原発についての私の考え

私は原発については基本反対派です。チョルノービリ(チェルノブイリ)の事故も、とりあえず発電所自体を覆っただけで、この先何年も放射能を垂れ流すことは確定だし、日本の福島原発だって未だに原子炉がどうなっているのかもわかっていません。原発は一度大きな事故が起きると、取り返しがつかないことがわかりました。

元理論物理学者であり、原発のことを少なくとも一般の人以上に理解しているドイツのメルケル元首相は、福島原発事故の後、原発推進派から反対派に変更し、すぐに原発撤廃に向けて動き出しましたが、これは私にも理解できる。

が、現在日本にはすでに54基ほどの原発があり、その原発の発電を止めたままにするのは難しいと正直思っている。と、言うのも原発は発電をやめても、燃料棒は冷却し続けなくてはいけない。冷却するのは大量の水と電力が必要なのです。もし原発を完全にゼロにするなら、燃料棒を取り出して処理し、原発を解体して更地にしないといけない。

ちなみに、日本は今まで一度も商業炉を更地にする廃炉作業を経験したことがない。原発も月日が経てばいろいろなところにガタがきて、メンテナンスを続けないかぎり漏電したり、動物が入っていろいろなケーブルをかじったり、火災が起きたり、あるいは変な侵入者があるかもしれない。放射能汚染もあるかもしれない。だから当然使われなくなっても、更地にするまで仕事は終わらないはずだ。

個人的には、54基ある原発のうち、比較的新しく安全性の高い原発は稼働させるべきだと考えている。一方で、放射能漏れ事故を何度も起こしているような原発や、最初の40年の耐用年数を超えているようなものは廃炉を考えるべきと思う。1年で一つ廃炉に着手しても、全部廃炉に着手するまで最短で54年以上、実際はそんなに作業員も集まらないので、もっともっと長い時間がかかる。

またその間、原発の技術者は必要だ。今後一切原発を稼働しないとなれば、原発の技術者になりたいという人はいなくなる。誰だって将来のない仕事にはつきたくないからだ。だから、どっちつかずと言われるかもしれないけど、原発は基本反対だけれど、安全性の高いものは稼働すべきと思う。原発自体を更地にした後も、燃料棒の処理その他の技術開発は引き続き必要になってくる。すでに走り出してしまった以上、後始末が終わるまで、発電を止めたら終わりではない。

今後正直、先進国での原発新設は安全対策の費用がかさんで難しくなるのではと思う。現に日立が英国で受注していた原発は、安全対策費がどんどん膨らみ、事業費が3兆円まで膨らんだところ中止が決定した。おそらく先進国での新設は同じシナリオになると思う。

個人的には、これから日本は廃炉の技術を習得して、いっそのこと海外にメンテナンスチームを派遣して外貨を稼いではとも思う。福島原発事故の時、福島原発を建設した米国のGEはすでに原発事業から撤退したけれど、建設にかかわった、高齢のたくさんの技術者が情報提供協力を申し出たと聞いている。そしてフランスの原発会社のアルバ社の技術的な助けがなかったら、福島原発はもっと大変なことになったかもしれない。

今後、先進国での原発建設は難しいけれど、途上国ではおそらく建設されると思う。自分が途上国なら、建設するだけでなく、メンテナンスや事故処理、最後の後片付けまでお願いする契約にしたい。だって自分の国には技術がないのだから、何かあったらお手上げだ。それができるのは、稼働する原発を維持している国以外にない。だから日本が途上国で原発のメンテナンス作業を請け負うというのは、将来ありうるシナリオではないかと考えている。

反対というのは簡単だけれど、すでに建設されてしまった原発の維持管理を考えると、一部を稼働して技術を維持すべきと思っている。一方で、耐用年数の過ぎた原発を、根拠もなく安全だと言って使い続けるのもよくないと考えています。

立候補に当たっていろいろな新聞社からアンケートの依頼があり、原発に関しては、答えの選択肢がイエスかノーしかなく、自分の考えを書くことができませんでしたので、ここに記させていただきたいと思います。