9月に入り、大学10兆円ファンドに動きがありました。第一号認定校は東北大学に決定。どうせ東大に決まるのだろうと思っていた人が多かったのではと思うのですが、第一号は東北大学になりました。もっともサイエンスのレベルから言えば、東北大学は東大にも京大にも分野によっては決して負けてはいないですし個人的にはなんの不思議もありません。東大、京大は大学規模が大きくて研究者が多いので、論文の絶対数で議論すると負けてしまいますが。
来年度から早速支援開始だそうですが、その規模は年間数百億円で25年とか。確か大学10兆円ファンドは、毎年の3-4%の運用利回りを目指し、年3000-4000億円程度の支援資金を確保する予定ではなかったでしょうか?もちろん第一校が決まったのみで、第2校、3校とあるため、全部を東北大学に突っ込むことはしないのかもしれませんが。それにしてもケチ臭いと思っていたところ、東洋経済オンラインのこんな記事を発見。
https://toyokeizai.net/articles/-/688655 (上記がうまく表示されないかはこちら)
これによると2022年度はまだポートフォリオの構築途上とのことですが、運用資産額は9兆9644億円で、その構成割合はグローバル債券が54.6%(5兆4445億円)、グローバル株式が17.2%(1兆7101億円)、オルタナティブ(不動産や未公開株など)が 0.6%(643億円)、短期資産(預金等)が27.6%(2兆7455億円)とのこと。
運用実績を見ると、グローバル株式の収益額が655億円、収益率1.7%に対し、グローバル債券は利上げによる債券価格の下落の影響をうけ、1263億円の運用損失、収益率はマイナス3.6%だった。つまり604億円の赤字だったと。
この東洋経済の記事によると、運用していたポートフォリオの40%以上為替ヘッジを行っているとのこと。為替ヘッジとは、海外の株式や債券で運用する場合、株式や債券の値動もさることながら為替変動のリスクもあるため、為替予約をして為替変動の影響が出ないような運用をしているとのこと。ただし為替ヘッジ自体も手数料がかかるので、その分基金の運用益は減るというわけです。昨年は日本の大学10兆円ファンドだけでなく、米国の名だたる私立大学も軒並み運用実績はマイナスに近かったそうで、立ち上げたばかりだし、来年以降は元農林中金のファンドマネージャーが何とかしてくれるでしょうという論調になっています。
他にはダイヤモンドオンラインに、経済評論家の山崎元さんの記事を発見。
最後は、山崎さんイチオシの、インデックスファンド運用推しになっているような気がしなくもないですが、確かに、外貨建債権が大半というポートフォリオは公的ファンドとしてどうなのだろうという気がします。それにしても結局、日本の税金はこうして海外に出ていく運命なのだなあと。そもそも大半を海外に投資してそのわずか数%運用益だけ日本の大学に投資するスキームって正しいのでしょうか。
上記の基金の運用に関する記事を読んだ後、東北大学が今回選ばれたのは、大学の規模が他の二校に比べて小さくて、少ない支援金額でとりあえず今年はごまかせると思ったからではないかと私は感じました。評価はさておき、単純に少ない支援金で効果が大きそうな大学を選んだのではと。違いますかね。
またこの支援を受けるにあたり、支援を受けた大学は毎年大学の事業規模を3%ずつ拡大しなくてはいけないという、なぜか大学がベンチャーになったような縛りもあります。この大学10兆円ファンドが本来の研究助成、あるいは研究にかかわる大学生や職員の生活向上に普通に貢献し、日本の復活に貢献できるようなすごい発明を次々生み出すようになるには、まだまだいろいろなハードルがあるような気がします。
これまでの大学10兆円ファンド関連ブログ
以上のブログは長いので、時間の有り余っている方にお勧めです。