インドからの留学生

私のインドの会社の同僚の娘さんが、東京都内にある大学でリサーチインターンシップをしていたのですが、昨日2カ月のインターンシップを終えて帰国しました。私は同僚の娘さんということもあり、成田エクスプレスに押し込むところまでと思い、滞在している寮まで迎えに行きました。研究室の皆さんが、祝日にもかかわらず寮から最寄りの駅まで見送りに来てくれ、さらには手作りの寄せ書きなども用意してくれ、同僚の娘さんの感動もひとしおだったようです。

コロナ禍ということもあり、日本への入国制限がなかなかに厳しくて、ビザが取れたのが出発予定日の1日前という、スリリングな留学の始まりでした。

同僚の娘さんは、現在大学3年生。2カ月の夏休みを丸々利用してのインターンシップでした。昨日からインドの大学で授業ということで、全く休みなし。インドの大学は、日本と一緒で4月はじまりの3月終わり(企業の決算のタイミングも日本と一緒)ですが、就学年齢が1年日本より早く始まるので、日本の同じ学年より1歳若いということになります。その彼女ときたら、大学3年生にもかかわらず、研究分野ですでに査読付きのジャーナルに3、4報論文があり、インドに帰国直後も学会発表を控えているとか。彼女はインドの、決してトップの大学の学生というわけではなさそうなのですが、いい意味で一体どうなっているの?と。受け入れ先の教准教授も、「まさに一を聞いて十を知るタイプ」と褒めまくっていました。

私自身も過去に海外に留学して様々な国の留学生と机を並べたり、あるいは仕事で同僚になったりということを経験しました。仕事では医薬の研究開発にかかわっているので、ほぼ周りは皆博士号取得者ですし、PhD&MBAなんて言うのは、珍しくもなんともありません。そんな人が大勢いる中でも、インド、中国勢は断トツで優秀だと感じます。それはまず人口が多いので、優秀な人材の絶対数が多いことがあると思います。その中でもさらに優秀な人たちが、米国をはじめ海外に留学し、仕事をすることができるからでしょう。そういう人達とばかり接触していると、優秀と言われている日本の官僚も、実は世界的に見れば低学歴で全く専門性がなく、もっと勉強しないといけない人たちだと思うのですが、そうは思われていないところが問題だなあと。

私は1998年から私費でアメリカのボストンにある大学に留学したのですが、当時はバブルの余韻もあって、日本の官僚がたくさん米国に留学していました。現地の日本人会のパーティーなどで、時々一緒になりましたが、明らかに英語が大学院レベルではなく、授業はどうしているの?という方が大勢いました。きっと日本の官僚向けの、特別な入学枠のようなものが当時はあったのだと思います。が、それにしても?な人が多かったです。それを裏付けるように日本の官僚は、経歴にXX大学に留学と書く人は多くても、実際に学位を取っている人は少ないです。

国民民主の玉木さんは確か、ハーバードのケネディスクールをちゃんと卒業されていると思いますが(同じ大学の卒業生では元衆議院議員の豊田真由子さん)、そういう官僚は希少だと言えると思います。留学までのプロセスも、現地の生活(高い授業料に高い家賃)もすべてお膳立てされ、しかも税金なのですから、卒業して当然と思うのですが。(一度、何割学位が取れているか調査公表すべきと思います)

一方で、中国やインド、その他特にアジアの途上国から米国に留学している留学生は非常に優秀、かつまじめで、皆さん博士まで取るのがデフォルトだと思います。当時台湾やシンガポールの官費留学生という方たちと話したことがありますが、学位が取れなかったら一生の恥と、皆さん必死感が日本人官僚とは全然違いました。

遊学の日本の官僚の場合、現地でも日本人とつるんで英語もほとんど上達せず、学位も取らず2年くらいで帰国するので、結局他の国から来た留学生とのつながりもできずに帰国するパターンが多いと思います。外交は留学生同士のつながりが後に意味を持つことも多く、それがない日本の外交下手はこの辺にも理由があると思います。結局、経済大国というステータスに胡坐をかいて、産業界だけでなく、官僚も努力を怠ってきたツケが、いろいろなところに出ているのが現在の日本と思います。

また日本の官僚に関しては、基本二年ごとに部署が変わり、専門性に欠けるとよく言われています。この制度もいつまで続けるのか。私のもう一つの専門である医療経済学分野の学会等で海外の官僚と話をすると、厚労省には医療経済の専門の官僚がいない、博士保持者もほとんどいないのはびっくりとおっしゃいます。厚労省には医系技官というのもありますが、医学部出身というだけで何の専門性もない新卒を面接だけで入省させるシステムです。特定の分野で経験のある医療の専門家を任期付きで入省させるか、新卒なら他の国家公務員と同じ公務員試験を受験させるべきと。そんなことをしていると、どんどん官僚のレベルが落ちてしまいます。

欧米に相手にされなくなったせいなのか、厚労省では最近、言うことを聞いてくれそうな(?)アジアの途上国に、日本の医薬開発や薬事審査のやり方を、日本が費用を負担して教えようとしているようです。ですが医薬品は今、米国で最初に承認されるのがデフォルトになりつつあります。途上国では、米国、その他先進国で承認された薬なら、そのまま自国で承認するシステムにしている国も多いので、日本の医薬開発や薬事のノウハウを伝えることが、教えられる国にとって必要なのか微妙と思います。これも日本の好きな、バラマキ外交の一つではないかと思っています。

最後に留学生と言えば、日本に来るほとんどの留学生に、授業料全額免除の上、生活費や交通費を支給する制度を日本は長らくやっていますが、これも優秀な学生にだけ限定すべきだと思っています。代わりに日本の学生に対する資金援助を厚くすべきと。日本の大学は今や、米国や欧州に留学できないレベルの海外留学生が、とりあえず自国の外に出て無料で学位をとり、欧米に留学するための踏み台となっています。この状況で日本にどこまでメリットがあるのか疑問に思います。こうした留学生を受け入れている大学の、おいしい資金源になっているだけです。

私の同僚の娘さんと受け入れ先の研究室の皆さんには、今回のことをきっかけにお互いの国に対する理解を深めてもらいたいと切に願っています。一方で国全体として、留学生を日本の将来にどう役立てるかという戦略も、見直しの時期に来ていると思います。