きどかおり公式サイトhttps://kidokaori.jp国民民主党Sun, 01 Feb 2026 05:22:13 +0000jahourly1https://kidokaori.jp/wp-content/uploads/2025/06/7-150x150.pngきどかおり公式サイトhttps://kidokaori.jp3232 207996518日本に永住を希望する外国人はどんな人たちかー最新データから考える日本の移民制度https://kidokaori.jp/blog/3181/Sun, 01 Feb 2026 05:22:09 +0000https://kidokaori.jp/?p=3181

日本ではいま、外国人住民の数が過去最高を更新し続けています。 深刻な労働力不足を背景に受け入れは加速していますが、制度整備は追いついているとは言えません。その結果、永住を望む外国人の姿が見えにくくなり、技能実習制度のよう ... ]]>

日本ではいま、外国人住民の数が過去最高を更新し続けています。

深刻な労働力不足を背景に受け入れは加速していますが、制度整備は追いついているとは言えません。その結果、永住を望む外国人の姿が見えにくくなり、技能実習制度のような歪んだ仕組みが温存されているのが現状です。

この記事では、最新データをもとに「どんな外国人が日本に永住を希望しているのか」そして「日本はどのような移民制度を整えるべきなのか」について考えていきます。

データで見る日本の外国人の現状

まずは現状を数字で確認してみましょう。

出入国在留管理庁の資料によると、2025年6月時点で日本の外国人住民は約395万人。これは過去最高で、前年比約5%の増加です。国籍別では以下の5カ国が上位を占めています。

  • 中国:約90万人
  • ベトナム:約66万人
  • 韓国:約41万人
  • フィリピン:約31万人
  • ネパール:約27万人

この5カ国だけで255万人に達し、日本の外国人の多くがアジア出身であることがわかります。特にネパールは前年比17%以上の増加で、新たな流入国として存在感が高まっています。

在留資格別では、

  • 永住者:約92万人
  • 技能実習生:約45万人
  • 技術・人文知識・国際業務:約42万人
  • 留学生:約40万人

日本は「移民国家ではない」と言い続けてきましたが、実態としてはすでに移民社会に近づいていると言えるでしょう。

永住を希望する外国人はどんな人たちか?

永住を望む外国人は一枚岩ではありません。大きく分けると次の4つの層が存在します。

1. 長期的に働きたい層

介護・製造・外食など、人手不足が深刻な分野で働く人たち。日本語力が高くなくても、特定技能から永住を目指すケースが増えています。

2. 高度人材

ITエンジニア、研究者、経営者など専門性の高い人材。日本語ができ、納税額も多く、地域社会に溶け込みやすい傾向があります。

3. 家族帯同で生活基盤を築く層

子どもが日本の学校に通い、日本語が母語になるケースも珍しくありません。本人の日本語力が高くなくても、家族のサポートで生活が成り立つため、永住を希望する人が多い層です。

4. 日本文化・治安・生活環境を評価する層

「安全」「教育」「清潔さ」「差別が比較的少ない」などを理由に、日本を生活拠点に選ぶ人たち。学生や観光客として訪れ、日本の良さに気づいて移住を希望するケースもあります。

共通しているのは、「日本社会に適応し、長期的に貢献したい」という意志があること。

最近では、中国の富裕層が子どもの教育目的で家族移住するケースが増えています。文京区は教育熱心な中国人が多く移住する地域として知られ、高田馬場には中国人向けの大学受験予備校が増加中です。東大など難関大学の合格者も増えています。

また、永住権審査では語学力が非常に重要ですが、中国語話者はそもそも漢字を使用するため、日本語の読み書きで有利です。そのため、高度人材や家族帯同の移住者に中国人が多くなるのは自然な流れと言えます。

私自身、インド企業で長く働いてきましたが、インド人にも日本移住を希望する人は多く、理由は治安の良さや、アニメをはじめとした日本文化や日本のハイテク技術へのあこがれが多いように思います。語学が得意な人が多く、日本語も「話すだけなら難しくない」という声をよく聞きますが、読み書きはやはり難しいようです。

日本が整えるべき移民制度とは?

ここからは私自身の考えも交えて整理します。

日本は「移民政策は取らない」と言い続けてきましたが、技能実習や特定技能を通じて、実質的な移民受け入れはすでに進んでいます。だからこそ必要なのは、透明で、公正で、持続可能な移民制度です。

ポイントは次の4つです。

明確な永住基準の設定

  • 日本語能力(例:N2以上)
    ※技能実習生の基準はN3〜N4で、読み書きは困難なレベル
  • 日本の文化・歴史・法制度の理解
  • 納税・就労実績
  • 地域社会への参加

誰が見ても納得できる基準が必要です。

カナダ・オーストラリア型のポイント制

学歴、職歴、語学力、年齢、技能などを総合評価し、日本社会に適応できる人を選ぶ仕組み。透明性が高く、運用面でもメリットがあります。

家族統合のルール整備

家族帯同の条件を明確にし、子どもの教育支援も整えること。移民を受け入れる以上、移民の家族への言語・教育支援は不可欠です。映画「名無しの子」を見てのブログにあるような悲劇は、繰り返すべきではありません。

地域社会との共生政策

日本語教育の公的支援や自治体との連携が不可欠。言葉が通じないストレスは想像以上に大きく、ここを支える仕組みが絶対に必要です。

技能実習制度の問題点と、廃止すべき理由

技能実習制度は本来、途上国への技能移転を目的に始まりました。しかし実態は、安価な労働力の確保が中心になっていることは明らかです。

かつての「外国人研修制度」の名残から、「初年度は研修だから最低賃金以下でよい」と誤解している企業もあり、残業代未払いなどの違法行為も見られます。多くの実習生は単純作業に従事し、技能移転がほとんど行われていないケースも多いのです。

さらに深刻なのが、ブローカーによる搾取構造です。

  • 来日前に高額な借金を負わせる
  • 返済のために逃亡・違法就労に追い込まれる
  • パスポート取り上げ
  • 長時間労働
  • 性暴力などの人権侵害

実習生が来日前に抱える借金は、受け入れ先の日本企業の知らないところで起きていることが多いのかもしれませんが、企業としてはやはり、クリーンな手続きを経て来日した実習生のみ受け入れる必要があるでしょう。

また日本での実習生の非人道的な扱いはSNS等で瞬く間に世界に拡散され、日本の評判を落とすリスクもあります。

最大の実習生送り出し国であるベトナムでは、特に都市部で賃金上昇が進み、技能実習と同程度の給与水準になりつつあり、日本に来るメリットが薄れつつあります。円安もあり、優秀な人材はより条件の良い国へ流れているのが現実です。

だからこそ私は、技能実習制度は廃止し、個別審査型の移民制度へ移行すべきと考えています。

少し脱線しますが、先ごろインドに日本の支援で建設中の新幹線の運転士を養成するため、JRがインド人運転士にを日本の新幹線を使って訓練する様子がニュースで流れていました。

【独占取材】日本の新幹線をインドへ!運転士訓練に密着 新幹線輸出を解説【小川知美の経済掘りおこし】

駅のプラットフォームに入船する速度の厳格な管理や、秒単位の運行時間管理など、新幹線の運転士はこんなにも大変なのかと驚きでした。教える側も教えられる側も、真剣そのものです。まさに「技能実習」です。ですがこうした本来の意味の技能実習を行っているケースは、人手不足の今、ますます少数派になりつつあるでしょう。

ですから技能実習とは言えない技能実習制度は廃止して、代わりに、特定技能(介護、建設、ITその他特定分野のスキル)+厳格な審査、ブローカー禁止、政府間協定による透明化が必要です。

結論

日本はすでに外国人と共に生きる社会になっています。しかし制度は追いつかず、技能実習制度のような歪んだ仕組みが残っています。

永住希望者の質を高めるには、明確な移民制度と厳格な審査が不可欠です。

日本語・文化・歴史を理解し、日本社会に溶け込める人を選ぶ。そして透明で公正な制度を整え、日本の労働市場の需要に合った人材に来てもらう。

これこそが、日本の未来にとって必要な方向性だと考えています。

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永住権はどの国が取りやすい?日本・カナダ・アメリカを徹底比較https://kidokaori.jp/blog/3175/Sun, 25 Jan 2026 04:22:50 +0000https://kidokaori.jp/?p=3175

今日は「永住権の取得しやすさ」をテーマに、日本・カナダ・アメリカの3カ国を比較しながら、それぞれの制度がどんな価値観で設計されているのかを整理してみます。 私自身、カナダの永住権を自力で取得した経験があり、周囲にはアメリ ... ]]>

今日は「永住権の取得しやすさ」をテーマに、日本・カナダ・アメリカの3カ国を比較しながら、それぞれの制度がどんな価値観で設計されているのかを整理してみます。

私自身、カナダの永住権を自力で取得した経験があり、周囲にはアメリカやオーストラリアで永住権を得た人も多くいます。実体験も交えながら、できるだけわかりやすくまとめました。

日本の永住権:要件はシンプルだがハードルは高め

日本の永住権は、国際的に見ると「取得のハードルが高い国」に分類されます。
出入国在留管理庁 (https://www.moj.go.jp/isa/index.html)のガイドラインでは、主に次の4つが要件とされています。

  • 原則10年以上の在留歴(うち5年以上は就労または居住資格)
  • 安定した収入と納税実績
  • 素行が良好であること
  • 日本の国益に適合すること

日本語能力は必須ではないが、実務上は重要

現行制度では日本語能力は必須ではありません。ただし、自治体とのやり取りや生活基盤の安定性を示すために、日本語能力試験(JLPT)N2程度(中級―上級)の証明を任意で提出する人が多いと言われています。

背景には、外国人住民が増える中での「社会統合」の必要性があります。

日本社会は仕事の場面で特に「読み書き」を重視する文化があります。ですが日本語の読み書きは一般的に外国人にとって非常に難しい領域です。

漢字文化圏の中国人は比較的有利で、唯一の例外かも知れません。実際、大連にある日本企業向けカスタマーサービスに従事する中国人のあまりに高度で流ちょうな日本語に、驚愕する日本人も多いことでしょう。

私の考え

永住権は「長期的に社会に参加する意思と能力」を前提とした資格です。その意味で、役所手続きを自力でこなせる程度の日本語力は、最低限必要だと感じています。語学力を永住権申請の要件とすることは理にかなっていると思います。

漢字文化圏の中国や、文法が近い韓国語話者が有利になるのは制度上避けられない部分ですが、社会参加を前提とする以上、一定の言語要件は不可欠でしょう。

カナダの永住権:スコア制で透明な制度

次にカナダです。

私はカナダの永住権を自分で申請しましたが、制度の透明性と合理性は群を抜いていると感じます。
現在は永住権カテゴリーが細分化されていますが、基本は Express Entry(ポイント制) が中心です。

