私は基本的にはマイナンバーカードのコンセプトについては賛成です。
ですが以前のブログでもお話した通り、現在のマイナンバーについては賛成できません。
理由はセキュリティに不安があるからです。現在のマイナンバーカードは4桁の数字のパスワードと文字列のパスワードを使い分けるようになっています。どちらも忘れたら、役所に忘れましたと連絡し、郵送でパスワードを通知してもらうというものです。悪意を働こうとしている人たちから見るとこのシステムは簡単に突破できそうです。
健康保険証も無理やり廃止してマイナンバーカードに移行したいようですが、利権構造が絡んでいて、誰かがこれで大儲けできるのでしょうね。マイナンバーカードに移行するとしても、しばらく問題が落ち着くまで健康保険証と併用して何の問題もないように感じるのですが。。。きっと急ぐ理由があるのでしょう。
以前のブログで、インドで生体認証である虹彩や指紋と結びついた、 Aadhaarと言う個人認証制度があるというお話をしました。
インドでは現在銀行口座もこの個人認証なしでは開設できませんし、様々な補助金もすべてこの個人認証を介して支給されます。インドでは様々な言語や文字があり、役所が一部の国民に十分に意思の疎通が図れず、国からの補助金も支給されずにいたことが多かったそうですが、この個人認証システムのおかげでたくさんの人が恩恵を受けることができるようになったとのこと。
一方で富裕層は、銀行口座や税金の情報などが国に管理されることとなるわけですが、別に悪いことをしていなければ問題はないわけです。日本でも生体認証と結びつけて、個人認証制度を普及させるべきと。インドで使用されている生体認証システムは日本のものですから、日本でできないわけがありません。生体認証であれば、パスワードを覚える必要がありませんし、いちいちパスワードを忘れたと役所で手続きしなくて済むわけです。目や手が使えなくなった方は、別の方法も登録すればいいだけの話です。また個人情報が当人の情報と結びついているかどうかは、個人が確認すべきと思います。
日本の公官庁で使われているシステムの問題点は、ある会社のシステムが使用されたら、次にシステムを入札した別の企業が改良したりできないようになっている点だと思います。これはなぜなのかよくわかりません。もちろんセキュリティ上の理由からソースコードを公にできないのはわかります。ただし入札に応じる企業とは、官庁が基本秘密保持契約を締結するはずですから、次に入札した企業にソースコードを開示する前提で入札をすればよいのではと思います。私はこうしたシステムに関しての専門家ではないので、もしかするとIT業界の中では常識的ではないのかもしれませんが、業者が変わるたびにシステムを新しくするのも、新しいシステムに対応するスタッフのトレーニングその他、莫大な費用がかかりますから、できるだけ既存のシステムを改良しつつシステムを維持することを検討してはと思います。
ですが一方で、最初に導入したシステムが技術的にどうしても拡張しにくいものだったり、時代遅れの構造でどうにもならないものであったり、新しいシステムを導入した方が費用も含めてメリットがある場合は、新しいものに変えるべきであると思います。問題はこうした技術的判断が、技術の面からの評価ではなく、いまだに官庁と業者の関係性などが重視されている(ようだ)という点です。デジタル庁ができましたが、こうした問題に技術的立場から真摯に対応できる人はあまりいないと考えます。マイナンバーカードのセキュリティ問題も、既存システムに生体認証他、セキュリティ強化機能を追加できないのであれば新しいシステムに置き換えるべきと思うのですが。。。もしかするとその方が将来にわたるコストはずっと安いかも知れません。科学的、公平な経済評価が不可欠です。インドが導入している生体認証付個人認証システムは、14億人が導入しているのですからそんなに高価とは思えませんが。
話は少し変わりますが、私は海外に留学していた期間があり、その間は海外転出ということで、年金の掛け金が未納という状態になっています。海外に出かける前に海外転出の手続きをしていったにも関わらずです。帰国後、当時の社会保険庁に確認に行ったところ、「基本的に海外転出で掛け金の支払いが猶予になっている状況をシステム内に記録しておくスペースがなく、とにかくどんな理由があっても未納の人は未納と表示される」とのこと。「年金の受給開始年齢になったら、社会保険庁に未納機関のパスポートを持参し、その当時未納だったのは海外に滞在していたからと改めて証明してもらいたい」と。
人生いろんなことが起こりますので、将来、過去に海外にいた証明をしたくても、当時のパスポートを紛失したり、年を取ったり、病気やけがで証明が難しくなる事態が発生するかもしれません。はっきり事実関係を証明できる書類もそろっているのに「今はシステムに記入できないので受付できません」というのは、おかしいですよね。「ではこの期間、私が海外に滞在していたために、年金の掛け金が未納であることをあなたが今確認したと証明書を出してください」と交渉してみたのですが、「そんなことはできません」と。とにかく受給年齢になってから改めて証明に来てくださいと。
当時、社会保険庁はデータ入力の不備などで年金が受給できない事象が多発し、問題になっていました。このやり取りで、こんなことをしていたら、そりゃあデータ入力漏れは多発すると確信しました。システムの問題もありますが、積極的に事実関係の証明に協力しない公務員のやる気のなさも問題だと感じました。記録を残す方法は、システムに記入する以外にも、考えればいろいろあるはずですが、とりあえずめんどくさいので、後で他の誰かに手続きしてもらってくださいというわけです。そしてその時事実関係が証明できなかったとしても、「それは海外に行ったあなたのせいで、自分の責任ではありません」という、なんとも無責任を地で行く当時の省庁の職員でした。
マイナンバーカードは少なくとも、個人情報と年金や社会保険の管理が一元化できますので、個人情報の管理という点に関しては個人にとってもメリットはあると思います。ただ日本は腐っても先進国なのですから、もっとITのわかる人に制度の構築にかかわってもらい、先進的な技術を導入してもらいたいですね。理系人材がもっと政治や政策にかかわるべき案件の一つと思います。