外国人との共生とその課題(前編)

近年、日本社会における「外国人との共生」がますます重要なテーマとなっています。とくに今年の参議院選挙では、後半にかけて外国人排斥的な空気が強まった印象もありました。しかし、だからこそ今こそ、多様性を受け入れ、地域とともに発展するヒントを探るべき時ではないでしょうか。

このブログでは2回に分けて、「外国人との共生」について考えていきます。今回は、共生がうまく進んでいる地域の事例を中心にご紹介し、次回は制度的な課題や改善の可能性について掘り下げていきます。

日本で働く外国人のいま


厚生労働省の最新データによると、日本で働く外国人は約230万人。前年比12.4%の増加で、ここ数年は毎年10%前後のペースで増え続けています。

国籍別の傾向

冒頭リンクの厚労省資料より

  • 最も多いのはベトナム人、次いで中国、フィリピン、ネパール、インドネシア、ブラジル、ミャンマー。
  • 在留資格も多様化しており、専門職、技能実習、留学生など幅広い層が働いています。

産業別の傾向

  • 製造業が最多で全体の26%。
  • 医療・福祉分野は前年比28.1%増、建設業も22.7%増と、社会インフラ系での需要が高まっています。

滞在資格の違い

  • ブラジル人やフィリピン人は「定住者」ビザが多く、就労制限がありません。
  • ベトナムやインドネシアは技能実習生が中心で、今後は「特定技能」への移行が進む見込みです。
  • ネパール人は留学生が多く、都市部のコンビニなどで働く姿がよく見られます。

地域に根づく外国人コミュニティ


外国人労働者は都市部に集中する傾向があり、東京・愛知・大阪が上位を占めています。こうした地域では、同じ国の出身者が集まることで、言語や文化の支え合いが生まれています。

代表的な事例

  • 横浜・神戸の中華街:明治時代から続く中国人コミュニティ。日本語ができなくても生活が完結できる環境が整っています。
  • 東京・御徒町のインド人街:宝飾問屋街にインド人オーナーが多く、三世代にわたって定住している人も。
  • 東京・西葛西のインド人コミュニティ:IT技術者を中心に形成され、インド人向け学校も開設。
  • 東京・神楽坂のフランス人コミュニティ:フランス語教育を軸に、地域と文化を育む場に。

私自身の経験から

1990年代に栃木県小山市に住んでいた頃、富士通の工場で多くの日系ブラジル人が働いていました。当時は地域との交流が少なく、土地柄も保守的で、外国人にとって暮らしやすい環境とは言えなかったかもしれません。今は大きく変わっている可能性もあります。

モデルケース①:北海道・浦河町


人口約1万人の競走馬の産地として有名な浦河町では、競走馬の世話をする仕事(騎乗員)に従事するインド人が300人以上定住しています。町が特別な誘致をしたわけではなく、月収がインドの年収を上回るという情報が口コミで広がり、自然発生的にコミュニティが形成されました。

支援体制

  • ヒンディー語対応の母子手帳を導入。
  • 全国からヒンディー語が話せる支援スタッフを募集。
  • 地域行事への参加や農作業ボランティアなどを通じて、地元自治会との信頼関係を築く。


まさに「共生」が自然に根づいた好事例です。

モデルケース②:浜松市の多文化共生

浜松市は日系ブラジル人・ペルー人の定住地として知られ、製造業に従事する外国人が多く住んでいます。

多文化共生センターの取り組み

  • ポルトガル語・スペイン語の相談窓口。
  • 日本語教室、放課後教室の無料提供。
  • 公共サインやパンフレットの多言語対応。

企業との連携

  • 最近増えている若いベトナム人やインドネシア人の技能実習生や特定技能人材も含めたマッチングイベントを定期開催。
  • 採用後の住宅支援や日本語研修を企業が提供。

浜松モデルは、都市規模と支援の緻密さが両立した好例です。

川口市のクルド人コミュニティと制度の課題


埼玉県川口市には、難民申請中のクルド人が多く住んでいます。もともとは自治体の好意的な姿勢がコミュニティ形成の背景にありましたが、現在は制度的な課題が浮き彫りになっています。

制度の問題点

  • トルコ国籍のクルド人については、観光目的ならビザなしで入国可能なため、入国後難民申請するケースが多いと考える。
  • 難民認定の審査に時間がかかりすぎる。
  • 認定されない場合でも強制送還されず、在留資格のないまま滞在するケースが増加。
  • 難民申請者のごく一部には就労許可が出るが、許可がない人は必然的に不法就労に陥りやすい。

日本政府には、難民認定制度の見直しと、認定されなかった人への対応を明確にすることが求められています。治安維持の観点からも、空港での送還措置を含めた制度設計が求められる時期に来ていると考えます。

まとめ:共生社会を前に進めるために


日本の産業や地域社会は、すでに外国人労働者なしでは成り立たない状況です。それにもかかわらず、選挙やメディアでは外国人に対するネガティブな論調が目立ちがちです。

しかし、浦河町や浜松市のように、地域と外国人が互いに尊重し合い、支え合うことで、共生は十分に可能であることが分かります。

さらに、長年日本に定住しているブラジル人やフィリピン人などは、定住ビザを持ち、就労制限はないものの、製造業などで派遣や請負といった不安定な雇用形態で働くケースが多いです。景気後退の際には、日本の非正規労働者同様、仕事を失うリスクの高い人たちであると言えます。

今後の課題と提案

  • 行政は言語・生活支援を充実させ、受け入れる人材や職種を戦略的に選定する。
  • 国としても制度のはざまで不幸な状況に陥る人が出ないよう、丁寧な制度設計を行う。
  • 非正規雇用で働く外国人労働者も、日本人と同様に守るべき存在である。


最後に、皆さんの地域や職場でも、外国人との交流の機会を意識的につくってみてください。挨拶やちょっとした会話からでも、理解と信頼は育まれていきます。それが、日本全体の共生社会を前進させる第一歩になるはずです。