完全スコア制の審査

評価項目は次の通り。

  • 年齢
  • 語学力(英語・フランス語)両方できればさらに加算
  • 学歴
  • 職歴
  • Job Offer の有無

これらを点数化し、高得点者から永住権を付与する仕組みです。

つまり、若くて、稼げて、健康で社会保障費を浪費せず、税金を払ってくれる人が優先されるという、極めて合理的なロジックです。これはカナダ以外の国でも基本同じです。

カナダの語学基準は想像以上に厳しい

カナダでは、首相になるには英仏バイリンガル能力が求められます。そのくらい、語学への要求が高い国です。現首相であるMark Carney氏は英語話者で、就任当初はフランス語スピーチが拙いと批判されていました。それでも日本の政治家の英語よりはるかに上手いと感じるほどです。それだけ基準が高いということです。

*本日のテーマからは外れますが、カーニー氏のフランス語を批評した、多言語話者であるSteve Kaufman氏のYouTube動画のリンクを下記に。また先日行われたDavos会議でのカーニー氏の感動的なスピーチのリンクも下記に。

多言語話者の反応:マーク・カーニーのフランス語はどれくらい上手いのか? 設定変更で日本語字幕も表示できます

マーク・カーニーカナダ首相のダボス世界経済フォーラムでのスピーチ全文 日本語音声にも切り替え可能

弁護士依頼は逆効果になることも

私が申請した当時、申請パッケージには「弁護士を使わず自分で申請するように」と明記されていました。弁護士に依頼すると「自力で書類を処理できない」と判断され、審査が長引いたり、不要なインタビューが追加されることもあります。

また、現地や欧米の大学を卒業していれば語学テストが免除されるなど、合理的な仕組みも整っています。永住後は家探し、光熱費契約、銀行口座開設、税申告などを行う必要があり、語学力は生活の必須条件です。

アメリカの永住権:運・スポンサー・資金力がカギ

アメリカは永住権の取得ルートが非常に多様です。

グリーンカード抽選(DV Lottery)

世界的にも珍しい「抽選で永住権が当たる」制度です。私の知人にも当選者がいます。

知人は私がボストンのビジネススクールにいた時の同級生でしたが、能力は高いのに当時は英語があまり流ちょうではなく、就職活動で苦労していました。ですがグリーンカードが当たったとたん、希望通り財務評価をする仕事に就くことができました。ニューヨークにある、スタンダードプアーズという、誰でも知っている格付け企業です。晴れてニューヨーク勤務になりました。移民の場合、能力があっても言葉がおぼつかないと、能力相応の評価がされないという問題があります。

ただし、言語能力が弱い移民は評価されにくいという構造は、アメリカでも日本でも例外ではないでしょう。

労働ビザからの切り替え

一般的なルートですが、手間もコストも非常に大きいです。

スポンサー企業は、

  • 複数の全国紙に求人広告を数ヶ月掲載
  • 「適任なアメリカ人がいない」ことを証明
  • 応募者の履歴を精査し、スポンサー対象者がより優れている理由を詳細に説明

といった作業を行う必要があります。これは労働市場テスト(Labor Certification)と呼ばれるプロセスで、アメリカ人労働者の保護が最優先されます。

つまり、アメリカ人では代替できないほど優秀であることが求められます。当然ながら、英語力が不十分な人がこのルートで永住権を得るのはほぼ不可能です。

投資移民の進化版「ゴールドカード」

一定額の投資で永住権を取得できる投資移民制度は諸外国にも存在しますが、トランプ大統領が就任してから米国の投資移民制度はインフレが進んでいます。昨年末、トランプ米大統領は、100万ドル(約1億5600万円)で永住権を取得できる新たなビザ(査証)「ゴールドカード」プログラムの申請受付を開始したと発表しています。永住権が「資金力」で左右される側面が強まっています。投資移民のカテゴリーに関しては言語要件はありません。

さらにアメリカの特徴として、永住権保持者は全世界所得に対してアメリカに納税義務があるという点が挙げられます。
これは他国にはほとんどない仕組みです。米国以外では、基本的に税金は居住国に収めることになっており、二重課税されません。ですから米国に住むつもりがない人が、米国の永住権を取ると大変なことになります。米国にとっては、移民が米国にいてもいなくてもお金が入ってくる仕組みです。

まとめ:日本も「言語要件」を明確化すべき時期に来ている

3カ国を比較すると、アメリカもカナダも言語要件は非常に厳格です。
日本が今後、永住権申請に日本語要件を導入しようとしているのは、社会参加の観点からも自然な流れだと感じます。

特に日本では、日本語で読み書きし、行政手続きを自力で行えることが社会生活の基盤になります。もし言語要件を設けないまま移民が増えれば、自治体や学校などの公共サービスがパンクするリスクもあります。

評価方法としては、

  • 日本語能力試験(JLPT)を使うのか
  • 諸外国のように、大学卒業者以外にインタビューを課すのか

など、今後の制度設計が問われるところです。

永住権は「定住資格」であり、単なる労働ビザとは異なります。その意味で、話すだけでなく、読み書きの能力を公平に求めることが重要だと考えています。

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3175
GLP-1受容体作動薬についてhttps://kidokaori.jp/blog/3170/Sun, 18 Jan 2026 11:28:38 +0000https://kidokaori.jp/?p=3170

投稿 今日は、世界中で大きな話題になっている「GLP-1受容体作動薬」について、科学・社会・産業・文化的側面を横断してお話しします。 GLP1受容体作動薬は、もともとは糖尿病治療薬として開発された薬です。それがいまや「や ... ]]>

投稿

今日は、世界中で大きな話題になっている「GLP-1受容体作動薬」について、科学・社会・産業・文化的側面を横断してお話しします。

GLP1受容体作動薬は、もともとは糖尿病治療薬として開発された薬です。それがいまや「やせ薬」としてSNSでバズり、製薬企業の株価まで動かしています。医療の枠を超えて社会現象になっている薬は、このGLP1受容体作動薬(以下GLP1)くらいだと思います。

今日は、「糖尿病とは何か」→「なぜGLP-1が肥満に効くのか」→「企業競争」→「製造技術」→「日本の特殊事情」→「世界との比較」という流れでお話しします。

糖尿病とは何か?何が問題なのか?

まずGLP-1の話に入る前に、糖尿病そのものを整理します。

糖尿病は、血液中のグルコース(血糖)を細胞に取り込むホルモンである「インスリン」の働きが弱くなり、血糖が高い状態が続く病気です。

血糖が高い状態が続くと、血管がじわじわと傷つき、全身の臓器がダメージを受けます。

たとえば、

• 心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がる
• 腎臓が壊れて、体に有害なものを排泄できなくなり、最終的に透析が必要になる
• 目の血管が傷んで失明する
• 神経障害で足の感覚がなくなる
→ ひどい場合は壊死して切断に至ることもあります

つまり糖尿病は「血管の病気」とも言えるかもしれません。

糖尿病というと、「暴飲暴食をした人がなる病気」「不摂生の結果だ」と思われがちですが、実はそれだけではありません。
遺伝的に糖尿病になりやすい体質の人は多く、生活習慣だけでは説明できないケースもたくさんあります。特に日本人は、欧米人と比べて高度な肥満がなくても糖尿病になりやすいという特徴があります。また、遺伝的な要因によって若い年齢で糖尿病を発症する人もいます。

つまり糖尿病は、「自己管理が悪いからなる病気」ではなく、体質・遺伝・環境が複雑に関わる病気だということです。

いろいろな糖尿病薬

糖尿病薬にはいくつか種類があります。

• インスリン分泌を促す薬(スルホニル尿素薬、GLP-1など)
• インスリンの効きを良くする薬(メトホルミン、チアゾリジン系糖尿病薬)
• 糖を尿から排出することを促進する薬(SGLT2阻害薬)
• インクレチンという、インスリン分泌を促すホルモンを分解する酵素を阻害する薬(DPP4阻害薬)

この中でGLP-1は、食後のインスリン分泌を調整するホルモンである「インクレチン」を模倣した薬です。ちなみに「インクレチン」は一つのホルモンを指すのではなく、インスリンの分泌を促すホルモンの総称で、GLP1やGIPといったものが知られています。

GLP-1は血糖を下げるだけでなく、

• 胃の動きをゆっくりにする
• 脳の満腹中枢に作用して食欲を抑える

という二つの働きがあります。

このGLP1のメカニズムが、肥満治療に応用される伏線になっています。

GLP-1が抗肥満薬として爆発的に受け入れられた理由

今、肥満は「意志の弱さ」ではなく、脳の食欲制御システムが変化する慢性疾患と捉えられています。

従来の抗肥満薬は、

• 効果が弱い
• 副作用が強い

という課題がありました。そこに登場したのがGLP-1です。

GLP-1は血糖が高いときだけ作用し、低くなるとインスリン分泌を止めるため、低血糖が起きにくいという特徴があります。さらに中枢作用で「食べたい」という欲求そのものを下げ、胃の動きをゆっくりにして満腹感を長く保ちます。臨床試験では、セマグルチド(ウゴービ)が平均15%の体重減少を達成しました。これは肥満治療の歴史を変えるレベルです。

アメリカは現在、肥満率が40%を超える肥満者会です。そのため、このGLP1の社会的ニーズが爆発し、GLP-1は一気に社会現象になりました。

製薬企業の熾烈な競争と「インスリンの地政学」

現在のGLP1の主役は、

• ノボノルディスク(デンマーク)
• イーライリリー(アメリカ)

この2社です。ノボ社は、オゼンピック(糖尿病)/ウゴービ(肥満薬)というGLP1を持っています。リリー社はマンジャロ(糖尿病)/ゼップバウンド(肥満薬)というGLP-1/GIP受容体二重作動薬を持っています。

*両社とも同じ成分で、糖尿病薬用途と肥満薬用途の製品を持っています。

今これらの医薬品の需要が急増し、世界中で供給不足が起きています。両社の企業価値は急上昇し、国家レベルの経済にも影響するほどです。

実はこの2社、もともと糖尿病の治療に使われる、インスリン薬のトップ企業でもあります。インスリンは古くからあるペプチド医薬で、ノボ・リリー・(仏)サノフィの3社が寡占してきました。

ちなみに糖尿病は重症になると、インスリンの分泌そのものが難しくなったり、元々インスリンの分泌が弱いタイプの糖尿病の人もいて、そのような場合にはインスリンを外から補う必要があります。ですから現在でもインスリンは糖尿病において重要な薬です。

インスリンの製造方法

そしてそのインスリンの製造方法ですが、

• イーライリリー:大腸菌でインスリンを製造
• ノボノルディスク:酵母(パンや酒に使われるものと同様の種類の酵母)で製造
→ 酵母を使った製造はコストが安く、大量生産に向く

したがって、インスリンの市場では、価格競争力のあるノボ社のインスリンのシェアが他の2社より大きかったのです。ところが近年、インドのバイオコン社がPichiaというノボ社とは違う工業用酵母でさらに安くインスリンを作り、低所得国を中心に市場を拡大しています。

バイオコン社はジェネリック大手の米国のマイラン社(現ヴィアトリス社)のバイオシミラー部門を買収し、販売網を手に入れ、近年アメリカでもインスリンバイオシミラーの承認を取得しました。高騰する医療費を抑制しようと躍起になっている米国で、安価なインスリンが市場を拡大するのは時間の問題でしょう。

