ギフテッド教育について その2

私がギフテッド教育を、自分が取り組みたい政策の一つとして発表する前、ギフテッド教育について語る人はあまりいなかったと記憶しています。ですが最近は、ニュースや動画などで、IQが高いがゆえに普通の学校教育になじめない子供の問題などが多く取り上げられるようになりました。

私がギフテッド教育に興味を持った理由の一つは、動画でも紹介しましたが、私の妹がそうだったからです。私は夕張市生まれですが、一旦転出し、小学校4年、妹が小学校1年の時に再び夕張市に転入しました。入学早々IQテストを受けました。妹のIQの高さに驚いた教師が、母を学校に呼び出し、「妹さんはIQが高いから、そういう才能を伸ばせる学校に行った方がいい」と言ったとか。が、田舎にそんな学校があるわけもなく、そういったIQの高い子供向けの授業もなく、妹は普通学級に普通に通いました。そして中学になったくらいから、授業にだんだんついていけなくなったように思います。あとから聞いた話ですが、それまで勉強らしいものをしたことがなく、どうしていいのかわからなかったとのこと。

夕張市は田舎ですし、親は仕事で忙しかったので、私たち姉妹は基本的に家で勉強する習慣もなく、家に帰ったらランドセルを玄関に放り投げて、暗くなるまで外で遊んでいました。思い起こせば小学校の時は、妹の成績は体育も含めてオール5でした。運動音痴の私は、体育を除いて成績はほぼオール5だったので、母はそれがごく普通なのだと思っていたそうです。ちなみに母も、高校に入るくらいまでは家で勉強しなくても成績が良かったそうです。

母は妹のIQを聞いた時、「姉はどうですか?」とついでに質問したそうです。先生は、「平均より少し高いくらいです。北大くらいは入れるでしょう」と言ったとか。事実そうなりました。当時夕張市に公文でもあれば、妹は今とちょっと違った人生になっていたかもと思わなくもないです。まあ子供の頃天才で、成長したらただの人というのはよくある話ですが。

現在私はインド占星術を趣味で勉強しているのですが、インド占星術にはダシャーという、生まれた時の惑星配置に導き出された、惑星や星座のサイクルがあり、その期間は惑星や星座が位置するハウスや惑星の象徴する表示体の特徴が現象化すると考えられています。

興味のない方には????でしょうが、要は天才に生まれても、その才能が生かせる運気の時に勉強できる環境にいないと、その才能が開花しないのです。インド占星術では、才能や適性を読むことの他に、それを生かせる運気のサイクルも出生日時から読むことが可能です。インドでは長い間、占星術は生活の一部だったため、多くのインド人は、自分の出生日時と生まれた場所を正確に知っています。

インド占星術は、学業に関してだけでなく、結婚や出産、仕事、芸術家やアスリートとしての活躍なども予測ができます。例えば結婚にいい時期が、幼いころ、あるいは80歳になってやってきても、大抵の人は結婚できません。普通はそのような結婚にふさわしい時期が、10代からせいぜい40代前半くらいまでに来ることが必要です。またアスリートになるには、もっと条件が厳しくなり、10代からせいぜい20代にそのような時期が来ないと、世界的に活躍するアスリートにはならないでしょう。

近年、日本の若いスポーツ選手が世界でも活躍するようになっています。私はサッカー選手で、現在スペインのレアル・ソシエダにいる久保建英選手のスペイン語のインタビュー動画を見るのが楽しみなのですが、彼のように10代前半で海外に出てアスリートとして研鑽を積み、若くして世界で活躍している日本人が多くなったと感じます。アスリート以外にも、バレエのダンサーや、音楽家などにも、世界的に活躍する若い日本人が増えています。

そのような人たちは、元々持って生まれた才能もありますが、その才能を生かせるタイミングでその才能を花開くための環境に身を置くことができた幸運な人たちでもあります。あるいは海外に行かなくとも、将棋の藤井聡太名人のように、国内で活躍している若い世代もいますね。

こうした若くして才能を開花させることができる人の多くは、小さいころに夢中になれることを見つけた人たちです。そしてそのために、多くのものを犠牲にできる人達でもあります。学校の友達とつるんで買い食いをしたり、一緒にゲームをしたり、遊びに行ったりする時間などほとんどなく、若いころからかなりストイックに、孤独に、一日の大半を練習と向き合わなくてはいけません。それができるのは、それが好きだからに他ならないでしょう。

