今後の年金制度

今日は再び年金問題を取り上げたいと思います。

年金制度は5年おきに見直され、これまでも少しずつ運用が改正され、若い世代だけでなく、私のような50代でも将来年金だけでの生活は難しいかもという制度になりつつあります。ブログを読んでくださる皆さんも、年金制度、あるいはその他の社会保障制度について他人事ではなく是非考えてみていただきたいです。後半は2024年度に行われる年金財政検証について説明します。

年金問題がよくわからないという人のために、年金制度を簡単に説明すると、年金は保険の一種だということです。保険というのは何かというと、何人かの人から掛け金を集めて、例えばメンバーに何かあったときに、その掛け金からお金が必要な人にお金を支払う仕組みです。健康保険も同様に保険です。

保険を運営する時に必要なことは、掛け金を払う人が、使う人より多くなるようにすることです。例えば10人が毎年100円ずつ掛け金を払って保険を運営し、何かあったとき(年金では高齢で働けなくなった時)に500円もらえる仕組みを作るとして、年に2人までだったら掛け金でカバーできます。それが例えば、3人が支払いを求めると当然赤字になってしまいます。現在の日本はこのような状態だと考えていただいてよいと思います。掛け金を払う=若い世代、お金を必要とする=高齢者です。

若い世代が減っているので、掛け金も同じ金額を支払い続ければ、増える老人に対応する保険の財源はどんどん減るわけです。だったら掛け金を増やすというのも保険の財源を増やす方法の一つではありますが、一人当たりの掛け金を増やすのも限界があるでしょう。一方で一人当たりの支給額を、先ほどの例で500円から400円にしよう、あるいは60歳以上に受給資格があったのを65歳、あるいは70歳に限定して受け取る人の人数を減らすことも検討されてきました。ただこうした軽微な変更は急激な出生率の低下と平均寿命の延びによる高齢者の増加の前にはほとんど無力です。年金の仕事にかかわっている人ならそんなことは百も承知でしょう。

年金制度については、昨年書いたブログも是非参考にしていただきたいと思います。制度やその背景についてわかるのではと思います。

社会保障制度の改革が必要なわけ

ここから先は2024年に実施される年金の財政検証についてお話します。財政検証は5年ごとで、前回の2019年の財政検証の諸前提は以下のリンクをご確認ください。

2019年財政検証結果のポイント(厚労省)

2019年度と比較し、現状は益々厳しくなっている言わざるを得ません。2019年の前提では出生率は今後上昇する、高齢化率は下がるという前提でした。ちなみに2019年では出生率を1.45としていますが、日本では昨年まで7年連続で出生率が低下しており、昨年は1.26です。昨年の韓国の出生率の0.7というニュースは驚きですが、出生率が上昇しそうな要因は現在の日本にはないのではないでしょうか?むしろ韓国のように出生率が1を切るようなこともあり得るかもしれません。もし出生率が改善するとすれば、賃金上昇&社会保障費(税)も含めた減税があり、個人の、あるいは世帯の可処分所得が増えることが必要です。

2024年度の財政検証のポイントは、

  1. 掛け金支払い期間が40年から45年へ延長(20歳から65歳まで)
  2. 基礎年金額は減額(このインフレ傾向のご時世に??)
  3. 国民年金の財源確保のため厚生年金から資金を補充する

3については、これまで厚生年金加入義務がなかったパートタイマーにも厚生年金に加入させることを同時に行うことが検討されています。要は厚生年金の財源を増やして、国民年金の財源の負担をさせたいということです。厚生年金の加入は、事業所の規模、労働者の労働時間などの制約もありますが、中小企業の事業主の保険料負担が増える見込みです。このため加入義務のない学生のパートの優遇や、厚生年金に加入させないように労働時間を制限、あるいは契約期間の制限などの対策をする事業主も現れるかもしれません。

何度も書きますが、出生率が上がらない限り、現在の制度で根本的な問題は解決しません。基本は支給額を減らすか、先延ばしにするかしか手はないのです。

このままでは若い世代は日本からいなくなってしまうのではないでしょうか?もっとたくさんの人を巻き込んで、社会保障制度について話し合うべき時期が来ていると思います。