つまり、インスリン市場の地政学が揺らぎ始めているのです。そんな背景があり、ノボ社はインスリンに代わるパイプラインの開発を進めていました。そしてリリー社と熾烈な特許争いを戦ってきました。

GLP1の開発競争

GLP-1アナログの開発では、当初リリー社が先行していました。しかし、リリー社が最初に手がけたGLP-1アナログは血中半減期が短く、実用化には不向きでした。

その後、ノボ社がDPP-4による分解を受けにくくするため、脂肪酸をペプチドに結合させる工夫を取り入れ、血中半減期の長いGLP-1アナログを開発します。さらに改良を重ねた結果、現在広く使われているセマグルチド(商品名:オゼンピック、ウゴービ)が誕生しました。

一方でリリー社は、ノボ社の特許を回避しつつ独自の方向性を追求し、より高い効果を狙ったGLP-1/GIP受容体の二重作動薬へと進化させています。

こうして両社は特許戦略も含め、激しい競争を繰り広げてきたのです。

*もっと詳しく知りたい方は、下記のリンクをご参照ください。非常にわかりやすくまとめられています。

GLP-1受容体作動薬の開発競争と特許の攻防について解説

同じペプチド薬でも製造方法は全く違う

インスリンは酵母や大腸菌で作る「培養型」のバイオ医薬ですが、GLP-1薬は 完全化学合成(固相合成) です。

化学合成は、

• 不純物やウイルス混入のリスクが低い
• 精製が容易

というメリットがありますが、実は大量生産には向いていません。

そのため需要が急増すると、製造が追いつかなくなります。今まさにその状況です。

世界中のペプチド製造企業がフル稼働していて、日本でも補助金を出してペプチドの化学合成ができる工場を増やそうという動きがあります。

ただし、これは永続的な需要ではない可能性があります。技術革新が起きれば、一気に状況が変わります。たとえば中外製薬は、経口投与できる非ペプチド型のGLP-1受容体作動薬を開発し、2018年にリリー社にライセンス導出しました。そしてリリー社は昨年末に米国で承認申請しました。

これは非ペプチドですので、ペプチドの製造設備は必要ありません。従来型の低分子用製造設備があれば製造可能です。低分子医薬は一般的に製造コストがペプチドに比較して低く抑えることができるので、一気に市場が拡大する可能性があります。そうなると、ペプチド合成の需要は逆に一気に縮小する可能性があります。まさにゲームチェンジャーです。

世界と日本の「肥満」の違い

アメリカでは「貧しい人ほど太る」という現象があります。安価な食品が高カロリー・高糖質だからです。

ジャンクフードは、油+糖質という脳の報酬系を最大限に刺激する組み合わせです。砂糖は依存性が強く、脳科学的には「麻薬より怖い」と表現されることもあります。

一方、日本はまったく逆です。

世界基準ではBMI30以上が肥満ですが、日本ではBMI25以上を肥満としています。日本の肥満人口はBMI25以上が人口の20%、BMI30以上が人口の4%です。

実は日本の場合、深刻なのは、20代女性のやせすぎです。BMI18.5以下の「やせすぎ」の日本女性は5人に1人。日本の若い女性の平均BMIは、戦後の食糧難より低く、アフリカの食糧事情の悪い国より低い状況です。

にもかかわらず、SNSを中心に「もっと痩せたい」という圧力が強く、栄養不足による不妊や骨粗鬆症が問題になっています。

さらに、本来は病的肥満の治療に使うGLP-1が、オンライン診療で「やせ薬」として乱用され、糖尿病薬として供給不足を招き、必要な糖尿病患者に届かないという事態も起きました。

乱用され始めているGLP1の健康被害はまだ確認されていませんが、厚労省も問題視しています。規制は追いついていません。

まとめ

GLP-1は、単なる「やせ薬」ではありません。

社会の価値観、経済格差、医療アクセス、食文化の歪みを映し出す鏡のような存在です。科学的に正しい理解を持ち、必要な人に薬が届く仕組みを整え、私たち自身の「食と健康の文化」をどう作り直すか。GLP-1は、その議論を始めるきっかけになる薬だと思います。

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HPVワクチンの今https://kidokaori.jp/blog/3163/Mon, 12 Jan 2026 13:52:57 +0000https://kidokaori.jp/?p=3163

今日は、私自身の経験も交えながら「HPVワクチンの今」についてお話ししたいと思います。実はHPVワクチンは、私にとって特別な思い入れのあるワクチンです。というのも、2000年代初頭、私は医薬品ライセンスの仲介の仕事に携わ ... ]]>

今日は、私自身の経験も交えながら「HPVワクチンの今」についてお話ししたいと思います。実はHPVワクチンは、私にとって特別な思い入れのあるワクチンです。というのも、2000年代初頭、私は医薬品ライセンスの仲介の仕事に携わっており、その中の案件のひとつが、このHPVワクチンだったからです。

HPVワクチン開発の裏側で見たこと

HPVワクチンは、オーストラリアの免疫学者イアン・フレイザー、そして中国出身のウイルス学者ジャン・ジョウ(周健さん)によって発明されました。彼らの技術は、オーストラリアのCSL社に独占ライセンスされます。

HPVワクチンのコア技術である「Virus-like particles(VLP)」──ウイルスの殻だけを模したタンパク質を作る技術は、当時としては非常に難易度が高いものでした。CSLは自社での開発を断念し、サブライセンス先を探していました。

ちょうどその頃、私はCSL社を訪問し、日本企業への仲介を提案しました。担当者は自信満々にこう言いました。

「うちのHPVワクチンは、今Merckが開発しているものより優れている」

交渉は順調に進み、帰国後に正式な連絡を待っていた。ですが届いたのは「Merckがライセンス意向を示したため、日本企業への仲介はキャンセルしたい」という連絡でした。

その後、Merckは自社開発品の臨床試験をキャンセルし、CSLから導入したワクチンで開発を進め、ファストトラックでわずか2〜3年で上市します。当時としては異例のスピードでした。

日本企業に仲介できなかったことは、私自身も画期的なワクチンだと信じていたので、とても残念でしたが、同時に「日本企業ではここまで早く上市できなかっただろう」とも感じ、Merckが迅速に世に出したことを喜んでいました。

ちなみにGSKも独自にHPVワクチンを開発し、Merckより先に上市していますが、基本的なコンセプトは同じです。日本企業も後に開発に参入しましたが、最終的に上市には至りませんでした。

HPVと子宮頸がんの関係

子宮頸がん患者の99%以上からHPVの遺伝子が検出されるため、HPVが主要因であることは確立しています。ただし、HPV感染=がんではありません。

• HPVは100種類以上
• 特に16型・18型が「ハイリスク型」
• HPVの多くは数ヶ月〜1年で自然排除
• 問題は1〜2年以上続く「持続感染」

持続感染の理由はまだ分かっていませんが、免疫機能が関係すると考えられています。持続感染は異形成(CIN)を経て、数年〜十数年かけてがんに進行します。

臨床試験で「がんになるまで」を追うと20〜30年かかるため、CIN2/3といった前がん病変を指標に効果を評価しています。

HPVワクチンのメカニズム

HPVワクチンは、L1タンパク質からなるVirus-like Particle(VLP)を使います。中身のDNAは入っていないため、感染はしません。

自然感染ではHPVが血中に入らないため抗体がほとんどできませんが、ワクチンでは10〜100倍の抗体ができます。この抗体が粘膜表面に「滲み出る」ことで、ウイルスが細胞に侵入する前にブロックします。

ただし、治療効果はありません。すでに感染しているHPVを排除することはできません。

そのため初期は「感染前の10代女子」が対象でしたが、現在は男性にも接種を広げ、感染そのものを減らす方向に変わっています。

また、1回接種でも効果があるというデータが出てきており、英国やオーストラリアは1回接種に移行しました。

HPVワクチンの安全性──世界で何が起きていたのか

「日本だけ副反応が多かった」という報道がありますが、これは正確ではありません。2010年代前半、デンマークをはじめ欧州でも同じ問題が起きていました。

• 慢性疼痛
• 失神
• 起立性調節障害(POTS)
• 寝たきりになるほどの重症例

被害者団体が結成され、訴訟や政治問題に発展しました。

欧州医薬品庁(EMA)は2015年に大規模レビューを行い、「因果関係を支持する証拠は見つからない」と結論づけました。ただしこれは「症状が存在しない」という意味ではなく、「因果関係が証明できなかった」という意味です。
参考:Review concludes evidence does not support that HPV vaccines cause CRPS or POTS  

一方で、企業データへの依存や過少報告の懸念など、批判もありました。
参考:EMA’s mishandling of an investigation into suspected serious neurological harms of HPV vaccines 

その後、欧州ではこの規制当局の結論以降、重篤な副反応に関する報告が公に出なくなってきました。これはそのような事実がなくなったのではなく、Googleなどの検索アルゴリズムが変わり、公的機関の情報が優先されるようになったためです。

医療情報に関しては、公的機関(WHO、EMA、CDC など)、大手医療機関、医学誌・大学サイトを上位表示し、センセーショナル動画や一部の陰謀論サイトを相対的に下位に押しやる方向にアルゴリズムを変更してきました。その結果、以前は「HPV vaccine side effects Europe」などでテレビドキュメンタリーや被害動画がたくさん出てきたのですが、今は公的機関や大規模疫学研究のページが優先して表示されるようになっています。

WHOは、27億回以上の接種データと大規模研究を統合し、重篤副反応は「100万人に5〜6人」としています。

日本の救済制度から見えること

2013〜2021年の接種者約41万6千人に対し、救済検討数75件(およそ1万人に2人)、認定件数34件(およそ1万人に0.8人)
疫学調査の「100万人に5〜6人」と比べると、検討数や認定数は高い傾向にあります。ただし、接種回数が増えた2022年以降は分母が増え、WHOの大規模研究データに近づいています。

*スペースでは救済申請数を506件と異なる資料の数字について言及しておりました。大変申し訳ありませんでした。訂正してお詫びします。また認定率についても同時に訂正します。

• 2015年は救済認定率が67%
• 2016年ー2019年までは50%以下、以降認定率は増加傾向

因果関係の証明が難しいことは、コロナワクチンでも経験済みです。申請者の中には、HPVワクチンと関連のないケースも含まれるかもしれませんが、副反応があっても手続きの煩雑さから申請しない人も多いことを考えると、日本の副反応の発生率は低くはないと言えるでしょう。

HPVワクチン年度別接種状況

年度1回目接種者数2回目接種者数3回目接種者数
H25(2013)98,656人66,568人87,233人
H26(2014)3,895人4,172人6,238人
H27(2015)2,711人2,669人2,805人
H28(2016)1,834人1,805人1,782人
H29(2017)3,347人2,666人1,847人
H30(2018)6,810人5,746人4,184人
R1(2019)17,297人13,571人9,701人
R2(2020)83,735人61,266人37,556人
R3(2021)198,474人182,463人139,014人
R4(2022)540,681人476,322人336,762人
R5(2023)659,175人507,820人430,102人