久保選手のインタビューの中で記者が、「どうしてタケはそんなにスペイン語がうまいの?」と質問をしました。久保選手は、「自分はサッカーが好きだから、サッカーをやるためには何でもする。スペイン語ができれば、チームメートとのコミュニケーションが円滑になるから」と。

久保選手は10歳から13歳までスペインに留学していたそうですが、その後は2019年まで日本で生活していたそうです。ですがスペイン人に言わせると、彼のスペイン語は「ネイティブとしか思えない」というレベルで、しかも語彙や文法など、かなり高度なスペイン語を使っていると。日本でも将来スペインで活躍することを考えて、継続して勉強していたのでしょうね。子供は大人と違い簡単に外国語に慣れることができますが、使わなければ簡単に忘れてしまいます。サッカーの話題は真摯に真面目に、そしていつもなるほどと思えるような気の利いた、かつユーモアを交えて答えるので、彼は地元のスポーツ記者に大人気です。気づかいのある性格のせいなのか、地元のファンにも絶大な人気で、試合の後はサインを求める列が2時間待ちとか。。。。ただただすごいですね。アスリートで語学の達人というと、かつてはサッカーの中田英寿選手や卓球の福原愛選手がいましたね。

話がそれたのですが、学校の勉強以外では、日本でもギフテッド教育がすでに行われているわけです。それを享受できるのはごく一部の子供、例えば親が裕福であるとか、親が子供の才能に早い段階から気が付いて、子供の才能が伸びる環境に子供を置くことに寛容である場合のみです。芸術やスポーツに関しては、才能を伸ばすために早期から特別な教育をした方がいいというのは、意識している人が多いのではないでしょうか。一方の勉強に関しては、日本では学習指導要領からはずれないように、IQが高い子も、理解が遅い子も同じ学年で同じ進度で履修しなくてはいけません。

子供にはいろいろな才能があり、また学習の進度も子供によって違います。インド占星術のダシャーの概念もそうなのですが、才能があっても、例えば学習に向いていないダシャーになると途端に勉強ができなくなったりします。だから勉強に向いている時期で、本人が面白いと思える時期に、たくさん先に進んでおいて、後からゆっくりという子がいてもいいし、最初は全く勉強に興味が持てなくて、何度同じことを聞いても覚えられないけれど、ある時期から突然勉強に興味がわくという子供もいるでしょう。個人的には、子供の能力に合わせて、学習進度を柔軟に設定すべきと思います。

そう言うと、ただでさえ教師は忙しいのに、授業はどうするの?という人がいるかもしれません。私は今の時代、教師が生徒に向かって同じ授業をする必要はないと考えます。生徒が個別にタブレットなどで、あらかじめ録画された優秀な教師の授業を見る方がよほど良いと考えます。教師は生徒の興味や能力に合わせて、何を見るべきか生徒に選んであげることを仕事にすればよいのではと思います。そして学校は生徒同士の交流の場として学校行事などを行えばよいのではないでしょうか。

先に進める生徒はどんどん先に進み、試験を受けて飛び級で進級し、小学生でも大学に入れるようにすべきと思います。逆にできない子は、理解できるようになるまで何年かけて卒業しても良いシステムにし、わからないまま先に進めないようにすべきと思います。理解できないのに進級するから、大学で分数の計算を教えなくてはいけなくなるのです。

今の日本は、皆同じでなければならないという前提なので、その前提から外れる生徒は苦しいわけです。皆違うのが普通、学校を卒業するのが早い人も、遅い人もいるのが普通になれば、無理して勉強して大学に行こうと思う人もいなくなるのではないでしょうか?大学は勉強が好きな人が行くところで、嫌々勉強する人が行くところではありません。そういう人はもっと早い段階で、自分が夢中になれる、好きなことを見つけるべきなのではないでしょうか。

これからの時代は解答のない問題に取り組める人材が必要になります。好きでもないことを嫌々やっても、結局は長時間労働になるばかり、問題に取り組むのが苦痛になるばかりでしょう。日本でもギフテッド教育を含む、個々人の能力や適性を伸ばす教育が必要だと感じています。