本日はまず、クオータ制を推進する会のQの日勉強会から「世界のパリテの現在地 -フランスに着目して」のご案内をしたく思います。この勉強会、事前に案内をするのを忘れてしまい、すでに終了してしまったのですが、動画がYouTubeにアップされていますので、ご興味のある方は是非ご覧ください。
講師は専修大学講師の村上 彩佳先生です。(講師のプロフィールはブログの最後に掲載しています)今回フランスにおけるパリテ法について解説いただいています。
フランスというと女性が強いというイメージがあるかもしれませんが、女性議員が劇的に増えたのは、1990年代からパリテ(政治分野における男女平等)を実現するための様々な法整備が進んだからです。例えば、選挙法で各政党立候補者は男女半々にしなさいと規定しても、それをきちんと監視し、違反する政党には政党助成金を減額するなどといったペナルティを課すことも同時に進めなければ実現は難しいのです。この勉強会では、村上先生がフランスでどのようにパリテ法が実現されたかを解説されています。講義は最初の30分程度ですので、政治に興味のある方は是非チェックしてみてください。
ところで、自民党の女性議員のフランス研修がいろいろな意味で話題になっていますね。あとから公開された研修日程を見ると明らかに観光に研修をつけた感じなのは否めないですね。また元衆議院議員の豊田真由子さんがどこかでコメントしていましたが、海外出張に観光があらかじめ組み込まれているというのもあり得ないですね。また松川さんはお子さんも連れて行ったということですし、国会議員は仕事に家族を連れていくのかと疑問に思いますよね。昔は海外出張というと特権階級のものだったので、家族連れも許されていたような時代もあったようです。ですが今は、企業であれば滞在中に事故にあった場合、それが労災になるか判定が難しくなるので、基本的には観光も、家族を連れて行くのも禁止が多いと思います。
松川さんは確か元外務省官僚だったと思いますが、外務省の官僚はセキュリティ上の理由として、海外ではかなり良いホテルに泊まっています。このブログでも以前に書いたかもしれませんが、昔シンガポールに行った時に、ローカルの知人に、「日本の外交官は恥ずかしいね」と言われ?だったことがありました。その日の地元紙に、「日本の外務省一行がその当時できたばかりの超高級ホテルの最上階をセキュリティ上の理由として貸し切りにして滞在している。一体この人たちは何様?」と言った記事を書かれていたのです。そんなにセキュリティが心配なら観光なんてもってのほかですから。
企業でも、週末の日程を延長して観光にという人が、昔は結構いたように思います。今は企業においては海外出張の規定も管理も厳しくなっているので、観光のために滞在延長を認めるところは多くないでしょう。逆に海外出張というと、今はウェブ会議もメールもあるので、時差があってつらくても、朝早く、あるいは夜遅くに日本と仕事をし、それ以外の時間は現地対応で寝る暇もトイレに行く暇もなく忙しいだけ、日本の空港にもどってきてようやく一息つける、というのが海外出張の典型ではないかと思います。海外出張は普通は一般の人が思っているほど楽しくありません。ですが議員も含めて、公務員の海外出張の規約は民間に比べると20年くらい前のまま時間が止まっているように感じます。
と、余計な話が長くなりましたが、肝心のフランス研修の内容がどんなものだったのか気になりますね。少子化対策にかかわるものが中心とのことで、スケジュールの中に、フランス在住のライターの髙崎順子さんの講演というのもありました。この講演などは独占せずに講義の内容も含めてYouTube等で公開していただけないかなと思います。
フランスは少子化に関しても政治分野のパリテ実現と同様、様々な政策を実行したから今があるわけです。少子化になることはわかっていたのに、過去30年結局何もできなかった日本とは違います。少子化対策の税制として注目されている、フランスのN分N乗方式についても、まずは期限付きで日本でも導入してみてはと思います。自民党は共働き世代は恩恵が少ない、高額所得世帯についてより多くのメリットがあるなどと指摘していますが、子供のいる世帯にはいずれもメリットはあるわけです。高額所得世帯については、所得税の負担が減った分、もっと家族を増やしてもらえれば良いわけです。今の日本に必要なのは実行力でしょう。できることはやってみるべきと。そういう意味で、考えるばかりでなかなか実行できない高齢男性には早く席をあけてもらい、若い世代や実行力のある女性を議員として議会にもっと送り込めたらと思っています。
クオータ制を推進する会・勉強会
「世界のパリテの現在地 -フランスに着目して」
<講師プロフィール>
村上彩佳(むらかみ・あやか)氏
専修大学人間科学部専任講師。大阪大学で博士号(人間科学)を取得。日本学術振興会特別研究員DC1、PD、パリ第9大学訪問研究員を経て現職。専門は政治社会学。フランスのパリテ、日仏女性の政治参画、女性の政治参画を支援する女性市民運動について研究している。パリテに関する代表論文に、内閣府男女共同参画局推進課『諸外国における政治分野への女性の参画に関する調査研究報告書』2019年、博士学位論文「フランスの性別クオータ制『パリテ』に関する社会学的研究――女性たちの運動と差異のジレンマに焦点をあてて」2018年など