出展:

第60回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 資料1  

第 102 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和6年度第4回薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 資料3-1

年度検討数認定数認定率(%)
H25(2013)00
H26(2014)00
H27(2015)12867
H28(2016)13431
H29(2017)18950
H30(2018)19737
R1(2019)9444
R2(2020)22100
R3(2021)200
R4(2022)6583
R5(2023)66100

出展:厚労省「疾病・障害認定審査会」資料を基に集計されたもの。「予防接種健康被害救済制度におけるHPVワクチン副作用被害救済状況について」 より作成

各国の接種率

• 英国:女子80〜85%、男子70%前後(2023年より1回接種へ移行)
• オーストラリア:女子80〜90%、男子75〜85%(2023年より1回接種へ移行)
• 米国・カナダ:70〜90%(州による差が大きい)
• 韓国:12歳女子87%
• フランス:40%(学校接種開始で上昇傾向)

日本は2023年に1回目接種率が約70%まで回復しました。

ワクチン政策の「倫理」と個人の選択

欧州では、10代で接種した世代が30代に入り、がん年齢に近づいています。

これまでの調査では、接種群でHPV感染率・異形成(CIN2/3)の発生率が大きく減少しています。
子宮頸がんの減少データが出るには、あと10〜20年かかりますが、ワクチンのコンセプトとしては「期待通りに働いている」と評価されています。

子宮頸がんは進行が遅いがんであることから、定期検診をしていれば見つけられるという意見もあります。ですが定期検診ではHPVの感染や異形成を早期に発見することが可能でもHPVの感染そのものは防げません。

ただし、ワクチンも万能ではありません。

• すべての型を防げるわけではない
• ブレークスルー感染もある
• 検診は必須

日本は特に婦人科検診の受診率が低く、ここが最大の課題です。

米国では子宮頸部の細胞を自分で採取して郵送し、細胞ががん化しているかどうか調べる、自己採取のPAPテストが普及していますが、日本では技術的理由から医師以外は実施できません。

一方、HPV感染の自己採取検査は日本でも可能で、自治体の助成も始まっています。HPVの感染が確認されたら、必ず婦人科を受診という流れを作ることが重要です。

「打つ自由」と「打たない自由」

公衆衛生は「集団の利益」を重視しますが、個人は「自分の身体のリスク」を重視します。HPVワクチンはまさにその典型です。100万分の5という数字は、公衆衛生的には「許容されるリスク」かもしれません。しかし、重篤な副反応を経験した個人にとっては「1分の1」です。

だからこそ、「打つ自由」と同じくらい「打たない自由」も尊重されるべきだと私は考えています。
そのためには、正確な情報と選択肢が必要です。

まとめ──日本の女性の健康を守るために

• HPVワクチンは科学的には効果があると評価されている
• 一方で、世界共通の重篤な副反応報告があり、メカニズムは未解明
• 個人の選択は尊重されるべき
• 日本の最大の課題は「検診率の低さ」
• ワクチンか検診か、ではなく「両方をどう整えるか」

「推進か反対か」という二項対立ではなく、どうすれば日本の女性の健康を守れるのかという視点で議論が進むことを願っています。私も引き続き、HPVワクチンの動向を見守り、発信していきたいと思います。

追記:スペースでの質問やコメントを受けて

スペースへのご質問やコメントの中に、名古屋スタディに関するものがありました。私自身この研究について把握しておらず、勉強不足で大変失礼いたしました。名古屋スタディのリンクは以下に記載しています。

子宮頸がん予防接種調査の結果を報告します  名古屋市HP

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種後症状についての大規模疫学調査(名古屋スタディ)と健康者接種バイアス

名古屋スタディは、名古屋市が実施した大規模な疫学調査で、郵送アンケート方式により3万人以上から回答を得て解析されたものです。24種類の症状について検討した結果、ワクチン接種がこれらの症状のリスクを高めるという仮説は支持されませんでした。つまり、「症状は存在するが、ワクチンとの因果関係は認められない」という結論です。この結果について、私は特に異論を述べるつもりはありません。意図的なデータ操作がなく、妥当な解析モデルに基づいて導かれた結果であれば、その結論自体を問題視する理由はありません。

ただし、疫学研究では、モデルの設計や前提条件、使用するデータの選択によって結果が変わることも珍しくありません。実際、この名古屋スタディと同じデータを用いた別の解析(八重・椿論文)では異なる結果が示され、特定の症状で大きく異なるオッズ比が報告されています。

Safety concerns with human papilloma virus immunization in Japan: Analysis and evaluation of Nagoya City’s surveillance data for adverse events

それから隈本邦彦氏による、名古屋スタディについての批評的論文もあります。

” 名古屋スタディ”という疫学研究は存在しない 自由記載欄にこそある真実に目を向けるべきである

実際名古屋市の「名古屋スタディ」の資料を見ると、自由記載のコメントをすべて読むことができます。興味深いのは、本人ではなく、母親が記入していると思われる記述が多い点です。ワクチンを肯定的にとらえているコメントもありますが、ワクチンの副反応に対する不安が多く語られています。また隈本氏の指摘のように、実際にワクチンを接種して体調がすぐれないという悲痛なコメントもあります。

国際的には、デンマークを中心にHPVワクチンの副反応に関する調査・解析が進められており、これらの疫学研究でも名古屋スタディと同様に、重篤な有害事象のリスク増加は認められていないという結果が導かれています。こちらは調査対象がかなり大きな数になっています。

Autoimmune, neurological, and venous thromboembolic adverse events after immunisation of adolescent girls with quadrivalent human papillomavirus vaccine in Denmark and Sweden: cohort study

Quadrivalent HPV vaccination and risk of multiple sclerosis and other demyelinating diseases of the central nervous system

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3163
OTC類似薬の「保険外し」は本当に必要なのか?https://kidokaori.jp/blog/3160/Sun, 04 Jan 2026 13:05:33 +0000https://kidokaori.jp/?p=3160

日本の医療制度は今、大きな転換点にあります。少子高齢化で医療費が膨らみ続ける中、政府は「OTC類似薬(市販薬とほぼ同じ成分の処方薬)」を保険適用から外す方向で議論を進めていました。 この記事では、OTC類似薬とは何か、な ... ]]>

日本の医療制度は今、大きな転換点にあります。少子高齢化で医療費が膨らみ続ける中、政府は「OTC類似薬(市販薬とほぼ同じ成分の処方薬)」を保険適用から外す方向で議論を進めていました。

この記事では、OTC類似薬とは何か、なぜ保険外しが議論されているのか、そしてその裏にある問題点について、私自身の経験も交えながら考えていきます。

OTC類似薬とは?なぜ今、議論の中心に?

OTC類似薬とは、市販薬と成分や効果がほぼ同じ処方薬のことです。医療費が増え続ける中で、「市販薬で代替できる薬は保険から外すべきだ」という議論が強まっています。

維新の猪瀬直樹議員は、自身のnoteで保険給付から除外すべき28成分(薬剤費1543億円)を具体的に提示しました。

4月17日の社会保障下げる(医療費削減)のための自公維3党協議に提出した資料を解説付きで公開します。
*猪瀬議員のNoteにはOTC類似薬の記事が他にも多数あります。

これらは「市販薬と1日最大用量が同じ処方薬」をデータから抽出したものだとされています。

OTC医薬品は安全性を考慮して、処方薬より1日量を低く設定していることが多いです。この場合、安全域が広い反面、効き目は処方箋薬より劣ることになります。猪瀬氏が抽出した、一日用量が処方箋薬と同じOTC類似薬は、もともと安全域が広い薬ともいえるでしょう。したがって、こうしたOTC類似薬を保険処方から外し、積極的にOTC医薬品にしてはどうか、ということであると考えます。

医療現場で広く使われている薬も対象に

OTC類似薬の中には、日常診療で非常に多く使われている薬も含まれています。

• ヘパリン類似物質(ヒルドイド・保湿剤)…544億円
• 酸化マグネシウム(下剤)…231億円
• フェキソフェナジン(アレグラ・抗アレルギー薬)…203億円

これらは「市販薬で代替できる」と言われつつも、実際には多くの患者が治療の一環として必要としていることもまた事実です。

私自身の経験:ヒルドイド10本処方の違和感

10年ほど前、じんましんで皮膚科を受診した際、頼んでもいないのにアレルギー薬と一緒にヒルドイドを10本も処方されたことがありました。病院で処方箋をよく確認しないで持ち帰り、家の近くの薬局で発見し、薬局から病院に処方のキャンセルを依頼しましたが、医師に電話がつながらず、急いでいたのであきらめました。ヒルドイドは結局10本とも全く使用せずに捨てました。

当時ヒルドイドは「美容に良い」とテレビで話題になっていた時期でした。そのためこの大量処方には強い違和感を覚えました。


• 本当に必要なのか
• 医師は何を基準に処方しているのか
• 保険財源は大丈夫なのか

こうした疑問が一気に湧きました。

以前より医師に、「そのうがい薬は必要ないです」などといって、嫌な顔をされたことがありました。ですが明らかに不要なものは断っても良いと考えます。ですが大抵の日本人は、医師の処方箋にケチをつけることはしないで、黙ってお金を払い、残薬となるのではないでしょうか。

子どもの医療費無料化と「ついで処方」の問題

子どもの医療費が無料の自治体が増えています。財政的に余裕のある自治体によくある素晴らしい制度ですが、その裏で問題も起きています。

例えば子どもの受診についでに、親が自分用のヒルドイドを美容目的で処方してもらうということが、問題になった時期がありました。

本来は子どもの治療のための制度なのに、親が自分の美容目的で利用する。これは制度の趣旨から完全に外れています。

不正利用が積み重なると、社会全体が損をする

• 医療費が無駄に増える
• 保険財源が圧迫される
• 本当に必要な人への資源が減る
• 制度への信頼が低下する

OTC類似薬は、本来であれば市販薬で代替できるにもかかわらず、保険診療で処方されることで医療費を押し上げてしまうという構造的な問題を抱えています。

そのため、OTC類似薬を保険適用から外す議論には、単に保険財政の負担を軽くするだけでなく、不正利用を抑制するという狙いも含まれていると考えられます。

高額で効果の強い薬剤は、患者も医師も目的外使用に慎重になります。しかし、安価で安全域の広い薬剤の場合、「念のため多めに」「せっかくだから余分に」といった「つい」が積み重なり、結果として社会全体で見ると非常に大きな医療費につながってしまいます。

OTC類似薬を必要とする患者も確実にいる

ただ、アトピー性皮膚炎、乾燥肌、慢性疾患などで、日常的に大量の保湿剤や外用薬が必要な患者は確実に存在します。

市販薬で同等品を買うと、経済的負担は非常に大きくなります。月に何十本も必要になることもあり、OTCは保険が適用されないため高額です。

必要な患者が治療を続けられなくなるような制度変更は、避けるべきです。

製薬企業側の事情:薬価は極限まで下がっている

OTC類似薬の問題は、患者や医師だけの問題ではありません。製薬企業にも深刻な事情があります。日本の薬価制度では、長期収載品の薬価は毎年引き下げられ、最終的には採算が取れないレベルまで下がります。

