の改正、永住許可制度の見直し、そして経営管理ビザの厳格化。 これらは単なる制度変更ではなく、日本社会のあり方そのものを変えつつあると感じています。
日本はすでに「外国人労働力なしでは社会が回らない」段階に入っています。 その一方で、外国人が日本で長期的に暮らすための制度は、より厳しく、より高いハードルを求める方向へ進んでいます。
今日は、私自身がスペースでも何度か取り上げてきたこのテーマについて、改めて整理してお伝えします。
技能実習制度の廃止と新制度の創設
長年問題視されてきた技能実習制度が、ついに廃止されます。 目的と実態の乖離、国際社会からの人権批判、転籍禁止など、構造的な問題が積み重なっていました。
● 育成就労制度の創設(2024年改正)
新制度「育成就労」は、従来の“実習生”という位置づけから大きく転換します。
- 目的を「技能移転」から「人材育成・人材確保」へ
- 一定条件で転籍が可能に
- 特定技能へのキャリアパスを明確化
- 監理団体の許可制強化・外部監査義務化
- 送出機関の手数料適正化で不当な借金を防止
背景には、2040年までに生産年齢人口が1200万人減るという試算があります。 外国人材を「短期の実習」ではなく「中長期の労働力」として位置づけ直す必要があったわけです。
事実上、日本が技能移民制度の検討に踏み出したと言ってよいでしょう。
永住許可制度の厳格化──過去最大級の見直し
2026〜2027年にかけて導入される永住許可制度の見直しは、過去最大級の厳格化と言われています。
● 2-1. 永住者の取消事由の明確化(2024年改正)
永住者の取消事由が法定化されました。
- 税・社会保険料の故意の不払い
- 入管法上の義務違反(転職・離婚・住所変更の届出遅延など)
- 一定の刑罰法令違反
ただし、取消となっても「原則は他の在留資格へ職権変更」という救済措置があります。
● 2-2. 永住許可ガイドラインの厳格化(2026〜2027)
① 経済力要件の引き上げ
永住審査では、日本人世帯の平均収入以上が求められる方向です。
- 単身:444万円
- 2人世帯:649万円
従来の「単身300万円+扶養加算」から大幅に上昇しています。
しかし、低賃金職種に外国人を受け入れておきながら、永住権では日本人以上の収入を求めるのは矛盾しているのではないでしょうか。諸外国では「技能移民」と「投資移民」は明確に区別されています。 日本はこの区別が曖昧で、政策側の理解不足を感じます。
② 年金の将来受給見込額の審査
厚生年金は「30年加入相当(年額130〜160万円)」が基準。 不足分は金融資産で補うことが可能です。
ただ、将来の年金制度がどこまで持続できるのか不透明な中で、この基準を永住要件に組み込むことには疑問があります。
③ 日本語能力(CEFR B1)必須化
JLPTで言えばN3〜N2相当。 永住要件としては妥当だと思いますが、日本語教育を制度として提供してこなかった日本にとっては、長年働いてきた外国人には厳しい面もあります。
一方で、英語だけで業務が完結する職場で日本語を学ばずに働いてきた人たちが制度変更に戸惑っている様子も見られます。
明確な基準を設けることで、差別を減らし、公平な制度になることを期待したいところです。
④ 子どもの就学義務の厳格化
義務教育年齢の子を就学させていない場合は消極評価。これは当然です。
⑤ 日本人・永住者の配偶者の特例要件の引き上げ
• 婚姻期間:3年 → 5年
• 在留期間:1年 → 3年 むしろ、従来が緩すぎたと言えるでしょう。
⑥ 在留期間「最長期間」要件の厳格化
『技術・人文知識・国際業務』は原則「5年」が必須に。
⑦ 公的義務の履行の厳格化
税金や健康保険料は「完納」ではなく 期限内納付 が必須。 1日でも遅れると消極評価になります。
事情がある場合もあるはずで、ここまで厳しくする必要があるのかは疑問です。
経営管理ビザの厳格化──“形式”から“実体”へ
ここ数年で最も相談が増えているのが、経営管理ビザの厳格化です。
● 3-1. 「実体のある事業」要件の強化
従来は、
- 事務所を借りる
- 500万円の資本金
- 事業計画書
これで形式的には要件を満たしていました。しかし今は、形式要件だけではほぼ許可されません。
● 3-2. 入管が重視する「実体要件」
必須となる資料は以下の通り。
- 売上実績(契約書・請求書・入金記録)
- 取引先の実在性
- 事務所の実態
- 従業員の雇用実績
- 経営者本人の常勤性
つまり 「事業を始めてから申請する」ことが必須 になりました。 従来の「事業を始めるためにビザを取る」という順番は、今は通用しません。
● 3-3. 偽装経営への厳しい対応
- 実体のないレンタルオフィス
- ペーパーカンパニー
- 日本人名義の形式的な取締役
- 同一住所に多数の外国人経営者
- 非現実的な事業計画
これらは即座にマイナス評価です。
● 3-4. 更新審査の厳格化
更新時には、
- 継続的な売上
- 税・社会保険料の期限内納付
- 経営者の常勤性
- 雇用創出性
が重視されます。「初回は通ったが更新で不許可」というケースが増えています。
● 3-5. 背景:乱用防止
留学生の在留目的変更やペーパーカンパニー増加などを背景に、入管は制度の信頼性確保を重視しています。
法律上の資本金要件は500万円のままですが、実務では 1000万〜3000万円規模 が必要になるケースが増えています。
特定技能制度の拡大
- コンビニ・スーパー・物流など新分野追加
- 2026年時点で特定技能在留者は30万人超
- 特定技能2号は永住への実質ルートとして注目
外国人材の受け入れは「短期」から「中長期」へと明確に転換しています。
まとめ──制度が変えるもの、そして失うもの
日本の外国人受け入れ制度は、
- 実習 → 育成
- 短期 → 中長期
- 曖昧 → 厳格
へと大きく変わっています。
特に経営管理ビザは「形式要件 → 実体要件」への転換が決定的です。
しかし、低賃金労働に従事する外国人を歓迎しながら、永住権では高い経済条件を突きつける矛盾は解消されていません。
大阪で出会ったネパール人女性のこと
昨日、大阪出張から戻った際、ビジネスホテルの受付を担当していたネパール人の女性が、私のヘナタトゥーに気づいて声をかけてくれました。 驚くほど上手な日本語で、仕事への誠実さも伝わってきました。
こうした外国人に対して、「あなたは日本人より稼げないから永住は認めない」というのは、やはりおかしいと感じます。
技能移民には技能移民としての基準を。 投資移民には投資移民としての基準を。 その区別を明確にすることが必要です。
また、経営管理ビザの要件を実質3000万円規模に引き上げる案もあるようですが、長年実績を積んできたレストラン経営者などには、事業の実態を踏まえた柔軟な更新手続きが必要だと思います。
「エスニックレストランが減るのでは?」という声もありますが、制度の透明性と公平性を高めることこそが、日本社会にとっても外国人にとっても不可欠です。

