本業である医薬研究受託や製造受託の仕事がにわかに忙しくなりました。今年に入り、すでにインドに3回出張し、5月半ばと6月にまたインドに行かなくてはいけない状況になっており、国内出張も増えて今年はなかなかハイペースでよい出だしです。コロナの間は在宅でじっとしていることが多かったので、旅行好き&インド占星術でも移動が福を呼ぶ運勢の元に生まれている私としては、過去3年は運気も滞り、本当にやりきれない感じでした。
そんなわけで統一地方選挙は全く関与していません。ですが国際婦人年連絡会やクオータ制を推進する会にかかわっているので、女性議員がどのくらい増えるかは大変注目しています。3月に国際婦人年連絡会のセミナーに登場いただいた岸本聡子さんが区長をされている杉並区では、女性議員が50%を超えたとのこと。普通に考えれば、日本の人口の半分は女性ですから、議員の半分が女性でもなんの不思議もないはずですが、それがものすごいことに思える日本は、やっぱり政治分野における女性の活躍が抑圧されているといえるでしょう。
岸本杉並区長と統一地方選挙
3月の岸本聡子さんのセミナーについては、残念ながら動画配信がないのですが、「ミュニシパリズム」というテーマで、彼女のこれまでの活動や、ヨーロッパでの活動を通して何を学んだか、それを杉並区でどのように生かすかを中心にお話いただきました。岸本さんは政治家というよりまさに研究者で、研究者の端くれである私は非常に親近感が持てました。
こういう言い方失礼かもしれないのですが、一般的な日本の政治家は、口が軽くて中身が薄い印象ですが、岸本さんは中身が一杯詰まっていて、静かな秘めたる思いが体の中から沸々湧き上がるという感じで、饒舌ではないところが逆に好印象。すぐにファンになってしまいました。
お話の中で、「政治のフェミナイゼーション(feminization)」がスペインやフランスなどで活発化しており、競争、秘密主義、力による弾圧に象徴される男性的な政治ではなく、女性が得意とする協調、対話、当事者への共感力、弱者への想像力による解決を強調する政治へと変化してきているとありました。日本もタイムラグはあると思いますが、近い将来そうなると感じます。
杉並区でもヨーロッパで「ミュニシパリズム」が活発化した原因である、公共サービスの民営化による様々な弊害(職員の短期雇用と低賃金、サービス廃止や高額化など)があるとのこと。これを是正すべく、金額だけを単純に評価する入札ではなく、将来への影響も考慮した入札システムを検討したいとおっしゃっていました。つまりとにかく今安けりゃいいではなく、そこで働く人や地域への長期的な影響も一緒に考えられる企業を選ぶということですね。
杉並区にかかわらず、国や地方自治体の入札システムでは不透明で首をかしげたくなるものも多くあります。市民が資料の開示を求めても、開示された資料が、個人情報や会社機密にかかわると、ほぼ黒塗りだったりします。岸本さんは今後杉並区で入札する企業には、100%の資料開示を求めたいとおっしゃっていました。私もそれをやるべきと思います。
例えば記憶に新しいところでは、アベノマスクがあります。マスクを受注した会社の中には、できたばかりのペーパーカンパニーで、マスクを取り扱った経験もないのに、何十億円分ものマスクの受注をした企業がありました。しかも入札ではなく随意契約で。そして配られたマスクは「なに、これ?」というクオリティ。Wikipediaによると、朝日新聞社の世論調査で国民の81%がアベノマスクは役に立たなかったと回答し、2020年8月時点で3.5%の国民しか使用していなかったという、大いなる税金の無駄使いがありました。が、その受注経緯は全く闇の中。どこかの教授が資料の開示請求をしていましたが、開示された資料は黒塗りだらけ。岸本さん曰く、市民の開示請求に応えるための資料の黒塗りも、非正規公務員が何十時間もかけて黒塗りするのだとか。「税金のムダ!」と。
講演は区政に関して非常に期待の持てる内容となり、思わず「杉並区に引っ越したい」とコメントする方もいらっしゃったほど。杉並区に住む友人も、今回の統一地方選挙に関しては、「岸本さん効果は絶対にあった」と。岸本さんの例は、特定の政党に属さなくても、地盤やお金がなくても、市民の手で政治は変えられるという事例の一つだと思います。岸本さんに続くべく、多くの女性が政治家として、あるいは政治家を支える側として今回の統一地方選挙に臨んだことでしょう。
首長は外部からが良い?