その結果、
• 製造コストを下回る薬価
• 赤字のまま供給を続けざるを得ない
• 代替品がない場合、市場撤退もできない
こうした状況が生まれています。

企業にとってはOTCとして販売したほうが、自由に薬価を設定できるので合理的、あるいは採算の取れない市場から撤退した方がよい場合もあります。

なぜ不正が起きるのか?背景にある構造的問題

• 医師が患者満足度を上げるために欲しがりそうな薬を出す
• 処方数が増えるほど診療報酬が増える
• 患者側の「無料ならもらっておこう」、「市販薬より安く済む」という心理
• 行政の監視や罰則が弱い

こうした複数の要因が絡み合い、不正利用が起きやすい構造になっています。

制度を守るために必要な4つの改善策

内部通報制度の強化

医療機関内部の不正は外から見えにくいため、匿名通報や通報者保護が不可欠です。同時に行政が通報を放置した場合のペナルティも必要です。

不正に対する罰則の厳格化

目的外処方については、より厳格な対応が求められる場面もあると考えます。医師は患者の訴えを無視できないため、どこからが不正に当たるのか判断が難しいケースもありますが、明らかに不適切な処方が確認された場合には、医師・患者双方に対して厳しい措置を講じる必要があるでしょう。

OTC類似薬とは別の例ですが、近年ではGLP-1受容体作動薬が、本来の高度肥満治療ではなく、オンライン診療と組み合わせて「美容目的のやせ薬」として使われるケースが増えています。

GLP-1受容体作動薬はもともと糖尿病治療に使われる効果の高い薬剤であり、「自費診療だから問題ない」という話ではありません。医療上の目的から逸脱した使用には、一定の制限やルールを設け、違反した場合には罰則が必要と考えます。

子ども医療費無料化制度の適正化

こどもの医療費無償化は素晴らしい制度ですが、悪用されない仕組みが必要です。子供に関しても、一度3割負担分を支払い、後から自治体が払い戻す方式にすることで、「医療にはコストがある」という意識を持たせるようにすべきと考えます。

本当に必要な患者へのアクセス確保

昨年12月19日、自民党と日本維新の会は、OTC類似薬を全面的に保険適用から外すのではなく、一部の薬について患者が薬剤費の4分の1を追加負担するという方向で合意したと発表しました。

この方針には、OTC類似薬を必要とする患者がアクセスを確保し、保険適用除外によって過度な経済的負担を負わないようにするという意図もあると考えられます。また、医師会は、薬剤費の負担増を懸念した患者が受診を控える可能性についても問題視しています。

ただ、この追加負担方式は、制度として中途半端に映る面もあります。むしろ、当初検討されていたように該当するOTC類似薬をすべて保険適用から外し、患者が購入したOTC医薬品の年間負担額が一定額を超えた場合に国が補助する仕組みのほうが、より明確で公平性のある制度設計になるのではないでしょうか。

さらに、特定疾患や指定難病には該当しないものの、医療費がかさみやすい疾患についても、同様に個別の事情を踏まえた支援策を検討する必要があると考えます。

最後に:制度を守るのは私たち一人ひとり

OTC類似薬の問題は、
• 不正利用
• 必要な患者の保護
• 薬価制度
• 製薬企業の持続性
といった複数の要素が絡み合う複雑なテーマです。

どれだけ制度が整っていても、最終的に制度を守るのは、私たち一人ひとりの行動です。

この記事が、医療制度の健全性について考えるきっかけになれば幸いです。

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3160
データサイエンスとしての占星術 Part 2https://kidokaori.jp/blog/3148/Mon, 29 Dec 2025 04:27:16 +0000https://kidokaori.jp/?p=3148

選挙活動期間の直前に公開した「データサイエンスとしての占星術」というブログが、予想以上に多くのアクセスを集めました。ありがたい反響ではあったものの、政策寄りの内容を読んでほしいという思いもあったため、少し驚いたのが正直な ... ]]>

選挙活動期間の直前に公開した「データサイエンスとしての占星術」というブログが、予想以上に多くのアクセスを集めました。ありがたい反響ではあったものの、政策寄りの内容を読んでほしいという思いもあったため、少し驚いたのが正直なところです。「政治家なのに占いを信じるのか」という批判も寄せられました。

今日は年末ということもあり、選挙期間でもありませんので、私の「趣味の話」として、占星術をどう活用してきたか、そしてその結果をどう人生に生かしてきたかを綴ってみたいと思います。

占星術からわかること

私は幼い頃から占星術に興味があり、インド占星術だけでなく東洋・西洋の占星術も学んできました。どの占星術でも大筋の結果は似ていますが、それぞれ得意分野が異なります。

インド占星術で読み取れるのは、例えば次のようなことです。

  • 基本的な性格や行動パターン
  • 才能・得意分野・学業の傾向
  • 親の職業や家庭環境
  • 職業適性(起業向きか、組織向きかなど)
  • 恋愛・結婚・出産のタイミングや相性
  • 財務状況や金運
  • 人生のテーマや課題

特にインド占星術には「ダシャー(dasha)」という「人生の運命年表」があります。どの時期にどんな出来事が起こりやすいか、挑戦すべき時期・休むべき時期など、人生の流れを俯瞰することができます。

自身のホロスコープを読む

私のホロスコープは、驚くほど私のこれまでの人生と一致しています。

才能・適性

子どもの頃から手先が器用で、絵や手芸が得意でした。学業面では化学・薬学に適性があり、研究職が向いていると読めます。また、専門性のある文章を書くことや何かを教える仕事にも適性があります。

実際、大学で化学・薬学研究者として教え、その後は企業の研究職になりました。MBA取得後は投資や海外営業を経て、現在は海外の創薬研究受託企業のビジネスディベロップメントに携わっています。カタログにある試験を売るのではなく、完全カスタムメードで、様々な疾患、創薬ターゲット、モダリティに対応した創薬研究プロジェクトを扱う今の仕事は、飽きっぽい私にとって常に新しい発見があり、まさに天職です。

研究職以外にも、私は火星が非常に強いので、他人と競争する仕事、議論を戦わせる仕事にも適性があると読めます。ですから売上で競争する仕事である営業職にも向いているということになります。

海外との縁

ホロスコープには「海外から収入を得る」「外国人と働く」という強い示唆があります。大学生になるまで、家族旅行にもほとんど出かけたことがなかった私が、ある時期から海外に頻繁に出かけるようになりました。実際、仕事においても、外資系勤務や海外営業、海外企業で唯一の日本人として働くなど、人生の大半を外国人と共に過ごしてきました。

家庭環境と金銭

幼少期は両親の離婚や経済的困難が続きましたが、ホロスコープにも「生まれの家庭に恵まれない」「自力で道を切り開く」と出ています。病弱だったことも示されていました。

ただし同時に「蓄財や投資が得意」「晩年は経済的に安定する」という暗示もあります。社会人になってからは順調に貯蓄し、自分でためたお金で米国やカナダに留学し、今は経済的にも安定しています。

結婚・家族

私は未婚で子どももいませんが、これもホロスコープに表れていました。「自分の家族よりも他者に奉仕する使命がある」という示唆も、今後の活動と重なるかもしれません。

ダシャーと人生の転換点

ダシャー(人生の運命年表)には良いダシャーと悪いダシャーがあります。良いダシャーが人生の前半にあれば、若くして成功、後半にあれば大器晩成型かもしれません。ダシャーは1サイクル120年であり、その中に良いダシャー、悪いダシャーがあります。短命な人の中には、悪いダシャーだけで終わる人、逆に良いダシャーだけで終わる人もいるでしょう。どのようなダシャーで人生が始まり、どのようなダシャーの順番を何歳の時に経験するかで、人生が大きく変わります。

私の場合、生まれてから50歳近くまで悪いダシャーばかりが続きました。本人は「悪い」と感じる余裕もないほど日々を乗り越えてきたため、悲観的には捉えていませんでした。

ところが良いダシャーに入ってからは、明らかに人生が軽くなりました。今後は100歳を超えるまで良いダシャーが続く予定です(^^♪ 

また今後10年ほどは海外との関わりがさらに深まる時期と読めます。どんな出会いがあるかとても楽しみです。

逆境と向き合うということ

若い頃、裕福な家庭に育った同級生をうらやましく思ったこともありました。一方で私は、親の借金や家庭の混乱の中で育ち、進学も経済状況に左右されました。

しかし60歳を目前にした今、価値観は大きく変わりました。

  • 親に期待されていなかったからこそ、自由に生きられた
  • 何も持っていなかったからこそ、失うものがなく挑戦できた
  • 子どもの頃の逆境が、今の自分の強さをつくった

ニューヨーク州立大学の研究でも「逆境の経験がない人ほど幸福度が下がる」という結果があります。私は小さい頃に逆境を一通り経験したおかげで、大人になってから何が起きても動じなくなりました。

最近、教育格差ということばをよく耳にします。貧乏な家の子はそもそも大学進学に不利だというのです。確かに経済的にはそういう側面も否定しませんが、裕福な家の子には、親の期待というプレッシャーもあります。私は塾に行ったことがなく、学習計画はすべて自分で立て、実行していました。親に言われるまま、塾や習い事に奔走し、親の虚栄心に見合う大学を受験させられ、あるいは合格するまで浪人をさせられていた同級生がうらやましいかと尋ねられたら、私は絶対に「NO」と答えます。

小さいころの経験から自立心が早く芽生え、社会人になってから随分と助けられました。2006年からは、完全リモート勤務を続けていますが、会社の指示が一切なくても、自分でなすべきことを見つけ、実行に移し、問題を解決してきたことは仕事においても大きな自信となりました。

今から思えば子供のころ、恵まれない過程で育ったことこそ、その後の自分の人生に必要だったと感じています。ですから一概にお金持ちの家に生まれるのが良いとは思っていません。どんな家庭に生まれても、個人として何を学ぶか、それを自分の人生にどう生かすかは、すべて個人の意志によりますし、これが運命をどう切り開くかということなのだと思います。

政治の世界で私は、二度の落選を経験しましたが、特に気にしてはいません。風が吹くまで、次の選挙結果がよくなるように準備を続けるだけです。何事もゼロから一人で初め、試行錯誤しながら目的を達成するという成功体験を積み上げてきた経験が、私の最大にして唯一の財産です。

これからの人生プラン

私のホロスコープには「女性に助けられる」という示唆があります。振り返ってみると、確かにこれまで多くの女性に支えられてきました。だからこそ、これからはその恩に報いる形で、女性のための活動をさらに広げていきたいと考えています。

私は長い間、男性が中心の職場で働き、「実力で勝負する」という姿勢を大切にしてきました。そのため、高市首相の発言にも共感できる部分がたくさんあります。彼女はおそらく男性の何倍も努力してきた人です。しかし同時に、今の私は、性別・国籍・属性によって評価が変わる社会であってはならないと強く感じています。社会的構造に根づく不公平は、取り除かれるべきものです。

