永住権はどの国が取りやすい?日本・カナダ・アメリカを徹底比較

今日は「永住権の取得しやすさ」をテーマに、日本・カナダ・アメリカの3カ国を比較しながら、それぞれの制度がどんな価値観で設計されているのかを整理してみます。

私自身、カナダの永住権を自力で取得した経験があり、周囲にはアメリカやオーストラリアで永住権を得た人も多くいます。実体験も交えながら、できるだけわかりやすくまとめました。

日本の永住権:要件はシンプルだがハードルは高め

日本の永住権は、国際的に見ると「取得のハードルが高い国」に分類されます。
出入国在留管理庁 (https://www.moj.go.jp/isa/index.html)のガイドラインでは、主に次の4つが要件とされています。

  • 原則10年以上の在留歴(うち5年以上は就労または居住資格)
  • 安定した収入と納税実績
  • 素行が良好であること
  • 日本の国益に適合すること

日本語能力は必須ではないが、実務上は重要

現行制度では日本語能力は必須ではありません。ただし、自治体とのやり取りや生活基盤の安定性を示すために、日本語能力試験(JLPT)N2程度(中級―上級)の証明を任意で提出する人が多いと言われています。

背景には、外国人住民が増える中での「社会統合」の必要性があります。

日本社会は仕事の場面で特に「読み書き」を重視する文化があります。ですが日本語の読み書きは一般的に外国人にとって非常に難しい領域です。

漢字文化圏の中国人は比較的有利で、唯一の例外かも知れません。実際、大連にある日本企業向けカスタマーサービスに従事する中国人のあまりに高度で流ちょうな日本語に、驚愕する日本人も多いことでしょう。

私の考え

永住権は「長期的に社会に参加する意思と能力」を前提とした資格です。その意味で、役所手続きを自力でこなせる程度の日本語力は、最低限必要だと感じています。語学力を永住権申請の要件とすることは理にかなっていると思います。

漢字文化圏の中国や、文法が近い韓国語話者が有利になるのは制度上避けられない部分ですが、社会参加を前提とする以上、一定の言語要件は不可欠でしょう。

カナダの永住権:スコア制で透明な制度

次にカナダです。

私はカナダの永住権を自分で申請しましたが、制度の透明性と合理性は群を抜いていると感じます。
現在は永住権カテゴリーが細分化されていますが、基本は Express Entry(ポイント制) が中心です。

完全スコア制の審査

評価項目は次の通り。

  • 年齢
  • 語学力(英語・フランス語)両方できればさらに加算
  • 学歴
  • 職歴
  • Job Offer の有無

これらを点数化し、高得点者から永住権を付与する仕組みです。

つまり、若くて、稼げて、健康で社会保障費を浪費せず、税金を払ってくれる人が優先されるという、極めて合理的なロジックです。これはカナダ以外の国でも基本同じです。

カナダの語学基準は想像以上に厳しい

カナダでは、首相になるには英仏バイリンガル能力が求められます。そのくらい、語学への要求が高い国です。現首相であるMark Carney氏は英語話者で、就任当初はフランス語スピーチが拙いと批判されていました。それでも日本の政治家の英語よりはるかに上手いと感じるほどです。それだけ基準が高いということです。

*本日のテーマからは外れますが、カーニー氏のフランス語を批評した、多言語話者であるSteve Kaufman氏のYouTube動画のリンクを下記に。また先日行われたDavos会議でのカーニー氏の感動的なスピーチのリンクも下記に。

多言語話者の反応:マーク・カーニーのフランス語はどれくらい上手いのか? 設定変更で日本語字幕も表示できます

マーク・カーニーカナダ首相のダボス世界経済フォーラムでのスピーチ全文 日本語音声にも切り替え可能

弁護士依頼は逆効果になることも

私が申請した当時、申請パッケージには「弁護士を使わず自分で申請するように」と明記されていました。弁護士に依頼すると「自力で書類を処理できない」と判断され、審査が長引いたり、不要なインタビューが追加されることもあります。

また、現地や欧米の大学を卒業していれば語学テストが免除されるなど、合理的な仕組みも整っています。永住後は家探し、光熱費契約、銀行口座開設、税申告などを行う必要があり、語学力は生活の必須条件です。

アメリカの永住権:運・スポンサー・資金力がカギ

アメリカは永住権の取得ルートが非常に多様です。

グリーンカード抽選(DV Lottery)

世界的にも珍しい「抽選で永住権が当たる」制度です。私の知人にも当選者がいます。

知人は私がボストンのビジネススクールにいた時の同級生でしたが、能力は高いのに当時は英語があまり流ちょうではなく、就職活動で苦労していました。ですがグリーンカードが当たったとたん、希望通り財務評価をする仕事に就くことができました。ニューヨークにある、スタンダードプアーズという、誰でも知っている格付け企業です。晴れてニューヨーク勤務になりました。移民の場合、能力があっても言葉がおぼつかないと、能力相応の評価がされないという問題があります。

ただし、言語能力が弱い移民は評価されにくいという構造は、アメリカでも日本でも例外ではないでしょう。

労働ビザからの切り替え

一般的なルートですが、手間もコストも非常に大きいです。

スポンサー企業は、

  • 複数の全国紙に求人広告を数ヶ月掲載
  • 「適任なアメリカ人がいない」ことを証明
  • 応募者の履歴を精査し、スポンサー対象者がより優れている理由を詳細に説明

といった作業を行う必要があります。これは労働市場テスト(Labor Certification)と呼ばれるプロセスで、アメリカ人労働者の保護が最優先されます。

つまり、アメリカ人では代替できないほど優秀であることが求められます。当然ながら、英語力が不十分な人がこのルートで永住権を得るのはほぼ不可能です。

投資移民の進化版「ゴールドカード」

一定額の投資で永住権を取得できる投資移民制度は諸外国にも存在しますが、トランプ大統領が就任してから米国の投資移民制度はインフレが進んでいます。昨年末、トランプ米大統領は、100万ドル(約1億5600万円)で永住権を取得できる新たなビザ(査証)「ゴールドカード」プログラムの申請受付を開始したと発表しています。永住権が「資金力」で左右される側面が強まっています。投資移民のカテゴリーに関しては言語要件はありません。

さらにアメリカの特徴として、永住権保持者は全世界所得に対してアメリカに納税義務があるという点が挙げられます。
これは他国にはほとんどない仕組みです。米国以外では、基本的に税金は居住国に収めることになっており、二重課税されません。ですから米国に住むつもりがない人が、米国の永住権を取ると大変なことになります。米国にとっては、移民が米国にいてもいなくてもお金が入ってくる仕組みです。

まとめ:日本も「言語要件」を明確化すべき時期に来ている

3カ国を比較すると、アメリカもカナダも言語要件は非常に厳格です。
日本が今後、永住権申請に日本語要件を導入しようとしているのは、社会参加の観点からも自然な流れだと感じます。

特に日本では、日本語で読み書きし、行政手続きを自力で行えることが社会生活の基盤になります。もし言語要件を設けないまま移民が増えれば、自治体や学校などの公共サービスがパンクするリスクもあります。

評価方法としては、

  • 日本語能力試験(JLPT)を使うのか
  • 諸外国のように、大学卒業者以外にインタビューを課すのか

など、今後の制度設計が問われるところです。

永住権は「定住資格」であり、単なる労働ビザとは異なります。その意味で、話すだけでなく、読み書きの能力を公平に求めることが重要だと考えています。