地方自治体ではその自治体の公務員から首長になる人も多いのではないかと思います。私はそれを否定するわけではないですが、首長になる人は最低でも他の自治体に住んだ経験のある人であるべきと私は思っています。そうしないとその自治体で行われていることがまともか、まともでないか判断できなくなることが多いからです。
私は現在東京都足立区に住んでいるのですが、3年ほど前、足立区の政策評価にかかわる区民評価委員の募集に応募した時に、(おそらく)区にとって都合の悪いことを言ったので不合格(?)になりました。その経緯がちょっと面白いので紹介して終わりたいと思います。
足立区に転入したのは10年ほど前で、その当時は個人事業主で仕事をしていました。春に転入したのですが、転入して間もなく国民健康保険の納付書が区から送られてきました。金額を見たところ年間3万6千円くらいでした。その前、私は神奈川県平塚市に住んでおり、その時はほぼ最高額、年間90万円程度払っていたので、「安っ」と思ったのですが、よく見るとこれは仮の金額のようなことが書いてあります。?と思いましたが、金額も少ないので1年分一括で納付しました。
その後、第2期分の納付期限の2週間前くらいのタイミングになって、また納付書が送られてきたのです。??と思って確認すると、今後は確定金額とあり、やっぱり保険料は年間90万円くらいでした。そしてよくよく確認すると、その金額から3000円程度ひかれており、その金額が納付済みとなっていました。が、私は最初の納付書の1年分の金額を支払ったので、この納付書は使えないということになります。仕方がないので区の国保担当部門に電話すると、「確認します」と。そして「どうして全部払ったんですか」と文句を言われながらも、最後には「訂正した納付書を送ります」と言われました。第2期の納付書は納付期限の2日ほど前に2期分だけの納付書1枚が速達で送られてきました。そして1月後に3期目以降の納付書がまとめて送られてきました。
1年目は引っ越しのタイミングが春だったので、平塚市から足立区へのデータの移行手続きに時間がかかったのかと思っていたのですが、実は2年目も同じことが起こりました(笑)私の場合、確定申告は還付(払いすぎた税金を戻す申告)なので、2月の申告が始まってすぐに申告します。2年目も直ぐに申告したのに、結局1回目の納付書は申告額未確定につき3万6千円のような納付書が送られてきて、しばらくしてから1か月分の暫定金額を払ったという前提で納付書が送られてきました。つまり足立区は常に国保の納付書を2回作成して2回送付するという税金の無駄使いをしていたということです。(その後私は会社設立のため協会けんぽに加入し、国保から脱退したので今でもそうなのかわかりません)足立区は個人経営の工場をやっているような個人事業主の多いところで、3月のギリギリのタイミングで申告する人も多いでしょうから、そういう人には一体いつ納付書が送られているのでしょうね。
他の自治体に住んでいる人に言わせれば、納付書作成の忙しいタイミングはあらかじめわかっているのだから、その時期に他の部署から応援を出すとか、臨時に人を雇うことをすればよいということになります。足立区は異常です。でもそれが日常になると、変なことに気が付かなくなるのです。中にいる人に言わせると、「こっちだって一生懸命やっているのに、批判するなんて!!!」(これは区民評価委員の面接の時に、区の職員の方に言われたことです)だから首長は外の世界を見てきている人が良いわけです。岸本さんのように海外の事情も分かれば最強です。
区民評価委員の面接の中で私は、上記のエピソードに対する区の対応策を求めつつ、区のアドバイザーをしているという大学の教授に、区が毎年作成している評価報告書の評価をどうやって決めているのか質問しました。区が毎年出している報告書には、達成度などが点数で表記されているのですが、その点数の出し方がはっきりしないのです。社会学的な研究であれば、例えば毎年ランダムで100人とか1000人の住民にアンケートを送って評価する等々、その選別方法も含め結構大変なのですが、どうも内部評価も区の評価委員も特に基準はなく、主観で決めているようだというのが私の印象でした。指摘するとその教授は、「本来はそうしなくてはいけないんですけどね・・・」と口をつぐんだところでタイムアップです。そしてその後応募者多数につき採用見送りましたという通知が来ました。
今回の統一地方選挙を見ていると、自治体の政策評価委員ですという若い候補者が多いのですが、若い世代を政策評価委員にする目的は、若い世代が世の中のことがよくわからないので、こういうものだとごまかしやすい、だましやすいというのがあると思います。(が、若い世代の政治参加を否定するものではありません)敢えて若い世代ばかり採用する自治体も多いのではと。面接の中で最初に区の職員の方が、「委員会の後の飲み会が最高に楽しい」とおっしゃっていましたが、委員に若い世代が多ければ、それは事実なんでしょう。政策評価は「やってます感」を演出するための道具になっているのではというのが私の感想です。ですので、とりあえず私は、保守派に取り込まれていると思われる、地方自治体の政策評価委員をしている候補者には投票しないことにしています。(そうでない方ごめんなさい)