日本の健康保険についての考察

以下の記事は私が個人でやっているブログの記事からの抜粋を含みます。

ちなみにブログは現在、忙しくて絶賛休止中です。

日本には世界に誇る国民皆保険がありますが、その制度は企業の健康保険を軸に作られてきた経緯があり、企業に勤めない人にはやや不利な制度になっています。昨今、非正社員の増加やフリーランスの増加など仕事のスタイルの多様化もあり、健康保険制度も大企業にお任せから国の一括管理に移行すべきと考えています。

今日は少し具体的な例でお話ししようと思います。

下記のサイトには企業が運営する健康保険組合の、2021年度版の健康保険料率のランキングが掲載されています。注意していただきたいのは、このサイトを運営している方が調査した結果ですので、この調査に含まれていない健康保険組合も多数存在します。ですので、ランキングは目安としてとらえてください。

【2021年度版】企業別の健康保険料率ランキング

現在、企業の健康保険組合の保険料負担率は50%が標準です。それを超える負担率の会社もあます。このサイトでは日本郵船の保険料率が、標準報酬月額の6%、従業員負担分が1.5%とあります。社員の保険料の負担が少なく、ものすごくいい会社ですね!

大企業の健康保険組合は比較的保険料率が低く、従業員の保険料負担も低いです。では大企業ではなく、零細企業の場合はどうでしょうか?近年、企業の保険組合が財政難のため解散し、その組合員が協会けんぽや国民健康保険に移動しているお話をしましたが、零細企業が加入する、協会けんぽの現在の保険料率は以下です。

令和4年度の協会けんぽの保険料率

協会けんぽは、都道府県ごと保険料率が違い、一番高い保険料率が2021年4月現在、鹿児島県の10.65%、低いのが新潟県の9.51%です。組合に加入する企業の負担率は50%です。個人負担分は、鹿児島と新潟の平均でもある、5%前後というところですね。

次に無職になってしまった人は国民健康保険に加入するわけですが、国民健康保険料率はどうなっているでしょうか?国民健康保険は自治体ごとに保険料の計算方法が違い、自治体によっては被保険者の年収以外に、不動産売却のような一時所得も収入として計算する自治体もあります。また被保険者が家族持ちの場合、家族の保険料はまた別の加算があります。

次のサイトに年収400万円の単身者、介護保険料なしの場合の保険料の比較が掲載されています。自治体によって計算の仕方が様々なので、単純比較が難しいのです。ちなみに2014年のデータのようですので、現在はもう少し高くなっていると考えられます。

国民健康保険料 高い自治体 ランキング

これを見ると、最低が静岡県富士市の7.3%、最高が広島県広島市の15.9%ですが、企業が提供する健康保険と違い、国民健康保険は企業の負担分が全くないということです。ですので、広島市なら15.9%が丸々被保険者の負担となります。

また国民健康保険は、所得によらず一定の保険料率の部分もあるので、年収が低いほど実は保険料率が大きくなります。国民健康保険に加入するのは、無職になったときや、非正規労働者になったとき、あるいは企業の健康保険に加入できない場合ということが多いと思います。その時に企業保険の倍以上の保険料負担をしなくてはならないというところはつらいところではないでしょうか?

また加入時に無職でも前年度の年収をもとに計算されるため、高収入からいきなり無職やパートになった人にはかなり厳しいものがあります。減免措置も申請すればありますが、知らない方も多いですね。

さらには、企業保険の場合、被保険者に扶養家族がいても保険料率は一定ですが、国民健康保険の場合には扶養家族の分の加算があり、負担はもっと増えます。ですから、扶養家族のいる被保険者の国民健康保険料率は大企業の保険組合の保険料率の10倍以上ということもありえます。

ちなみに公務員の共済の保険料率ランキングは以下です。5%に近付いている感じです。

共済組合の健康保険料率(短期給付掛金率)ランキング

国民皆保険と言いながら、同じ年収でも保険料率はかなり違うのが日本です。私が以前いたカナダの場合は、収入によらず保険料は一定で、当時は年間150ドルほどでした。思わず窓口の担当者に、「それは月額ですか?」と聞き返したほどです。その後、その少ない負担もなくなり、現在はすべて税金からの拠出になっているようです。日本は一見、所得の高い人からより多くの保険料を徴収するシステムになっているように見えて、実は健康保険組合間で保険料率の差があるため、収入の少ない非正規労働者の方が大企業に勤める人より高い保険料ということもあり得ます。受けられるサービスに変わりはないのに、非正規のような不安定な仕事をしている人ほど、保険料率が高いのは矛盾があるように思えます。

ただしカナダの医療は、保険料が安いのはいいですが、日本ほど簡単に高額な診断機器にアクセスできませんし、気軽に診療を受けられません。英国などをはじめとしたヨーロッパの国々、カナダ、オーストラリアは医療費は国として非常に厳しく管理しています。贅沢な医療サービスになれた日本人が、カナダのようになれるか微妙です。一方で今のままの湯水のように医療費を使い続けては社会保障費が持たないと感じています。日本の医療としてどうあるべきか、皆さんと一緒に考えていけたらと思います。