経口中絶薬承認なるか?

今日は1月9日にありました、国際婦人年連絡会2022年度第3回セミナー、「リプロダクティヴヘルス&ライツ~経口中絶薬の承認がもたらすもの~」について、感想などを交えて書きたいと思います。

 私の個人的なサイトでもお知らせしましたが、中絶問題研究家の塚原久美さんを講師にお呼びして、日本における中絶を取り巻く現状についてお話いただきました。恥ずかしながら中絶薬が海外においてかなり以前に承認されているということ、80か国以上で使用されていること、つい最近まで知らずにおりました。

日本で中絶薬がこれまで普及しなった理由は、日本の産婦人科医の利権となっていることが大きな原因のようです。中絶は日本では戦後、世界に先駆けて実質的に合法化されました(経済的理由による堕胎の合法化)。当時、経口中絶薬はなく、産婦人科医による掻把(胎児を器具を使って掻き出す)しかありませんでした。それ以来、日本では基本的に掻把が人工妊娠中絶方法となっていました。(現在は掻き出す方法と共に、吸引による中絶も併用されています)

一方、海外では宗教的な理由などから、中絶が合法化されたのが近年のことで、その際に比較的安全に中絶可能な経口中絶薬があったことから、中絶薬が主流となりました。中絶薬のメカニズムは人工的に生理を起こし、胎児ごと子宮内膜をはがして排出させるもので、安全性が高いと言われています。

一方、日本で行われている人工中絶は、子宮口を拡張して器具を入れ、医師が手探りで胎児を掻き出す、あるいは吸引機で吸い取るという方法です。掻き出し法については、危険を伴うものであり、手術の際に誤って子宮を傷つけてしまい、傷口が炎症を起こし癒着し、その後不妊になってしまうような事故も起こりがちです。ですが日本では、戦後に安全性の高い方法が確立されてきたにもかかわらず、いまだに戦争直後の方法が主流になっています。

現在、英国のラインファーマという製薬企業が、日本で中絶薬の承認申請中です。年内には承認されるのではないかと言われており、どのくらいの薬価になるか注目されています。以前のブログでも紹介しましたが、日本の薬価は基本、新薬であれば原価方式などを採用し、海外ですでに使用されているのであれば海外の価格を参照して設定します。この中絶薬の場合、海外では現在、1000円程度の薬価で販売されており、海外価格を参照するなら、その程度の薬価になるはずです。ですが日本では、自由診療の薬として10万円程度で販売するようになるのでは?と噂されています。安く販売されると産婦人科医の収入が減るということなのかもしれません。この経口中絶薬、まずは今月27日に、厚生労働省の専門家部会で承認の可否を審議する予定になっており、注目です。

ちなみ米国では一部の州で中絶が非合法になるなどしていますが、実はコロナ禍、経口中絶薬による中絶がより普及しました。その結果、医師の処方せんなしに薬局で中絶薬を販売しても安全性は高いとうデータが積み上がり、米食品医薬品局(FDA)は今年1月から薬局での販売を許可するに至りました。もちろん中絶反対の姿勢を示している州での販売は今後も難しいでしょうが、基本的には処方せんなしでも手軽に入手できるようになったのです。

日本では診療報酬その他医療政策に関し、医師会の影響力が非常に強いです。医師会の影響力と言えば、新型コロナに関する対策に関しても、いろいろありました。接種にかかわる医師の高額な日当や、ワクチン接種の件数に応じて病院が自治体から受け取る報奨金、施設を稼働してもしなくても受け取れる重症者患者入院施設整備のための巨額の補助金など、病院や医師にこれでもかという巨額のお金が税金から流れ込みました。コロナの前は経営難だった病院も、ワクチン接種で黒字化したところが多くあったとか。新型コロナウイルスによる感染を感染症法の5類にしたくない勢力が、まだまだ強いようです。

中絶薬に関しても、これまで利権確保のためのネガティブキャンペーンの影響が大きかったようですが、今年はこの牙城が崩れる年になりそうです。女性の安全な選択肢が増えることを祈ってやみません。