社会は誰か一人の力で成り立つものではなく、すべての人が欠かせない存在です。そのうちの一部だけに負担や歪みが集中する状態は、最終的には社会全体の健全さを損なうことにつながります。だからこそ、誰もが公平に力を発揮できる環境づくりが必要だと考えています。

占星術が教えてくれるもの

インド占星術は数千年前に生まれた体系ですが、現代の私たちにも多くの示唆を与えてくれます。

惑星の動きを計算し、個人の適性や人生の流れを読み解くその精密さは、まさに古代のデータサイエンスと言えるでしょう。時代の流れとともに社会構造や職業が変わった現代においてでさえ、個人の人生において様々な助言を与えられるインド占星術に脱帽です。

私自身、占星術を「未来を当てる道具」あるいは「エンターテイメント」としてではなく、自分の人生を理解し、よりよく生きるための指針として活用してきました。

これからも、占星術とともに人生の流れを読みながら、挑戦を続けていきたいと思います。またこの記事でインド占星術に興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひ勉強を始めてみてください。

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3148
オーソライズドジェネリック(AG)とは何か──その誕生から制度議論までhttps://kidokaori.jp/blog/3143/Sun, 21 Dec 2025 05:11:09 +0000https://kidokaori.jp/?p=3143

今日はここ数年で医薬品市場の中で大きな存在感を放つようになった「オーソライズドジェネリック(AG)」について、少し深く掘り下げてみたいと思います。名前は聞いたことがあっても、 ・なぜ生まれたのか・どんな役割を果たしてきた ... ]]>

今日はここ数年で医薬品市場の中で大きな存在感を放つようになった「オーソライズドジェネリック(AG)」について、少し深く掘り下げてみたいと思います。名前は聞いたことがあっても、

・なぜ生まれたのか
・どんな役割を果たしてきたのか
・そして今、どんな議論の中心にいるのか

これらをきちんと理解している人は意外と多くありません。今回は、AGの背景から制度的な課題、そして今後の展望まで、できるだけわかりやすく整理してお話しします。

AGが生まれた理由

まずは、AGが登場した背景から。

日本では2000年代初頭、少子高齢化による医療費の増大に対応するため、ジェネリック医薬品の普及が強力に推進されました。当時の使用率はわずか5%ほど。欧米と比べても非常に低い状況でした。その後、政策的な後押しもあり、現在では政府目標の80%を達成するまでに普及しています。

ただし、日本のジェネリック医薬品の多くは、主成分である「原薬」を海外に依存しています。製造コストの問題ももちろんありますが、原薬製造には高度な化学技術が必要で、国内ジェネリックメーカーには設備や人材が不足していることと、抱えている品目が多すぎてすべての原薬を自社で製造するのは難しいためです。

輸入元は中国、インド、韓国、イタリア、スペイン、東欧など。大規模生産が可能で、コストも品質も安定している国々です。一方で、国内では中間体を輸入し、簡易工程だけを行って「国産原薬」としているケースもあります。

こうした背景から、2010年代には「海外原薬の品質は大丈夫なのか」という不安が医療現場にも患者にも根強く残っていました。その不安を解消するために登場したのが、先発品と同じ原薬・同じ製造方法で作られるAGです。
「品質への安心感」がAG誕生の大きな理由のひとつです。

新薬メーカーの戦略としてのAG

AGが生まれたもう一つの理由は、新薬メーカー側の戦略です。

日本では特許が切れた後も先発品は「長期収載品」として販売が続きますが、ジェネリックが参入すれば当然売上は減ります。そこで新薬メーカーは、契約したジェネリック企業を通じてAGを投入し、後発品市場も自社ブランドで押さえる戦略をとるようになりました。

AGは法的な定義こそありませんが、

  • 先発と同じ原薬
  • 同じ添加剤
  • 同じ製造方法

を使うため、実質的には「安価な先発品」と言えます。

新薬メーカーにとっては、先発市場+後発市場の両方を自社でカバーできるというメリットがあります。一方、ジェネリック専業メーカーにとっては非常に厳しい状況です。AGを作るには、先発メーカーにライセンス料を支払う必要があり、コスト面で不利になります。小規模メーカーは参入が難しくなり、競争環境は大きく変わりました。

2013年のアレグラAG登場以降、AGは急速に増加し、現在ではジェネリック市場の約80%を占めるまでになっています。

一般的なジェネリックとの違い

一般的なジェネリック医薬品は、先発品の成分を分析して作られますが、添加剤や配合割合までは完全には再現できません。

ジェネリック医薬品の承認には「生物学的同等性試験」が必要で、血中濃度の推移が一致すればOKという仕組みです。

そのため、「溶け方」、「飲みやすさ」、「使い心地」などが先発品と微妙に異なることがあります。

一方AGは、成分も配合も製造方法もすべて先発品と同じです。「効き目も使い心地も完全に同じ」という安心感が最大の特徴です。

最近の制度議論:AGの価格はどうあるべきか

ここからは、最近の制度的な動きについてお話しします。

中医協(中央社会保険医療協議会、厚労省傘下で薬価を決める機関)では、「AGは実質的に長期収載品と同じなので、価格も同じにすべき」という提案が出ています。

さらに政府は、ジェネリックがある薬で先発品を希望する患者に差額負担を求める案も検討中です。もしAGが長期収載品と同じ扱いになれば、AGを選んだ場合でも将来的に患者負担が増える可能性があります。

背景には、

  • 医療費を抑制したい政府の意図
  • ジェネリック市場の公正な競争を確保したいという考え

があります。

ここで医療費を抑制したいなら、AGの価格を新薬と同等にまで引き上げるのは、逆効果ではないかと思われた方もいるかもしれません。AGの価格を上げると、確かに医療費が増える方向に働くのですが、政府としてはジェネリック市場に公正な競争を持ち込んでAGだけが残るような事態を避けて安定供給を確保するとともに、国民に選択肢を残したいと考えているのです。

AGは特許切れと同時に市場に出せるため、一般ジェネリックより半年早く参入でき、事実上の独占期間を持ちます。また、後発参入でも「先発と同じ」というブランド力で市場を大きく奪うことができます。

その結果、近年では市場規模が大きい薬でも、AGを含めて1〜2社しかジェネリックに参入しないケースが増加しています。これは、AGが他社の参入意欲を削いでいることを示しています。

参考:後発品の薬価追補収載、今年も過去最低…AGの薬価見直し議論に、戦略再考必至 | AnswersNews

私は以前から、ジェネリック医薬品は、1つの製品につき3社程度の供給体制が最も望ましいと考えてきました。企業数が少なすぎると、供給停止が起きた際に代替が効かず、医療現場に深刻な影響が出るためです。

小林化工と日医工の品質不正で操業停止処分を受けた際、ジェネリック他社がこれらの企業が供給していた分の医薬品を供給しようとしたものの増産が置いつかず、薬局でかなり長い間在庫不足が深刻であったことも記憶に新しいです。

今後の展望:AGはどこへ向かうのか

このままAGが市場を席巻し続ければ、中小ジェネリック企業は淘汰され、再編が進むでしょう。再編自体は悪いことではありませんが、AGだけが残るような極端な構造は望ましくありません。

参考として、中国ジェネリック市場では最近導入された政策により、「品質など一定基準を満たした製品のうち、最安値を提示した企業が大部分の市場を獲得する」という、「市場総どり」の仕組みがあります。ただし完全独占にはせず2〜3社を残す設計になっており、やはり何か問題が起きた時に、他社が代わりに供給できる体制になっています。中国政府は、ジェネリック製薬企業に国内の大きな市場を与える代わりに、安定供給と品質向上の責任を強く求める仕組みです。

日本では品質へのこだわりから、AGに市場が集中するという独特の現象が起きています。しかし政府としては、安定供給の観点から一定数の企業を残したいという思いがありますし、新薬メーカーには創薬に注力してほしいという期待もあります。

最終的に重要なのは、患者と医療現場にとっての「安定供給」と「品質確保」です。

AGはこれまで品質面で大きな役割を果たしてきましたが、制度改革の中でその位置づけは大きく揺れ始めています。

まとめ

今日は、AGの誕生背景から一般ジェネリックとの違い、そして最新の制度議論までお話ししました。
AGは、

  • 品質への不安が残っていた時代に安心感を提供し
  • 新薬メーカーの市場戦略として重要な役割を担い
  • 患者にとっては「先発と同じ品質を安く使える」メリットをもたらしました

一方で、

  • ジェネリック市場の競争を歪め
  • 中小メーカーの参入を阻み
  • 供給の多様性を損なうリスクも生んでいます

そして今、AGは「長期収載品と同じ扱いにすべきか」という大きな制度議論の中心にあります。これは単なる価格の話ではなく、日本の医薬品産業の構造、創薬力、そして医療費の持続可能性に直結する問題です。

AGは、これまで日本の医薬品市場を支えてきた重要な存在でした。

しかし今後は、医療費抑制、供給安定、創薬力強化という複数の課題の中で、改めてその役割が問い直される時期に来ています。

私たち一人ひとりが、医薬品の仕組みや背景を理解し(複雑で難しいですが)、議論に参加していくことが、より良い医療制度をつくる第一歩になるのではないかと思います。

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新型コロナウイルスとワクチンをめぐる最新知見の整理https://kidokaori.jp/blog/3129/https://kidokaori.jp/blog/3129/#respondTue, 16 Dec 2025 11:13:56 +0000https://kidokaori.jp/?p=3129

今日は、新型コロナウイルスとワクチンについて、これまでに分かってきた事実を改めて整理し、皆さんと共有したいと思います。陰謀論ではなく、科学的な根拠に基づいたアップデートです。選挙期間中にも情報発信を行いましたが、「反ワク ... ]]>

今日は、新型コロナウイルスとワクチンについて、これまでに分かってきた事実を改めて整理し、皆さんと共有したいと思います。陰謀論ではなく、科学的な根拠に基づいたアップデートです。選挙期間中にも情報発信を行いましたが、「反ワクチン」と批判されることもありました。今回は12月初めに参加した分子生物学会で得た知見も交えながら、冷静に事実を振り返ります。

コロナウイルスの起源

  • WHOや日本政府は「自然発生」との見解を示しています。
  • 一方で、武漢研究所で行われた「機能獲得研究(Gain-of-Function)」に関連するウイルスが漏洩した可能性を指摘する研究者もいます。
  • 機能獲得研究とは、ウイルスの遺伝子を改変し感染性や病原性の変化を研究するもので、将来の変異を先取りする目的がありますが、生物兵器利用の懸念も伴います。
  • 米国NIHや国防省が武漢研究所に資金提供していた事実もあり、米中共同研究が進められていました。
  • 遺伝子解析では「自然界では起こりにくい変異」が含まれていることが指摘され、研究者の間では研究所漏洩説が有力視されています。

