日本にいるべきか、出るべきか その1

先日、友人に薦められ、NHKのクローズアップ現代「安いニッポンから海外出稼ぎへ」という番組を見ました。私はテレビは基本見ませんが、NHKのドキュメンタリー番組などは1-2カ月に1本くらい、オンデマンドでポチっとします。

個人的には、日本の若者が海外に出稼ぎに行くようになるだろうと、10年以上前から思っていました。海外とずっと仕事をしてきた私としては、日本だけが全く物価も給与水準も上がらないことにかなりの違和感を持っていました。バブルの後、大手企業では軒並み賃金カーブが年を取っても以前より明らかに上がらないよう、人事制度が改定されていますしね。

また昔勤め人をしていた頃、労働組合の仕事をしていた実感として、バブルの直後くらいから組合が経営側に取り込まれ、実質的に無力化して組合費を吸い上げるだけの組織になったと感じます。20年ほど前までは、定年まで勤め上げれば、大手企業ではそれなりの退職金も手にすることができましたが、退職金の金額は20年前と比べ平均で1000万円くらい減っているそうです。今時の若い人には、若いうちは安月給でこき使われ、年をとっても給料が変わらない未来がはっきり見えているわけです。

さてNHKの番組ですが、最初に出てきたのはオーストラリアでブルーベリーの収穫のアルバイトをする若者でした。聞けば元小学校の教師とか、理学療法士などだったそうで、安定な仕事を捨ててオーストラリアにやって来たとのこと。仕事は朝8時から始めて午後2時に終了。仕事が終わったら趣味や副業など自分の好きなことをやるのだと。それで月に50万円ほど稼げると。オーストラリアは物価が高いので、日本人同士で共同生活をし、外食はやめて自炊をし、できるだけたくさん稼いで帰りたいと。単純作業なので、英語圏とは言え英語を話す機会はないけれど、出稼ぎと割り切ればなかなか良いのではないでしょうか?

別の若者は元看護師で、現在オーストラリアで介護の仕事についていると。日本では残業も含めて月給は25万円前後だったと。今は月収は多い時で80万円で残業もなく、空いた時間を英語や資格の勉強も含めた自分のステップアップのために使っているという、なかなか野心的な彼女でした。

ここまで見て、この状況が続けば日本に技能実習生なんか、一人も来なくなくなるだろうなと思っていたら、次の展開はまさに日本に来る外国人労働者の問題でした。番組の中で取り上げられていたベトナムから来たという女性は在日4年目とのことでしたが、このまま円安が続いたら日本にはもういられないと。

経団連のオジサマ達は、日本より賃金の安い国はあるから、まだまだ日本に来る外国人はたくさんいると、超楽観的に考えているようです。でも1日12時間以上働かされて、月に10万円くらいしか稼げない国より、ブルーベリーを1日6時間ほど摘んで、日本の5倍くらい稼げる国の方が、誰だって行きたいと思うでしょう。あるいはガッツのあるベトナム人なら、日の出から日没までブルーベリーを摘んで、月100万円稼ごうと思うでしょう。なぜ、経営のプロである人たちが、日本と外国人労働者の国の賃金の二要因しか考えが及ばないのが謎です。こうしたオジサン達は海外に行っても、基本自分のお財布からお金を出して買い物するようなこともないのでしょう。日本の若者が流出しないためにも、海外から優秀な労働者を集めるためにも、一にも二にも賃上げしかありませんし、介護現場などは早急に対策しないと、本当に近いうちに担い手が全くいなくなると思います。

私は財政政策は専門ではないですが、今後円安が続くのも非常によくないと感じています。円安は日本の製造業にメリットがあると言う人がいますが、大手は製造現場を海外に移してしまっていますし、日本に製造拠点がある企業ではむしろ、円安のメリットより原材料費の高騰の方が影響が大きいと思います。また拠点を海外に移した企業にとって、労働力が確保できない日本に製造拠点を移すことはほぼないと考えます。募集をかけても労働者は集まらないでしょう。

現在の問題は、こうした製造業をはじめとする労働者の賃金が日本は安すぎることが問題なのです。そして昔と違い、今はインターネットがあるために、どこの国が稼げるという情報が瞬時に世界中を駆け巡ります。若者はどんどん賃金の高い国へと吸い取られていくようになると思います。特に言語能力があまり必要とされない単純労働や、逆に高度に専門化された仕事は賃金の低い国からどんどん労働者がいなくなるでしょう。

またゼロ金利政策や、日銀の黒田さんが続けてきた、お札を擦り続けるという行為も、日本の価値が下落する要因になったと思います。日銀総裁の黒田さんは定年退職されるそうですが、後任と発表された方は初めてお聞きする名前でした。これから大変なことはわかっているので、きっと候補者の間で総裁職の譲り合いバトルがあったのでしょう。金利はこのままゼロにするわけにはいかず、かといって上げると国債の利払いが増えるので、どうするのでしょう。誰がどう見ても黒田さんの後任は大変です。

私は子供はいませんが、同年代の知人の中には子供を海外に留学させている人が多いです。中には高校から留学させ、子供に日本には戻って来るなと子供に言い聞かせている人も。以前、中国の会社に勤めていた時、中国人の同僚が私に、「日本人が海外に留学しても日本にすぐ帰るのは、日本がいい国だからだよ、中国はよくないからみんな戻りたいと思わない」と話していましたが、日本人がなかなか日本に戻らなくなってきた今、残念ながら日本は日本人にとっていい国でなくなりつつあると感じています。それではやはり若い世代は日本から脱出した方がいいのでしょうか?

次回は海外生活&移民に関して、私の経験も交えて私見を述べたいと思います。

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