ワクチン開発の背景

  • 新型コロナは一本鎖RNAウイルスで変異が速く、従来型の不活化ワクチンでは対応が難しいと判断されました。
  • そこで短期間で開発可能な「RNAワクチン」が選ばれました。これはスパイクたんぱく質をコードするRNAを体内に導入し、免疫系に抗体を作らせる仕組みです。
  • RNAは不安定なため、脂質ナノ粒子(LNP)で包み込み細胞に届ける技術が採用されました。
  • パンデミックの最中、RNAワクチンを選択したことについては、当時考えられうる科学的に妥当な選択であったと個人的には思っています。ただし、コンセプトとしては実行可能に見えても、実際にワクチンとして有効か、安全かという点については、実際に開発し、試してみないとわからないことも多かったと考えます。

RNA合成と純度の課題

  • 当時の長鎖RNAの合成技術ではDNA断片や二本鎖RNAなど副産物が多く混入し、純度が低いという問題がありました。
  • 名古屋大学の阿部洋教授が引用した文献によれば、初期臨床試験用バッチの純度は78%、商用バッチでは55%程度と報告されています。医薬品としては極めて低い水準です。
  • 阿部教授の新しい方法では90%以上の純度が確保できるとされていますが、高い純度でRNAを合成する技術はまだ発展途上です。
  • 通常の医薬品(低分子医薬品)では不純物が数%でも、それがどんな構造か、単離、構造決定し、それぞれについて毒性試験が必要です。RNAワクチンには検定法についても明確な基準がなく、不純物の作用も十分に検証されていません。
  • ちなみにジェネリック医薬品について、中国やインドから輸入される原薬の純度は低く、副作用の原因となるので使うべきではないという医療従事者が時々います。ですが海外から日本に輸入されるジェネリック医薬品の原薬の純度は、実は新薬よりもずっと高いのです。純度に異常に神経質な日本人のために、すでに基準を満たしている原薬をさらに手間をかけて精製しています。(そのため日本向けジェネリック原薬価格は高い)純度にこだわる日本人は、RNAワクチンの純度も当然気になったはずですし、情報を知っていたら接種を控えた人も多かったのではないかと感じます。

LNP(脂質ナノ粒子)の課題

  • LNPはRNAを保護し細胞に届ける役割を持ちますが、LNPの構造によってRNAワクチンの分布や安定性が大きく変わります。
  • 初期のLNPは熱に弱く、マイナス80度での保管が必要でした。現場で徹底できたかは疑問が残ります。
  • LNPの中には、脳や心臓に分布する可能性もあり、安全性評価が十分だったかは不透明です。
  • 現在は改良型LNPが開発され、安定性が増して冷蔵庫保管が可能なものも登場しています。

安全性と副反応

  • 若年層では副反応が強く、尾身茂氏も「接種は慎重であるべきだった」と発言しています。
  • 学校や職場で事実上の強制があり、接種せざるを得なかった人も多くいました。
  • 副反応の報告は過少で、実際の発生率はもっと高い可能性があります。
  • 因果関係の証明は容易ではありませんが、検証は不可欠です。

技術的検証ポイント

  • スパイクたんぱく質の発現量は個人差が大きく、また発現量のコントロールが難しく、副反応に関与しています。
  • 当初は局所に留まるとされたワクチン成分が、全身に循環することが確認されています。
  • 温度管理の難しさから、失活したワクチンが接種された可能性もありますが、失活したワクチンと副反応との関係は未解明です。

研究環境とリスク

  • 学会では「不都合に気付いていた研究者がなぜ声を上げなかったのか」という議論もありました。
  • 長崎に建設中のBSL4ラボへの影響を恐れた可能性が指摘されています。
  • BSL4は高度な封じ込め施設ですが、漏洩リスクはゼロではありません。原発事故同様「起こる前提で対策を整える」ことが必要です。
  • 個人的には、目的が学術研究であっても機能獲得研究には制限を設けるべきだと考えます。

費用対効果と社会的影響

  • 従来のワクチン(ポリオやはしか等)は安価で効果が持続しますが、コロナワクチンは高額で抗体消失が早く、複数回接種が必要です。費用の他、効果と副反応のリスクのバランスも考慮して評価する必要があるでしょう。
  • 副反応の報告は、症状があっても報告されないケースがほとんどであるため過少であり、実際の発生率はもっと高い可能性があります。
  • 今後のためにも、マイナンバーを活用したコロナワクチンの副反応の大規模調査が望まれます。

まとめ

  • コロナワクチンは「新技術を緊急投入した」事例であり、多くの課題を残しました。
  • ワクチンは人類を救ってきた重要な医薬品ですが、RNAワクチンは従来型と同列に扱うべきではありません。陰謀論を信じている一部の人たちの、「ワクチンは人口削減のためものである」等々については、反対の立場です。
  • 次のパンデミックに備え、科学的検証と制度設計を進めることが不可欠です。
  • 医薬品開発には多様な専門家が関わっています。ワクチン由来の問題については、この開発にかかわっている様々な専門家が知見を共有しながら検証する仕組みが必要です。医師だけ、疫学者だけでは影響を議論するには役者が不十分でしょう。
  • 現在、mRNA医薬の製法・検定についてガイドラインが整備されつつあります。
  • パンデミックから5年。記憶が新しいうちワクチンも含めた、コロナウイルスへの当時の政府の対応や情報統制の是非など、総括を行うことが、未来への備えにつながると考えています。

このブログは、12月13日にXのスペースで行った議論をもとにまとめたものです。スペースでは「不都合な真実を知っていた科学者が、なぜ声を上げなかったのか」という問いが投げかけられました。その理由として、長崎のBSL4施設建設への影響や、自らの研究を優先したのだという意見もありました。しかし私自身は、科学者たちが同調圧力を恐れていたせいだと考えています。

私の周囲には、ウイルスが人工的に作られた遺伝子ではないか、あるいは漏洩事故によるものではないかと初期段階から疑う人は少なくありませんでした。また、ワクチンの完成度に疑問を呈する声も多くありました。それでも声を上げなかったのは、批判や攻撃を受けることへの恐怖があったからだと思います。コロナ禍における同調圧力は異常なほど強く、まるで戦争前夜のようだと語る人もいました。

第二次世界大戦中でさえ、冷静に情報を分析できる人々は、日本が勝てる戦争ではないと理解していたはずです。しかし、それを公言できない圧力が存在していたのだと思います。

同様にコロナ禍でも、黙って自分や家族にはワクチンを接種せずにやり過ごそうと考えた研究者は多かったでしょう。一方で、医療従事者や介護職の人々は職務上、繰り返し接種を余儀なくされ、体調を崩した人もいたはずです。

公衆衛生の観点から、多くの人にワクチンを接種してほしいという政府の意図は理解できなくはありません。しかし、そのために情報を過度に制限すれば、政府への不信感を招き、次のパンデミックでは制御不能に陥る危険があります。したがって、ワクチンの評価だけでなく、コロナ禍における政府やマスメディアの対応についても、冷静かつ徹底した総括が必要だと考えています。

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https://kidokaori.jp/blog/3129/feed/03129
国際結婚と日本女性による「子供の連れ去り」問題を考えるhttps://kidokaori.jp/blog/3124/Sat, 06 Dec 2025 12:51:09 +0000https://kidokaori.jp/?p=3124

今日は、国際結婚における日本人女性の「子供の連れ去り」についてお話ししたいと思います。これは単なる家庭の問題ではなく、法制度、文化、ジェンダー、そして国際関係が複雑に絡み合う社会課題です。 目次 非表示 関心を持ったきっ ... ]]>

今日は、国際結婚における日本人女性の「子供の連れ去り」についてお話ししたいと思います。これは単なる家庭の問題ではなく、法制度、文化、ジェンダー、そして国際関係が複雑に絡み合う社会課題です。

関心を持ったきっかけ

私がこのテーマに強く関心を持つようになったのは2010年頃のことです。

当時、リモートワークをしながら海外で生活する「ワーケーション」を試みていました。イタリアのトリエステへ向かう飛行機で、偶然隣に座った日本人男性が「裁判の準備をしている」と話してくれたのです。彼は国際結婚の末、親権をめぐる裁判に巻き込まれていました。

私は口が堅いと思われるのか、単に話しやすいと思われるのか、赤の他人に相談されたり、身の上話をされたりすることが多いのですが、その時もなぜ親権をめぐる裁判をする羽目になったのか、トリエステにつくまでずっと話を聞くことになりました。

その時に聞いた話の詳細は書けませんが、子供の「親権」というものが、国によって定義が異なり、国際結婚においての離婚ではより話が複雑になり、何年も裁判で争うことも珍しくないということを知りました。

このケースのように、親権を求めて裁判する側が子供の居住国にいない場合には、裁判のたびに海外渡航しなければならず、経済的にも精神的にも大きな負担を抱えます。この方の場合は生活のすべてが裁判のためにあるとおっしゃっていました。さらに、幼い子供は引き取った親の言語や文化で育つため、もう一方の親の文化を維持することが難しくなるのです。

この経験を通じて、国際結婚における親権問題の複雑さを初めて実感しました。

日本女性が批判される背景

調べてみると、日本では逆に「母親による子供の連れ去り」が国際的に問題視されていることが分かりました。
フランスでは日本人女性が禁錮刑を受けた例があり、米国FBIの「親による誘拐」リストにも日本人女性が掲載されています。

背景には次のような事情があります。

  • 日本では離婚後の親権が一方の親にしか認められず、共同親権制度が存在しない(2026年から導入予定)。
  • 親権は約9割のケースで母親に渡る。

このため、日本女性は「親権は母親が持つのが当然」と考えがちで、国際的には違法となる行為を無意識にしてしまうことがあるのです。

福原愛さんのケース

最近では卓球の福原愛さんが、台湾人の夫との間の子供を取り決めに反して国外へ連れ出したことが問題となりました。台湾は共同親権制度を採用しているため、一方的な連れ去りは違法です。日本の家庭裁判所も「子の引き渡し命令」を出しました。

福原さんにとっては「母親が子供と一緒にいるのは当然」という感覚だったのかもしれません。ここに文化的な認識の違いが浮き彫りになります。

日本の法制度と課題

日本の民法は長らく「離婚後は単独親権」を原則としてきました。

戸籍制度では、離婚後の子どもは原則として父親の戸籍に残るため、親権と戸籍は必ずしも一致しません。この仕組みは、DV被害のケースで深刻な問題を引き起こします。例えば、父親の暴力が原因で離婚し、母親が親権を持って子どもと新しい住所に移った場合でも、子どもが父親の戸籍に残っているため、元夫は「父親」として住民票の照会を行うことが可能になります。これを防ぐために「住民基本台帳事務におけるDV等支援措置」が設けられ、住民票や戸籍附票の閲覧・取得を制限できる制度があります。しかし、役所が誤ってDV加害者に情報を公開してしまう事例が時折報道されており、制度の運用には不安が残ります。

2024年の民法改正により、2026年からは共同親権が導入されますが、国際的な水準と比べると十分とは言えません。養育費の強制徴収や面会交流の履行確保など、まだ課題は山積しています。

現在の日本は、マイナンバー制度も普及しており、養育費をマイナンバーを通じて給与から天引きする仕組みも技術的には可能です。にもかかわらず、制度設計の場に男性が多いため、男性に不利となる制度の導入には消極的な傾向があります。したがって、親権制度の議論や制度設計に女性の意見を適切に反映させることが、今後の重要な課題だと考えられます。

ハーグ条約とDV事案

国際的には1980年に「ハーグ条約」が採択され、子供の不法な連れ去りを防ぐ仕組みが整えられました。日本は2014年に批准しましたが、DV事案では返還拒否が認められるかどうかが大きな争点となります。

DV被害者が返還拒否を主張する場合、法的に立証する責任を負わなければならず、被害者保護と子の利益のバランスが難しいのが現状です。

つまりハーグ条約の下では、DVの可能性がある場合でも、訴えがあった場合には子供をDV親の元に戻さなくてはならないケースもありうるのです。そうならないためには、DV被害者である親自身が、DV事実をきちんと法的に立証しなくてはならないのです。

各国との比較

アメリカ、フランス、ドイツ、オーストラリア、イタリアなど多くの国は共同親権を基本としています。

一方、日本は長らく単独親権を維持し、国際的に孤立してきました。養育費の強制執行や監視付き面会交流など、諸外国では制度が整備されていますが、日本は遅れを取っています。

国名離婚後の親権制度共同親権の原則面会交流支援養育費履行制度DV対応ハーグ条約加盟
日本単独親権(2026年より選択的共同親権)×(改正後選択可)×(支援体制不十分)×(履行率低)△(単独親権選択可)2014年加盟
アメリカ共同親権(州により異なる)○(多くの州)○(監視付き交流含む)○(強制事務所あり)○(監視付き交流)1988年加盟
フランス原則共同親権1983年加盟
ドイツ原則共同親権○(少年局等)○(最低扶養料規定)○(裁判所判断)1990年加盟
オーストラリア原則共同親権1983年加盟

国際的批判と外交問題

日本の制度は欧米諸国から強い批判を受けてきました。2009年には8カ国の大使が共同声明を発表し、日本に加盟を求めました。

先に述べたように、米国FBIの「親による誘拐」リストにも日本人女性が掲載されていますし、フランスでは日本人女性が子供を連れ去ったとして禁錮刑を受けた例もあります。日本では「子連れ別居」と報じられることが多いですが、欧米では「実子誘拐」として厳しく扱われます。

さらに今年1月、ハンガリーで日本人女性が元夫に殺害される事件が発生したのは記憶に新しいです。女性はDV被害から子どもと日本へ帰国を試みたのですが、共同親権とハーグ条約の規定によりパスポート発給ができず、現地で孤立していました。現地では言葉の問題もあって、DVについてうまく立証することは難しかったのかもしれません。

冒頭にお話しした、親権を取り戻そうとトリエステ行の飛行機に乗っていた男性はかなりイタリア語が達者な印象でしたが、それでも裁判に臨むために気の遠くなる時間を準備に費やされていたのです。この件では日本側の支援体制の不備やDV事案への理解不足が悲劇を招いたとされ、国際的な議論を呼んでいます今年1月にはハンガリーで日本人女性が元夫に殺害される事件も発生し、支援体制の不備が国際的な議論を呼びました。

政策提言

この問題を解決するには、以下の取り組みが必要です。

  • 法制度の改善:子供の意見を第三者が適切に聴取、多文化間カウンセリングの導入。
  • 支援体制の強化:外務省・家庭裁判所・NPOの連携、国際的司法協力。
  • 社会的啓発:メディアによる正確な報道、ステレオタイプの是正、当事者や子供の声の可視化。

国際結婚が増える中で、制度の改善と支援員の育成は不可欠です。

まとめ

国際結婚における日本人女性の子供連れ去り問題は、法制度、文化、ジェンダー、DV、国際関係が複雑に絡み合う社会問題です。

2026年から共同親権が導入されるなど前進はありますが、まだ課題は残されています。今後は「子どもの最善の利益」を最優先に、制度改善と国際協力を進めることが不可欠です。

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「女性の休日」から考える、ジェンダー平等の歩みhttps://kidokaori.jp/blog/3113/Sun, 30 Nov 2025 12:02:54 +0000https://kidokaori.jp/?p=3113

ここ最近は映画の話題が続いていますが、今回も現在公開中のドキュメンタリー映画 『女性の休日』 を取り上げたいと思います。この作品は、アイスランドで実際に起きた女性の地位向上のための歴史的な運動を描いたものです。 女性の休 ... ]]>

ここ最近は映画の話題が続いていますが、今回も現在公開中のドキュメンタリー映画 『女性の休日』 を取り上げたいと思います。この作品は、アイスランドで実際に起きた女性の地位向上のための歴史的な運動を描いたものです。

女性の休日公式サイト

ジェンダーギャップ指数とは?

アイスランドといえば、今では「男女平等社会」の代表格。世界経済フォーラムが毎年発表する ジェンダーギャップ指数 でも常にトップを維持しています。

この指数は、男女間の格差を以下の4分野で数値化して算出されます。

  1. 経済参加と機会(労働市場への参加率や賃金格差)
  2. 教育の達成度(初等・中等・高等教育の修了率)
  3. 健康と生存(性別による健康状態や平均寿命の差)
  4. 政治的エンパワーメント(政策決定における女性の参加度)

日本は特に「政治的エンパワーメント」と「経済参加と機会」のスコアが低く、先進国の中では最下位レベル。女性の社会進出が遅れているとされる一部のアフリカ諸国と同水準にとどまっているのが現状です。

アイスランドの過去と「女性の休日」

かつてのアイスランドは漁業や酪農といった「男らしい産業」が中心で、女性は家庭に入るのが当然とされていました。そんな社会が大きく変わるきっかけとなったのが、1975年10月24日に行われた 「女性の休日」 です。

この日、国内の女性の9割以上が家事も職場の仕事も含めて一切の労働をボイコット。目的は「女性の労働が社会を支えていること」を男性に実感させることでした。映画では当時のリーダー的女性たちの証言を交え、この運動が社会をどう変えたかが描かれています。

「休日」と名付けた理由

私が特に面白いと感じたのは、この運動を「ストライキ」ではなく「休日」と呼んだ点です。実質的にはストライキですが、保守派の女性たちが「ストライキ」という言葉に抵抗を示したため、罪悪感なく参加できるように「休日」と名付けられました。

革新派の女性たちも、この運動が「ストライキ」であるという認識を持ちつつも、まずは全女性が「共闘」することを前提に妥協したというわけです。この辺の政治の駆け引きも興味深かったです。

この工夫によって、働く女性だけでなく専業主婦層も巻き込み、国民的なムーブメントに発展しました。現在でもこの日は、女性が家事を含めた一切の労働をしない日とされているようです。。

働く女性と主婦層の溝

ここで少し日本の状況に触れたいと思います。日本でも専業主婦を中心とした保守派と、仕事を持つ女性の間には深い溝があります。

例えば第三号被保険者制度――これはサラリーマン(ウーマン)の配偶者である専業主婦(夫)だけの特権で、共働き世帯や個人事業主世帯と比べると不公平です。私は健康保険や年金の掛け金は夫婦それぞれが負担すべきと考えていますが、こうした発言をすると「主婦の仕事を軽視している」と問題点をすり替え、批判されることもあります。家事労働の価値のあるなしの議論と、健康保険や年金の掛け金を夫婦が二人分きちんと払うことは直接因果関係がないのですが、理解を得ることは難しいです。

アイスランドでも当時、働く女性と主婦層の間に大きな溝がありました。運動を進めたのは働く女性が中心でしたが、主婦層をどう取り込んで女性全体の意志としてどうアピールするかが大きな課題でした。保守派の中には、「自分の生き方を否定された」と感じた女性もいたそう。映画ではその葛藤が非常に興味深く描かれていました。

子どもの頃の違和感を持ち続ける力

映画に登場する女性たちの多くは、幼い頃から「女の子はこうすべき」という価値観に疑問を持ち続けていました。そしてその後、ある女性はアイスランド初の女性最高裁判事になり、ある女性は統領になりました。

普通は大人になるにつれて子どもの頃の違和感や夢を忘れてしまいますが、社会を変える人というのは、それをずっと持ち続けられる人なのだと改めて感じました。

運動の成果とその後

この運動から5年後、アイスランド初の女性大統領ヴィグディス・フィンボガドッティル氏が誕生。国会議員の男女比率はほぼ半々となり、育休制度も男女平等に。2018年には賃金格差を禁止する法律も施行されました。

ただし課題も残ります。2008年のリーマンショックでは、アイスランドがかつてのマッチョな産業から脱却し、金融業に偏った経済構造に突き進んでいたため、壊滅的な打撃を受けました。当時この金融業界で意思決定権を持っていたのは男性が中心であり、リスクを取りすぎ、ハイリスクハイリターンな取引を繰り返していたのです。この男性優位の意思決定が経済破綻につながったとして、アイスランドは意思決定に多様性を重視する方針に転換し、上場企業の役員の性別比率を6対4にする法律を制定しました。

日本の伝統と西洋化

ここで日本の歴史に目を向けると、実は女性の地位は欧米に比べて低かったわけではないと考えます。例えば天照大神は女性であり、太陽神であり、皇室の祖先とされています。

日本の古代文学にも女性作家が多く存在します。これは世界的に見ると極めてまれなことです。どんなに身分が高くても財産があっても、日本以外の国では、女性は読み書きができなくて当然という国が多かったのです。まして女流作家や、女性の作品に価値があると思う人は、日本を除けば現代になるまでほとんどいなかったでしょう。一方で日本の女性の文学は、後世の男性国学研究者たちからも高く評価されてきました。近世までの日本人男性は、作品が男によって書かれたものか、女によって書かれたものか関係なく、作品のクオリティできちんと評価できる、世界的にまれな人たちでもあったわけです。

しかし明治維新以降、西洋の価値観が輸入され、女性に対する制限が強まりました。現在問題にされている戸籍制度も、明治以前は夫婦別姓でしたし、女性天皇も存在しました。

この点を誤解している人が多く、「日本の伝統だから仕方ない」と思い込んでいるケースもあります。実際には、近代化の過程で女性の権利が制限されていったのです。

日本版「女性の休日」構想

最近、日本でも一部の女性団体が「女性の休日」を実施しようと計画していると聞きます。国際女性デー(3月8日)の前後を候補に検討しているそうです。女性首相が誕生した今、保守派と革新派の違いを超えて全女性が団結できるかどうか、新しいムーブメントの可能性が広がっています。

まとめ

「女性の休日」は、女性たちの労働の価値を可視化し、社会を変える大きなきっかけとなりました。日本でも伝統や制度を見直しながら、新しい形の平等を模索する必要があります。

次回は、国際結婚における日本女性の子ども連れ去り問題について取り上げたいと思います。

本日もお読みいただきありがとうございました。

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